廻るキセキ3~乙女の園に降り立つキセキ~
久しぶりの更新でスイマセン(汗)
オンリーも終了しましたので、更新用に戻れるかな、という感じです。
再度、お礼をば。
スペースまで遊びに来てくださった方、「いつも見てます!」との嬉しいお言葉をくれた方、本当に有難うございます!!感涙です。
あと、忙しくて中々コメントのお礼とかもできなかったのですが、コメント&拍手もありがとうございます。
いつになるか、本当にできるのかは分かりませんが、通販の検討はさせていただきます。
(こちらでの回答で申し訳ありません。)
では、今回の「廻る」ですが、副題のとおり乙女の園(笑)が舞台となっております。
そして、龍ちゃんx小鈴のかほりも漂っています。(龍ちゃんの登場はありませんが)
それでもOK!という方は、「読んでみる?」からドウゾ!!
▼読んでみる?▼
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子供と大人の境目にいる【乙女】たちが、【桜のように柔らかくも凛とした】立派な女性になるように、が学園方針でもある桜凛女学園高等部――。
この学園はあらゆる意味で有名な学園だった。
制服が可愛いことでも評判のこの学園は巷の少女たちの憧れの学園であり、少年たちにとっても評判の学園である。
――曰く、可愛い女の子が多い、と。
そんな桜凛女学園高等部の一年一組の教室では、年頃の少女たちの浮かれたざわめきで満ちている。
その理由は、HRが終了する少し前から校門脇の壁に寄り掛かっている一人の男子生徒が理由だ。
窓際の席の少女が目敏くその男子生徒の姿を見つけ、帰りのHRが終了するのと同時に「校門に格好良いヒトがいる!!」の一言で窓際には少女たちの群れが出来上がった、というわけだ。
少女達の黄色い声が教室中に飛び交っている。
「きゃぁvvあの校門のところにいるヒト、格好良い~~!!」
「あの制服って、誠風高のだよね?」
「え!!あの!?ここら辺じゃ偏差値が高くて文武両道が信念の高校だよね!?」
「なんでココにいるんだろう?やっぱ誰か待ってるのかなぁー?」
「誰か、って彼女とかかなぁ!?」
「えーー!!だとしたらショックぅ~~」
そんな騒がしいほどに色めきたった周囲の声も聞こえないかのようにボーっと呆けている少女が一人。
机の上に肘をつき、何度なく頬を紅く染めたり、溜息をついている。
そんな少女の元に、他の少女たちとは違って噂の男子生徒には興味がない様子の小柄な少女が近づいていく。
黒髪をおだんごに結い、幼さを残したような表情の中にも意志の強さを宿した瞳が印象的な少女だ。
「千鶴ちゃん、帰りましょう」
「はぁ・・・・・・・・」
「・・・・千鶴ちゃん?」
おだんごに結った少女は、名前を呼んでも返事のない千鶴の顔を覗き込むように腰を屈めた。
千鶴の目の前で手を振っても反応はまったくといってない。
千鶴の黒曜石のような瞳にはおだんごに結っている自分の姿がバッチリと映っているというのに返事がないということは、意識がどこかへ行ってしまっている証拠だろう。
つい数日前にも同じような事態に遭遇しているだけにすぐに悟ってしまった。
千鶴の意識にまでは自分が認識されていないようだ、と。
そして、千鶴が【誰】を見ているかも。
千鶴が見ているのは、実際にはこの場にいないであろう【あの男】なのだろう。
千鶴と二人である番組の公開録画を観覧に行ったとき、初対面であるはずの千鶴に衝撃的な出来事をやらかしてくれた【あの男】だ。
(あのヒトは、千鶴ちゃんを知っているような雰囲気だったけど・・・・千鶴ちゃんは知らないみたいだし・・・・でも・・・)
あの茶色い髪と翡翠色の瞳をした男の姿を頭に思い浮かべながら、チラリと千鶴へと視線を向ける。
「あ、沖田とかいうヒトだ」
「え、えぇ!!沖田さん!?」
ポソリと少女が呟いた名前に、さっきまでは何度呼んでも反応のなかった千鶴が過剰なまでに慌てた様子で立ち上がり、教室中を見回したす。
「ウソよ、千鶴ちゃん。だから落ち着いて」
「へ、うそ?・・・って、あれ? 静ちゃん?」
大きな目をパチクリさせる千鶴におだんごの少女・・・静は、はぁ、と溜息をついた。
「ここに、沖田、とかいうヒトがいるわけないでしょ?」
「そ、そうだよね。え、えぇとぉ・・・・?」
気まずそうに眉根を寄せて困った表情を浮べる千鶴に、静は本来の目的を告げる。
「もう放課後だよ、一緒に帰りましょ?」
「へ?放課後?」
何度か瞬きを繰り返してから腕時計を覗き込めば、とっくに15時をまわっている。
「ね?とっくにHR終わってるでしょ?」
「う、うん。ごめんね」
おずおずと申し訳なさそうな表情になる千鶴に、静は安心させるように優しい微笑を浮べる。
「うん、大丈夫だよ。でも、千鶴ちゃんってば今日一日・・・ううん、一昨日といいボーっとしっぱなしだよ?・・・まぁ、仕方がないといえば仕方ないと思うけど・・・」
【一昨日】というキーワードを聞いただけで千鶴の顔が再び茹でタコの如く、真っ赤に染まってしまう。
「ふふふ、千鶴ちゃんってば正直ね。でも、その様子を見ると、嫌ではなかったのね?」
「へっ!?そ、そんなことないよ!!・・・たぶん」
慌てる千鶴の姿に微笑ましさを感じて静は笑みを漏らしてしまう。
【一昨日】のことは、本来なら怒ってもいいような出来事だというのに千鶴の反応は違った。
その様子を隣で見ていた静には千鶴の気持ちをなんとなく察することができた。
沖田とかいう男の気持ちも―――。
あの出来事の瞬間、静は突然隣で起こった出来事にビックリして呆けてしまったが、その次に沸いた感情は怒りだったのだ。
人目のあるところで女の子にいきなりこんな事するなんて許せない!と。
千鶴との間に割り込んで抗議してやろうとも思ったのだが、静が行動に移すことはなかった。
いや、椅子から腰を浮かしかけてはいた。
けれど、沖田とかいう男の目を見た瞬間、身体から力が抜けて椅子へと再び身体を沈めていた。
翡翠の瞳には千鶴だけが映っていて、心の底から千鶴が愛しいのだと、沖田とかいう男のすべてが物語っていた。
見ているこちらが思わず脱力して赤面してしまうほどに。
そして、困惑しながらも頬を赤らめる千鶴の姿は嫌がっているようには見えなかった。むしろ―――。
「一目惚れ、でもしちゃった?」
「ひとっっ!?・・・・分からない。でも、うん、ドキドキは、してる、と思う」
「そうだよね。いきなりあんなことされたら、驚いて【ドキドキ】しちゃうよね?」
「・・・・うん」
「そっか。そのドキドキが【驚き】によるものなのか、【恋心】からくるのか分からなくて悩んでたんだ?」
「・・・・うん」
千鶴は素直にコクリと頷くと、恥ずかしいのか顔を俯けてしまう。
同時に教室内では変化がおきていたのだが、俯いていた千鶴と、千鶴に意識が向いていた静は周囲のざわめきがさっきまでよりさらに大きくなったことに気づけなかった。
「だったらさ、もう一度、試してみればいいんじゃないかな?」
「「え?」」
声の出処へと視線を向ければ、楽しそうな笑みを浮べている翡翠色の瞳。
「あははは。二人とも同じような顔して・・・面白すぎるよ?」
千鶴と静は口をポカーンと開けて、ただ目の前にいる男の姿を見上げている。
先に我に返ったのは静だった。
「な、なんでアナタがここに居るんですか!?」
それもそのはずだ。
目の前にいるのは、どこからどう見ようと【男】で、ものすごく見覚えがある。
というか、たった今まで話題にのぼっていたのだから。
「うーん?千鶴ちゃんを迎えに来ただけだよ?授業は終わったはずなのに中々出てこないからさ」
周囲の視線も省みることもない飄逸な男に、自然と静の眉間に皺が寄る。
「だからって女子校の中にまで入ってくるなんてどういうつもりですか!?」
「だって通りかかった子に聞いたら、ココまで案内してくれたんだもん」
「はぁああ!?」
関係者以外を校内に招き入れるなんて何を考えているのか。
例え相手が【イケメン】と呼ばれる部類だとしても、もしストーカーとかヤバイ奴だったらどうするつもりだったのだろうと、静は頭が痛くなる。
・・・・いや、あながちストーカーではない、とは言い切れない何かあるような気がしないでもないが。
「ね。千鶴ちゃん、僕と行こ?」
いつの間にか沖田は千鶴の手をとると、その白く滑らかな甲に口元を寄せて切なげに目を細めてジッと千鶴の瞳を見つめている。
その表情は捨てられた子猫の哀願のようにも思えてしまう。
「は、はい・・・・」
千鶴の胸がキュンと痛み、口から出たのは了承の言葉だった。
「ちょ、千鶴ちゃん!?」
「え・・・あ、あれ、わた・・・!?」
「そう?良かったぁ。じゃ、行こうっか?」
静に名前を呼ばれたことでハッと我に返った千鶴だったが、間髪おかずに沖田がそれを遮るように声を発し、有無を言わせない笑顔をニッコリと浮べる。
「で、でも・・・ごめんなさい!!わたし、今日は静ちゃんと帰る約束を・・・・」
「大丈夫だよ、その対策はバッチリだから。僕って運がいいよねぇ、ホント」
「え・・・沖田、さん?」
「は?何のこと言ってるんですか?」
それでも何とか声を振り絞る千鶴の強い心に、ますます惹かれる自分を感じて沖田はほんわりと暖かなものが身体を廻る感覚に心を震わせる。
そして、静のことは想定の範囲内と、告げる沖田の口元には弧が描かれていたが、その瞳はキラリと光っている。
考えるまでもなく、何かを企んでいるのが分かってしまうほどに。
だからこそ突拍子のない沖田のセリフに訝しげな声しか出てこない。
「えーと、静ちゃんだっけ?この間も千鶴ちゃんと一緒にいたよね?どっかで会ったことあるなぁ・・・って思ってたんだけど、今朝ポチの顔見たら思い出したんだよねぇ~~。君さ、【井吹龍之介】って知らない?」
「いぶき・・・?」
「そう。彼さ、君のこと探してるよ?・・・【小鈴】ちゃん」
「いぶきりゅうのすけ・・・・井吹はん?」
告げられた名をなぞるように静の唇が動き、ポソリと最後に紡がれたのは京なまりの呼び名だった。
「静ちゃん?」
「あ・・・私?」
「どうしたの?顔が赤くなってるけど・・・」
千鶴の心配そうな声にも反応できずに、静はただ心臓の上のシャツをキュっと握る。
なぜか分からないが、【井吹龍之介】という名を聞いた瞬間から頬が火照り、心臓がドクンドクンと煩いほどに叫びをあげているのだ。
「・・・ねぇ静ちゃん、これは提案なんだけど。君さ、今日は【Re:peat】でお茶する気ない?知ってるよね、【Re:peat】」
【Re:peat】とは、都内を中心に店舗拡大中の人気カフェである。
口の中で蕩けるようなフワリとした優しく甘いスイーツたちは全国の女性を魅了するほどだ。
それは千鶴と静も例外ではない。
「知ってますけど・・・なんでですか?」
「べつに?今朝さ、知り合いから【Re:peat】の特別招待権を奪・・・じゃなくて、貰ったんだよね。今日からコッチにある【Re:peat】に移ったみたいでさ・・・ホント、生きるための仕事には事欠かないよね、カレは。しぶといというか、なんというか」
ケラケラと笑いながら、沖田は静の前へとチケットを一枚差し出した。
そのチケットを暫くジッと見つめ、それから千鶴へと視線を向けた静は溜息を吐く。
「・・・・分かりました。そのチケットいただくことにします。何か企んでいそうで嫌ではありますが・・・・」
「でも気になるんだよね、【井吹はん】が」
「っ!!」
「僕もそうだったよ。・・・気になる【誰か】が確かにいるのにそれが分からなくてすべてを諦めて【自分自身】を偽って・・・・でも、【キセキ】って廻るものだよね」
その言葉が嘘ではないと分かるほどの優しい微笑みを浮べる翡翠の瞳には、愛しい少女の俯いた姿が映っている。
「・・・めんなさい・・・・そ・・・じ、さん」
繋いでいた手に僅かな力が籠められたかと思った次の瞬間に聞こえたのは、謝罪の言葉と【昔】の幸せな時間での呼び名で。
「千鶴ちゃん?今・・・」
「え?私・・・・?」
顔を上げた千鶴の瞳は驚きに見開き、目端からはポロポロと大粒の涙が零れている。
千鶴自身、自分が何故泣いているのか、こんなにも切ない想いで胸がはち切れそうになっているのか分からずにいる。
それでも―――
「泣かないで・・・僕は今【幸せ】なんだ。けど、もっと僕を【幸せ】にできるのは、千鶴だけなんだからさ」
愛しい気持ちを隠しもしない穏やかな声と、涙を吸ってくれる唇の柔らかく暖かい感触に憧憬を感じずにはいられない。
そのまま身を任せるかのように目を閉じよう・・・としたが、したのだが、残念ながら閉じられることはなかった。
「「きゃぁあ~~!!いやぁあっっ!!」」
沖田にとっておいしい雰囲気を壊してくれたのは、さっきからソワソワと周囲から沖田を見ていた少女たちの悲鳴だった。
「や、やだ、私ったら・・・・」
沖田の向ける甘やかな雰囲気が懐かしくて、心地よくてそれが自然のことに思えて身を任せそうになっていたが、ここがどこだったかを思い出した千鶴の頬は急激に朱に染まっていく。
それを隠すように、沖田の胸に手を添えて突っ張ることで身体を離した千鶴の顔は床とご対面状態になっている。
バクバクと脈うつ心臓の音がいやに大きく聞こえ、周囲の音が耳に入ってこないほどだ。
(わ、私、今・・・・このまま沖田さんに・・・・キス・・・して欲しいって・・・・な、なんで??)
千鶴がどんな想いでいるかも知らない沖田にとっては、非常に面白くない状態で自然と眉間が顰められ、ムッとした表情になっていく。
「沖田さん、こんなところで二人の世界を作れるわけがないじゃないですか。むしろ途中まででも展開できたことに私は畏怖の念をアナタに感じますけど・・・・で、そのチケット私にいただけるんですよね」
「は?」
わざとらしく大きな溜息をついた静は沖田をジトリと睨みながらも、スッと手を差し出した。
「こんな所で二人の世界を展開されるのは迷惑です、というか、千鶴ちゃんが可哀相なので場所をかえてください」
「へぇ・・・それって今日の放課後の千鶴ちゃんとの時間を僕にくれるってこと?」
「えぇ、沖田さんの気持ちはよぉーーーく分かりました。それと千鶴ちゃんの気持ちも。私が思っていた以上でしたよ、まったく。それより分からないのは・・・・」
「自分の気持ち、だけだよね?」
「っっ!!ホント、千鶴ちゃん以外には容赦ないですよね、沖田さんって」
「そんなことないよ?千鶴ちゃんの友達で、僕の一応トモって呼んであげてもいいかもしれない男の【大事なヒト】だからね。これでも珍しいほどの大盤振る舞いだと思うけど?」
「そうなんですか?」
「そうだよ。この僕がここまでお膳立てしてあげてるんだから」
沖田はニッと笑いながらチケットを静の手に乗せると、千鶴の鞄を手にしてすぐに千鶴へと身体を翻した。
未だに放心している千鶴の耳元に寄せて吐息混じりに掠れた声で囁きを与える。
「ホラ、千鶴ちゃん。今度こそ僕とイコ?」
そうすれば千鶴がどんな風になるかも知ったうえで。
そして、目の前の千鶴は沖田の予想を一寸も違えることがない。
涙目に真っ赤に染めた顔で両手で耳を抑えながら口をパクパクさせて沖田を見ている姿は、可哀相になってくるくらいに可愛くて可愛くてしょうがない。
可哀相だと思うのに虐めたくなる、そんな表情。
我慢も限界を超えそうになった沖田が、場所を移すべく千鶴の手をとって校外へと出るまでの時間は一瞬かとも思えるほどの素早いものだった。
その僅かな時間の後さえもクラスメイトの悲鳴が教室中に響き渡り続けたのは言うまでもないだろう。
その中でただ一人悲鳴をあげていないのは、手の中にある一枚のチケットを大切そうに胸に当ている静だ。
そっと目を閉じてまだ見ぬ【井吹はん】を想うと、トクンと胸が高鳴るのを感じた。
暫くして目を開けば、千鶴の手を引いて校門を通り過ぎていく沖田姿が入り込んでくる。
「【お膳立て】って・・・・。なによ、自分が千鶴ちゃんとの時間を独占したかっただけでしょ・・・でも、一応アリガト」
それを教室の窓から見やりながら口にした静の言葉はクラスメイトの悲鳴によって掻き消されたのだった――。
<END>
★★後書き★★
いえーぃ☆龍ちゃんx小鈴を匂わせてやったぜぃ!!
黎明録・沖田ルートの龍ちゃんだけど、何かの瞬間に小鈴と出会っていて、沖田夫妻との再会後、小鈴とも再会して恋に落ちてる設定だぜ!!
いいじゃん、龍ちゃんx小鈴も好きなんだもん。
(一番はおきちずですけど。)
今度は、龍ちゃんx小鈴を番外で書こうかしらん。
それと、もうひとつオマケで佐々木xあぐりも登場させたいわん。(いつものことながら予定は未定!!)
あれ、佐々木で良かったんだよね??・・・調べなおさなきゃ。
では、お読みいただき有難うございました!!