※本編とFDのネタバレ大いにあります。

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【無垢】っていうのは言い換えるならただの【無知】ということだ。
何も知らない、ということは、この世で【最大の罪】だと俺は思ってる。
【知らなかった】では済まないことは、この世には山ほどある。
俺が生きてきた世界なら尚更で、【無知】であることは自分の命に関わってくる。
まぁ、そんな【無知】な奴らを騙して遊ぶのは、俺にとって一種の趣味のようなものだ。
完全に俺を信用した相手が俺の裏切りに気づいた瞬間、【無垢】だった存在が絶望に彩られて闇の淵に沈む姿を見るのが楽しくてしょうがない。
このゲームは相手が無垢なら無垢なほど楽しめる。
そしてそれにプラスアルファがあるなら尚更、な。

だからこそ、俺はゲームのターゲットをルルに決めた―――。

ちょうど退屈を感じていたときにあのアホ面で嬉しそうにマカロンを手にしてる姿を目にした。
俺の口元は自然に笑みの形を刻み、面白そうな予感で心が震えたよ。
今思えば、あれもある意味【運命】だったのかもな。
なぁ、ルル―――？

アイツは俺が今まで見てきたヤツラの中で一番の【無垢】な存在だった。
最初は、笑ったり、怒ったり、泣いたり、くるくると変える表情を楽しんでるだけだった。
人を疑うことも知らずに好意を寄せてくるくせに、ときにはハッとするような言動をとるルルが興味深かった。
【無垢】であるのに決して馬鹿ではない。
そう、【無垢】のくせに遠回りしたとしてもアイツの本能が最終的には【最善】へと導いているように思えた。
だからアイツを監察してるのは楽しかった。
なのに―――。
この学園生活に慣れていき、友人ができたアイツは、そこら辺にいる普通の少女・・・【無垢】でしかない存在になろうとしていて、それは俺にとっては最もツマラナイ状態であって内心苛々していた。

『自分で工夫して面白くしたらいいんじゃないかしら？』

普通なんて退屈でツマラナイ、と言った俺にアイツの返した答えに俺は一瞬呆気にとられた。
最近ツマラナイ存在になりつつあったルルの言葉に、コイツはまだ面白いものを残していると思った。
なら、コイツをゲームのターゲットにしようと考え付いた。
そう思ったら、再び期待が膨らんで気づいたら笑い声をあげていた――。


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「――で、まさかこんな強固な【鎖】を付けられるとは思わなかったけど、ねぇ～」
「あら、【大好きな私】とずっと一緒にいられるんだからアルバロだって嬉しいでしょ」
「・・・・あははは。断定形できたねぇ・・・ルルちゃんも言うようになったよね」
「えぇ、誰かさんのおかげでね」

傍から見れば和やかな笑みを浮かべ合っているのは、ミルス・クレア魔法院の制服を纏っている美男美少女のカップルだ。
ピンク色の髪の毛を結いあげている少女・ルルと、ミントグリーンの髪の毛をやはり結いあげている青年・アルバロの派手な髪色二人組みが、暖かな日差しが気持ち良いテラス席に向かい合って座っている。

「そう、だね。じゃぁ、キミを【大好き】な俺にキスしてくれるよね。ねぇ、ルルちゃん」

殊更に笑みを深くして甘く囁くアルバロに、内心ドクンと心臓を跳ねさせながらもルルは顔には出さずにニッコリと微笑み返す。

「ふふふ。【好き】の形はキスだけじゃないのよね、確か」
「ふぅん。キス以上のことしてくれるの？」
「・・・・どう、思う？」
「俺が聞いてるんだけど？」

瞳だけが笑っていない状態のアルバロを無視してルルは近くを通りかかった店員に声をかけた。

「あの、お水いただけますか？」
「はい、かしこまりました。少々お待ちください」

微笑みを浮かべたルルに水を頼まれた男の店員は、ルルにつられるようにいつも以上の笑みを浮かべるとカウンターの方へと向かって行く。
店員が去っていくと、アルバロの雰囲気が今までとガラリと変化する。
アルバロの冷たく鋭い視線に怯えることもなく、ルルは笑みを崩すことはない。

「・・・俺の問いには答えず店員をたらし込もうとするわけだ」
「そんなんじゃないわ。お水を頼んだだけでしょ」
「そういうことにしてやってもいいが・・・どういうつもりだ、ルル」
「別に。ただ、甘いものを食べ過ぎちゃったからお水で口直ししようと思っただけよ？」
「よく言う。いつもは口直しなんてしてないだろ」
「ふふふ。今日はしたいの。これからとびきり甘いスイーツを食べるんですもの」
「へぇ。甘い、ね？・・・それが俺の質問に対する答え、というわけか」

艶めいた笑みを浮かべながらお手並み拝見とばかりにルルを見やるアルバロに、ルルもまた艶めいた笑みを浮かべる。
テーブルの下でギュッと手を握り、ドクンドクンと高鳴る心臓を何とか抑え込む。

「お気に召してもらえると思うわ」
「それはそれは楽しみだ」

お互いに探るように微笑み合っていると、ルルの視界にアルバロの背後の方から先ほどの店員が水の入ったコップを手に戻ってくるのが見えた。

「ルーナ・アクア　潤いの水よ、高く飛び舞え」

トコトコと近づいてくる店員がアルバロの横を通り過ぎようとする直前、ルルは小さく呪文を唱える。
その瞬間、コップの中の水が高く舞い上がり、アルバロへと向かっていった。

「っ！？」

突然のことと、攻撃魔法ではなかったことで僅かに反応が遅れたアルバロは見事に水を被り、シャツが濡れそぼってしまった。
自分がやったことだというのに、わざとらしく驚いた様子を見せたルルはすぐに席を立ちあがってアルバロへと近づいていく。

「大変、すぐに乾かさないと！！」
「ルル・・・・オマエ」

すぐにこの原因がルルであることを把握したアルバロの更に低い声色が不機嫌さを表している。
そんな不機嫌さも気づかないフリをしたルルの唇が新たな呪文を紡ぐ。

「ルーナ・レーナ　眩き光よ、降り注げ」

その瞬間、辺りが目が眩むほどの光に覆われる。

「おい、ルル。オマエ何を―――」

眩い光に目が眩むこともなく、アルバロは不機嫌なままの声色ですぐ目の前にいるルルを睨みつける。

「だからさっきの【答え】よ」

ルルはそれだけ短く答えると、襟が開け放たれているアルバロの胸元に顔を埋めた。
フワリとアルバロの香りがルルの鼻孔を擽る。
アルバロの鎖骨あたりにルルの小さな唇が触れたかと思うと、チリっとした微かな痛みが走った。
呆けたようにルルのピンク色の髪の毛を見つめたのも一瞬のことで、すぐに不機嫌に歪められていた顔に意地の悪い笑みが浮かぶ。
暫くして光が止むと、ルルはアルバロのマントをその小さな手でギュッと握りしめながら顔を俯けている。

「へぇ、これがルルの【答え】ってわけか。【羊の刻印】だけじゃ物足りなかったと見える」

アルバロの鎖骨の下辺りの肌にはくっきりと小さな花弁が刻まれている。
それを視界に止めてから俯いたルルの耳元で殊更、艶を含んだ声色で囁く。
もちろんワザとだ。
俯いているルルの頬が赤く染まっていることを承知のうえなだけタチが悪い。
ルルの手がフルフルと震え、キッとアルバロを睨みつける。

「そうよ、悪い！？だって、アルバロは私のだもの！！好きっていう証をつけて当然でしょ！！」

逆ギレ気味に叫ぶルルに、笑いを堪えることが出来ずに噴出したアルバロの表情は何時もの表向きの笑みに変わっている。

「あはははは。やっぱりルルちゃん最高・・・うん、キミ面白いよ・・・ぷっ、あはははは・・・・」
「そ、そんなに笑うことないでしょ！！もういいもんっっ！！」

大げさなほどに笑うアルバロに、ルルは顔を真っ赤にしながら席を離れていく。

「本当、面白いよ、オマエ・・・闇を垣間見て【聡く】なりつつも【無垢】を残したまま、か。・・・・今度は俺が【証】つけてやるのがスジってもんだよな。なぁ、ルル？」

そのときのルルの反応を想像して期待でうっすらと黒い笑みを浮かべるアルバロの姿があったとか――。


『もっと俺を楽しませろよ？』


＜End＞


★☆★After Coment★☆★
はい、初のワンドで、尚且つ初アルｘルルSSでございました。
なんか、ニセモノ率高くてスイマセン。。。
まだキャラを掴めていないので。
そして、魔法も間違っていたらスイマセヌ。
（属性による詠唱の後の言葉は適当です）

つか、アルバロ、カッコイイーー！！
アルバロルートは甘くないけどね！ビターだけどね！！
だからこそ二次創作で甘くしてやりたくなるぜっっ！！

では、ここまでお読みいただき有難うございます。
 

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