無自覚の飴と鞭(トキx春、HAYATOx春)
「うた☆プリ」の初SS(のわりには長げーよ・汗)です!!
最初はトキx春つーか、HAYATOx春でいってみました♪
ていうか、HAYATO様、楽しすぎっっ!!
では、「うた☆プリ」カモーン!という方は、「読んでみる?」からドウゾ!!
▼読んでみる?▼
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アイドル育成を目的とした【早乙女学園】には、上からSクラス、Aクラス、Bクラスが存在している。
そして、一番上のレベルであるSクラスの教室に男女二人の姿があり、ピアノの旋律が響いていた。
鍵盤を操る白く細い指先、リズムにのって少女の頬を撫でる髪先。
その指先が紡ぐのは、美しく繊細なピアノの音色――けれど、どこか迷いがあるような音だ。
傍らでその音色に己の歌声をのせている青年には、それがよく分かったのだろう。
曲の途中で青年の歌声がピタリと止み、その直後少女の指先もすぐに止まる。
すると、当然のことながら教室内がシーンと静まりかえった。
青年――一ノ瀬トキヤは、感情の見えない、いや冷淡ともいえる目で少女をジッと見つめると、暫くして溜息を吐いたのだった。
瞬間、少女――七海春歌の肩がピクリと微かに揺れる。
「七海君・・・今日はこれ以上やっても無理みたいですね」
「・・・すいません」
春歌は自分でもこのメロディーに納得がいっていなかったのだろう、自分の不甲斐なさに苦しげに顔を俯かせた。
「謝る前に結果を出してください。この世界、結果がすべてなのですよ。必要とされるときに結果をだせないなら意味がない」
「はい・・・」
トキヤが言うことは、尤も過ぎて春歌には頷くことしかできない。
才能があったとしても売れるとは限らない、運も実力のうち――それが自分たちが目指している世界の【普通】だ。
せっかくのチャンスに実力を発揮できないのなら、この世界では生きられないだろう。
「音に迷いがある以上、良い音楽は紡ぎ出せませんよ・・・君は何を悩んでいるのですか?」
「それは・・・・・・」
悩み・・・それに心当たりがあり過ぎるが、それを言うわけにもいかず春歌はキュっと唇を噛んだ。
「パートナーである私にも言えないことなのですか」
「・・・・・・・」
「では、仕方ありませんね」
「一ノ瀬、さん・・・・?」
トキヤの声にピーンと張り詰めたものを感じ、春歌はとっさに顔をトキヤへと向ける。
不安に揺れてる春歌の瞳を気に留めることもなく、春歌にとって死刑宣告にも近い言葉をト
キヤは口にした。
「明日、もう一度やっても駄目なら、君とのパートナーを解消します」
「っっ!!・・・・」
春歌の飴茶色の瞳が大きく見開き、呆然とトキヤの姿を映している。
一言も発することが出来ず、呼吸をすることも忘れてしまいそうになってしまう。
言い訳さえも出来ないほどにトキヤの言葉は春歌にとってショックなことだった。
それは自分の夢が叶わない、ということ――自分の曲でトキヤにデビューして欲しい、という夢が。
「明日の放課後が最後になるのか、アナタ次第ですよ、七海君。――では、私は用事があるので失礼」」
トキヤは一言それだけ言い放つと、振り返ることもなく教室から出て行ってしまった。
静まりかえった教室に春歌一人がポツーンと取り残されたのだった。
=====
トキヤが教室を去ってからどのくらい経った頃だろうか。
あれから、春歌は焦るかのように何度も何度もピアノを奏でた。
けれど、心に響くメロディーは一つも奏でることができない。
この想いを封印するしかないなら、作曲家として傍に居るしかないというのにそれさえも出来ない自分に涙が溢れてくる。
「私が・・・一ノ瀬さんの傍にいることさえも許されないのでしょうか」
涙が零れ落ちるのを堪えるように大きく息を吸うと、1つの鍵盤を人差し指で押す。
ポローンと、暗くなった教室に哀しげな音を響かせた瞬間、教室のドアが唐突に開け放たれた。
「あっれーぇ、まだ誰か居るのかにゃぁ~?」
「え・・・?」
その声に驚いて扉へと顔を向ければ、そこにはよく見知った顔があった。
それは数時間前までこの教室にあった顔とよく似たもの。
だけど、纏う雰囲気は間逆といっていいだろう。
「うわぁーー、春歌ちゃんっ!!おはやっほー!!あ、今は夜ですよ、とかのツッコミは駄目だよ、僕たちの世界では夜でも『おはよう』なんだから!」
静けさを打ち破るかのようなハイテンションな声と、満面の笑み。
鮮やかな水色のパーカーを羽織った青年、それは――
「は、HAYATO様っっ!?」
「うん、久しぶりだね!元気だったかにゃ?」
一ノ瀬トキヤの兄で、現役人気アイドルのHAYATOだった。
春歌は、自分が作曲家を目指すきっかけであるHAYATOの存在に大きな瞳を瞬かせる。
「は、はい。元気です・・・」
HAYATOに心配させまいと、ぎこちなくも笑みの表情を作ったが、HAYATOにはお見通しだったのか、眉間を寄せながら春風の額を指先でツンと突っついた。
「こーら、嘘は駄目だぞぉー。どうしたの?・・・・もしかして、トキヤが原因なのかな?」
「そ、そんなことは・・・・私が、私がいけないんです」
HAYATOの優しい声に、堪えていたはずの涙が一気に溢れだしてくる。
「うわっ!!春歌ちゃん!?」
「ご、ごめん、なさい・・・・す、すぐに止め・・・」
急に泣き出した春歌にHAYATOは驚いた表情をしたが、春歌が慌てて涙を拭おうとした腕をやんわりと掴み、そのまま自分方へと引っ張り込んだ。
「無理に止めることないよ。泣きたいときは思いっきり泣いていいんだよ。泣き顔を見られるのが恥ずかしいなら、このまま僕の胸に顔を埋めて・・・涙が止まるまで、僕に君を守らせて?」
「っっ!!」
春歌の華奢な身体を包んだHAYATOが子供をあやすかのように背中をポンポンと優しく叩いたり、撫でたりしていると、安心したのか春歌はひたすら涙を流したのだった。
暫く経って涙も枯れ果てて落ち着いた途端、春歌は自分の今の状況に今さらながらに気づき、羞恥で瞬く間に顔を赤く染っていく。
「少しは落ち着いた?」
「っっ!!す、すいません!!は、HAYATO様に・・・私ごときが本当にすい・・・・」
「すとぉーっぷ!『私ごとき」じゃないでしょ!それと、こういうときは『すいません』じゃなくて、『ありがとう』でしょ?」
慌てて身体を離して、思いっきり頭を下げようとする春歌の唇にHAYATOの人差し指が押し当てられる。
「~~っっ///」
頬を赤く染め上げながらパチパチと瞬きを繰り返す春歌の瞳にHAYATOの神々しいまでに麗しい笑みが映し出される。
「春歌ちゃん?どうかしたのかにゃ?」
「あ、い、いえ!!その・・・あ、ありがとう、ございます」
「うん、どういたしまして。君が少しでも元気になったなら僕も嬉しいよ」
「HAYATO様・・・・本当に何てお礼を言ったらいいのでしょう!!」
「僕が好きでやったんだから気にしないで。ね?」
「で、ですが、HAYATO様の胸をお借りしてしまうなんて・・・言葉だけでは足りません!!」
「んーー困ったなぁ・・・あ、じゃぁ何か一曲、僕のために即興で弾いてくれないかにゃ。僕も即興で歌うから!!」
「いっきょく・・・?」
「ダメ、かな?」
「と、とんでもないです!!そ、そんなことで良いのでしょうか!?私が嬉しいのではお礼にならないような気がします」
「そんなことないよ。僕もずーーっと君の曲で歌いたいって思ってるんだよ」
「そ、そんな私には勿体ないお言葉を・・・・で、では、お礼になるか分かりませんが、不肖ながら七海春歌、精一杯弾かせていただきます!!」
「うん、よろしくね」
グッと拳を握って息巻く春歌の姿に、HAYATOの口からは笑みが零れ落ちた。
再びピアノに向き合った春歌は、心が感じるままに鍵盤へ指を滑らせていく。
傍らから聴こえてくる楽しそうに弾んだ伸び伸びとした歌声に、春歌の心がワクワクと躍り、泉に水が湧くが如くメロディーが身体の奥底から湧き溢れてくる。
(あぁ、なんて楽しいんだろう・・・・こんな気持ち忘れていたような気がする)
ジャンっ♪――と、メロディーが奏で終わる。
春歌の両の手は暫くその余韻を楽しむかのように鍵盤の上に残し、目を閉じている。
そんな春歌の傍らでは、歌い終わったHAYATOが自分の口元に手を当てながら驚いたような表情をしていた。
けれど、それも一瞬のことで直ぐに常の屈託ない笑顔へと戻っていたため、春歌がそれに気づくことはなかった。
「ふふふ・・・やっぱり、ご兄弟なんですね。HAYATO様の歌、一ノ瀬さんにとても似てます」
「そう、かな?彼は・・・こんな風には歌わないんじゃないかな」
「いいえ、そんなこと無いと思います」
「え?」
春歌の言葉にHAYATOは意表をつかれたのか、首を傾げながら春歌を目をジッと見つめる。
「もし、一ノ瀬さんが今の即興曲を歌っていたら、きっとHAYATO様の歌と似ていたと思います。一ノ瀬さんもHAYATO様と同じでメロディーがもつ【心】を読みとって、その【心】を自分の身体を通して歌として表現出来る方ですから・・・・・あ!!」
柔らかな微笑みを浮かべながら真摯な瞳で説明していた春歌が突如何かに気づいたかのような声をあげた。
「え、なに?どうしたの、春歌ちゃん」
「そうか、そうだったんですね!!私、少し分かったような気がします!!ありがとうございます、HAYATO様のおかげです!!」
「よく分からないけど、君が笑顔になってくれて良かった」
「・・・・あれ?なんだか急にHAYATO様のお顔が掠れて・・・・・ふにゃぁ~」
HAYATOのおかげで心が軽くなったこと、そして今のスランプの打開策が見つかったことから安心した途端、疲れが出たのか春歌の身体からふと力が抜け落ちていく。
「危ないっ・・・・ふぅ、間に合った」
「すぅ・・・・すぅ・・・・」
それを目にしたHAYATOは咄嗟に手をのばして、その身体を支えた。
なんとか間に合ったことにホッと息を吐いて、腕の中へと視線を這わせれば、穏やかな寝息を立てている春歌の寝顔がある。
「寝ちゃったのかにゃ?おーーい、春歌ちゃん」
何度か春歌の名を呼んだが起きる気配がないことを悟ったHAYATOの表情からは、先ほどまでの陽気なほどの笑顔は消え、切な気な表情がそこにあった。
「・・・本当に君は不思議な人ですね。まさか私があんな風に・・・音也のように何も考えず心のままに歌ってしまうなんて思ってもいませんでしたよ」
シーンと静まりかえった夜の教室に二人の鼓動だけが微かに響いている。
「流石は私のパートナーというところでしょうか。どうか、私に君の曲を歌わせ続けてください・・・本音を言うなら君の曲を私以外の誰にも歌わせたくはありません・・・こんなこと言ったら君は呆れますかね?私はHAYATOにさえ嫉妬しているのですよ?」
愛の告白ともとれるその囁きは、誰に聞かれることもなく星が煌めく夜へと溶けていったのだった。
ちなみに次の日の夜の女子寮では春歌の嬉しそうな笑顔があったとか。
そして、男子寮では珍しくご機嫌なオーラを纏っているうえに鼻歌なんぞ紡いでいるトキヤに、ニヤニヤと面白がっている男や、何か良くないことが起こるのでは、と恐怖する男たちの姿があったとか。(何名かはスルーの男たちもいたが)
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★♪後書き♪★
すいません、なんだかんだで長くなってしまいました(汗)
HAYATO様がかなり私的ヒットなのですが!!
カワウイーーvv萌えるvv
そして、そのカワイイHAYATO様をあのイッチーがと思うと、なおさら萌えるv
(中の人の演技がまたHAYATO様の可愛さを際立たせてくれていてvvムフフvvってなってしまうよ☆)
とと、しつれしました。
ではでは、お読みいただき有難うございました!!