二人で紡ぐ幸せの始まり
長い間、放置してしまって申し訳ありません(><)
今後は更新をなるべくしていきます。
というか!!
夏コミ!! 何度目かの正直で受かったので新刊準備を進めつつの更新になるのでペースは遅いです。
しかし少しでも更新できるように頑張ります!!
とくにリクエストSSとか連載ものを進めなくては!!
コメントお礼やキリ番のリクエストSSができなくて申し訳ないです(大汗)
さてさて、久しぶりのSSは激甘・おきちず です。
(個人的には糖度高めで書いたつもりです。)
雪村の地で暮らし始めたばかりの二人をお楽しみいただければ幸いです♪♪
では、「読んでみる?」から本文へドウゾ!!
▼読んでみる?▼
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夜の闇を優しく照らす月が空の天辺で煌々と輝いている。
とある山奥にヒッソリと佇んでいる一軒家に淡い月光が差し込み、昼近くから愛しい存在を抱きしめながら穏やかな眠りについていた青年を照らす。
陽の光ほど強くない明かりでも青年を眠りから揺り起すには十分だったらしい。
黒々としたまつ毛が揺れる。
「んんーーーー」
眠りから目覚めるときの曖昧で心地良い感覚に暫しの間身を任せることにしたのだろう。
己の腕の中にある柔らかな感触、鼻孔を擽るような甘い香りを思う存分に楽しむ。
この微睡の時間は青年に幸せを実感させる一つだ。
暫くの間、微睡を楽しんでいた青年だったが、物足りなくなってきたのか薄らと深緑の瞳を露わにする。
目を覚ましてすぐに視界に入ったのは、艶やかな黒髪。
小さな背に回していた手を少しだけ上へとずらし、触り心地の良い髪を梳いては、口づけを落とす。
「ぅんッ・・・・」
己の胸元に感じる吐息に自然と口元に笑みを浮かべてしまう。
髪だけでは飽き足らず、未だに眠りの中に居る少女の目蓋に、滑らかな頬へ、ふっくらした耳たぶへ、鼻先へ――至る所に唇を触れさせる。
けれど、一番触れたいはずの桜色の唇へ触れることはない。
唇以外の顔の至る所にちゅ、ちゅっと音を立てては笑みが深くなっていく。
けれど、少女は目蓋を震わせたり、吐息を吐き出すことはあってもなかなか目を覚まさない。
そんなあどけなくも色っぽい少女の寝顔に、青年の悪戯心がムクムクと育っていく。
「早く起きないと、もっと悪戯しちゃうよ?」吐
息交じりの声で少女の耳元で囁きながら着物に覆われたなだらかな背をゆったりと撫でる。
細い首筋には顔を埋めて唇を這わせる。
白い肌を強く吸えば、そこには己の刻印である花弁が散る。
「ぁん・・・」
少女の唇から甘い声が漏れるも少女の瞳は未だに閉じられたままだ。
「クスクス・・・強情だなぁ」
再び、少女の首筋へと顔を埋めて花弁を散らしていく。
「んーーー?」
幾つか目の花弁が刻まれた頃、やっと少女の瞳が薄らと開いた。
少女のぼんやりした瞳には、悪戯っぽい笑みを浮かべる青年が映っている。
「おはよ、千鶴ちゃん」
「おはようございます、沖田さん」
満面の笑みを浮かべながら、ここ一週間ほどのお決まりの態勢でお決まりの挨拶をする沖田に千鶴もお決まりの挨拶を返した。
だが、今夜はいつもと少しだけ――いや、大いに違っていた。
「んぁッ、んッ・・・・」
寝ぼけ眼だった千鶴の瞳が大きく見開かれる。
至近距離には沖田の整った顔があった。
シットリと瞳を閉じた艶やかな表情の沖田の顔が。
そして、唇には柔らかくて温かな感触。
片手の指で数えられるぐらいの回数しか触れ合わせたことのない口びる――。
恥ずかしさは残っているものの沖田の腕の中で眠りにつき目覚めるのが当たり前になりつつあった千鶴ではあったが、まだ口づけには慣れていなかった。。
というか、故郷の家で暮らし始めて一週間ほどが経つが、その間に一度も口づけを交わしてはいない。
ここに向う道中で想いを通じ合わせたとき以来のことだ。
不意打ちに反応できずにただ受け入れるだけだった千鶴の唇から沖田の唇が離れていく。
「ごちそうさまvv」
「うっ? えっ? あ、おそまつ、さま、でした?」
寝起きのせいもあったのだろう。頭が上手く回らないまま反射的に言葉を返す。
沖田の腕に抱かれながら寝ている状態のまま瞬きを繰り返している。
薄く口を開いてポカーンとしている千鶴に、沖田は笑い声を漏らす。
「そんな表情して・・・もう一度して欲しいの?」
揶揄いの口調でありながらその裏に確かな艶を感じ、千鶴の顔が燃えるように赤く染まっていく。
金魚のように口をパクパクさせる千鶴の姿は愛らしいものだった。
我慢出来ずに、千鶴の顔を己の胸元にくっつけるかのように抱き込む。
「え、あの、沖田さんっ!?」
ハッと我に返った千鶴は現状とたった今受けた口づけを思い出す。羞恥で頬を紅に染めたまま沖田の腕の中でジタバタと身体を揺らす。
千鶴の抵抗などものともしない沖田は笑みを深めるばかりだ。
「ねぇ、好きだよ」
トクンと高鳴るような言葉を耳にした千鶴の抵抗がピタリと止み、上目づかいで沖田へと瞳を向ける。
言葉のとおり愛しさと慈しみを宿した深緑の瞳に、千鶴の頬はますます紅の色を濃くする。
その瞳に映っているのが自分であることに心臓の音も先ほどより早くなっていく。
ただ、沖田の顔が段々と近付いてくるのを呆然と見つめていた。
そんな千鶴の桜色の唇に再び沖田の唇が重なった。
「――愛してるよ、千鶴ちゃん」
穏やかで甘やかな空気の中で沖田の真摯な想いが千鶴の鼓膜を震わせる。
キュッと沖田の袂を握り、胸元に顔を埋めた。
トクントクンと音を立てている鼓動が聞こえる。
お互いの胸の音が交じり合う幸せを感じた千鶴は顔を埋めたままポツリと言葉を漏らした。
「私も――愛してます。」
それは小さな小さな声。
けれど、沖田の耳に届くには十分な音量だった。
「うん。ここで、幸せになろうね」
「はい」
もう少しだけ――と言い訳しながら二人は幸せな微睡を楽しむことにした。
=====
暫く瞳を閉じて幸せの余韻に浸っていた二人だったが、名残惜しさを感じながらも緩々と身体を離して起き上がる。
外はまだ月が輝く時間だ。
けれど、月が空に姿を現してから随分な時間が経っていた。
「さて、そろそろ小川への散歩にでも行こうか」
「はい」
千鶴の故郷へやって来てから二人は毎夜のように小川へと通いつめている。
それは清水を口にし、若変水の効力を薄めるためだ。
完全に羅刹でなくなることは出来ないが、”人”としての日常を取り戻すことはできる。
朝起きて、夜には眠りに就く――そんな日常が。
現にまだ一週間ほどではあるが、少しづつ夜の活動時間が短くなっている。
手を繋いで寄り添いながら真夜中の山中を進んでいく。
「今夜も夜空が綺麗ですね」
澄んだ空気のおかげか月や星が煌々と輝き、千鶴の目を楽しませている。
「そうだね、可愛いよね」
「え? 可愛い?」
月や星が輝く夜空を見上げた感想が”可愛い”とは、どういうことかと首を傾げながら沖田へと顔を向ける。
「そうだよ。今すぐにでも口づけしたいぐらいに可愛い」
思わず顔が赤らむほどに甘い表情をした沖田が千鶴を見つめていた。
どうやら沖田の視線が向いていたのは、心浮き立たせながら夜空を見上げる千鶴だったようだ。
「な、なに言ってるんですか! か、揶揄わないでください!」
「揶揄ってなんてないよ。僕は本気だけど」
いつになく真剣な眼差しが千鶴を貫く。
「本当はね、口づけの先をしたい――千鶴ちゃんのすべてが欲しいんだ」
指を絡めて繋いでいた手をそっと持ち上る。
千鶴の白く滑らかな手の甲にそっと口づけを落とす。
手の甲に口づけたまま視線だけを千鶴へと向けた沖田の瞳にドキリと胸が音をたてた。
「あ、えと・・・え?・・・う?」
意味をなさない言葉ばかりが千鶴の口から零れる。
沖田の真摯な瞳に吸いこまれるかのように視線を逸らすこともなく見つめ続ける。
頬を染めながらポカーンと自分を見つめる千鶴の姿が可笑しかったのか、沖田がクツクツと笑い声をあげる。
(さっきといい、本当に可愛い反応するなぁ)
自分がこんなに愛しさを感じるのは、目の前の少女以外には一人としていないだろう。
こんなに欲しいと思うのも。
だからこそ正直な気持ちを口にしてしまったのが、今すぐにどうこうと考えているわけではなかった。
今は、千鶴とこうして手を繋いだり、抱きしめたり、口づけたり、そんな細やかな触れ合いでも心は満たされていた。
口元に持ってきていた手を下ろした沖田はニッコリとした笑みを千鶴へ向ける。
「今すぐに千鶴ちゃんを裸に剥いて、至る所に口づけて、千鶴ちゃんの奥深くに僕を刻みたい――なんて言わないから安心して?」
「なっ!? は、はだっ!?」
爽やかなほどの笑顔で、わざと直接的な言葉を口にする。
顔を真っ赤にして千鶴が慌てふためく千鶴の可愛い姿を見たいのと、遠くない”いつか”の心の準備をして貰うために。
千鶴の耳元に顔を寄せてそっと囁いた。
「朝陽で目を覚まし、月光に誘われて眠りに就く――そんな日常が戻った暁には、千鶴ちゃんのすべてを僕にちょうだい?」
――と。
<了>
★☆後書き☆★
リハビリ兼ねて、久しぶりにSS打ちました。
えぇ、妄想だけはあったんですが文章にできなくなっていました(汗)
うーむ、やはり仕事のストレスのせいか!?
つーわけで、反動で砂吐くような激甘にしてみました。
気が向けば、後日談を書きたいと思います。
では、ここまでお読みいただき有難うございました♪♪