廻るキセキ2~もう一つの邂逅~
やっぱり、やってしまいました。。。
「廻るキセキ」、シリーズものにしてしまいました。
というわけで、カテゴリーに「廻るキセキシリーズ」が増えてます。
う、うちのシリーズものは基本、1話読みきりなんで!!(汗)
今回の”2”は、沖田視点ではございません。
とある学校のとあるクラスでの出来事になっております。
さて、誰視点になっているでしょうか~~。・・・分かります?(笑)
ちなみに、千鶴は今回登場なしです。名前しかでてきません。
では、「読んでみる?」から本文へドウゾ!!
▼読んでみる?▼
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今日からまたかったるい一週間が始まろうかという月曜日の朝――。
俺は朝のHRを知らせる鐘が鳴り響く廊下を歩いてた。
一歩先を行くのは今日から俺の担任となる教師で、白髪混じりに背広姿と、どこにでもいる中年の教師だ。
真新しい制服に着慣れていないせいか、居心地の悪さを感じながら教師の後を付いて行く。
すぐに目的の教室に着き、扉の前で教師の足が止まった。
目線を少しだけ上へと向ければ、プレートには【二年一組】と表記されている。
担任が教室の中へと入って行くのに続いて俺も教室へと足を踏み入た。
その瞬間、ざわめきが起こり始める。
「こら、お前ら静かにしろ!!今日は転校生を紹介するぞ」
すでに俺の噂はクラスメイトたちの耳にも入っていたみたいで、興味津々の視線が俺へと注がれている。
【転校生】だから注目されるのは仕方ないかもしれないが、ジロジロと値踏みでもされているようではっきり言っていい気分はしない。
自然としかめっ面になるのは仕方がないだろう。
俺は感情を隠すのはあまり得意じゃないんだ。・・・アイツみたいにふざけた態度と言葉で誤魔化すよりかはマシだと思いたい。
「皆、揃ってるか?」
俺を紹介する前に出席の確認をする担任の問いに答えたのは、クラスの盛り上げ役の一人らしい男子生徒だ。
「せんせー、沖田がまだ来てません~~」
「沖田が?珍しいな・・・」
「な、沖田ぁッッ!!??」
その名前を聞いたとたん、俺は思わず担任の言葉を掻き消すほどの素っ頓狂な絶叫をあげていた。
担任やクラスメイトたちから訝しげな視線が俺に向けていることに気づいて、気まずい心持ちで口を閉じる。
「井吹、どうかしたのか?」
「あ、いや、・・・昔馴染みの奴かと思って驚いただけ、です。・・・そんな偶然あるわけがないよな」
慣れない敬語で担任へと言い訳をすると、ポソリと自分を落ち着かせるように呟く。
そうだ、そんな偶然が早々あってたまるか。――それにアイツも【覚えてる】とは限らないんだからな。
「そうか?それにしても沖田が遅刻なんてめずらしいな」
「真面目君ですからねー、沖田って。暗いつーか、なんつーか」
「こら、佐伯!沖田はクラスメイトだろうが」
「だって、本当のことだしー」
クラスメイト全員が佐伯の言葉に頷いたり、嘲笑を浮べている。
そんなクラスメイトの態度にムッとして俺は顔を顰めた。
集団になれば、こういう手合いが居ることも理解できるが、気に入らないものは気に入らないんだから仕方がない。
だが、直ぐにそんな想いを隠すように俺は無表情を決め込むことにする。
基本的に面倒なことはお断りなんだ。・・・認めるのも癪だが、なんだかんだで流されちまってることがあるのは確かだ。
俺は気分を切り換えるように、得た情報を整理して沖田という奴の人物像を思い浮かべてみる。
担任とクラスメイトたちのやり取りを聞く限り、このクラスに在籍している沖田とやらは真面目だが、暗い性格で、クラスメイトとの交流もほとんどないようだ。
・・・・どこをとっても俺が知る”沖田”ではないな。別人で間違えないだろう。
あの神経を逆立てる言葉の数々を聞かずに済むかと思うと、俺の口からはホッとした溜息が漏れ出た。
なんとなく寂しさを感じてしまっているのは、俺の勘違いだろう。
今の溜息は、断じて、あの沖田じゃなくてガッカリした溜息なんかじゃないからなッ!!
俺はそんな自分を誤魔化すように軽く頭を左右に振っていたが、ふと堅い表情を浮べながら何やら考えている担任の姿が目に入る。
「連絡もないとなると心配だな・・・」
まぁ、今まで遅刻も、連絡無しに休むこともなかった生徒だったみたいだから担任が心配になるのも当然か。
暫しの逡巡の後、沖田の家へ確認の連絡を入れた方がいいと判断した担任が自習を言いつけようとしたのと同時にガラリと教室の扉が音を立てて開かれた。
音に反応して、自然と視線は扉の方へと向けられる。
「ふぁあーー、おはよーございます」
教室にいる全員にとってもそれは同じのようで、一人の生徒へと注目が集まった。
その生徒は、口を手で覆いながら眠そうに欠伸をしている。
その証拠に、寝ぼけたような締まりのない緩い声色で朝の挨拶を口にしながら、だるそうな足取りで教室へと入ってきた。
俺以外は、その生徒に見覚えがないようで一瞬呆けた後、探るような目つきになっている。
俺といえば、目の前にいる男の姿が信じられずにいる。
何か言いたいのにそれを言葉にすることも出来ずにもどかしい想いでいっぱいで、ただ、指先をソイツへ突きつけながら口を馬鹿みたいにパクパクと動かしているだけだ。
そんな俺をよそに教師は正体不明の生徒の前に立ち塞がり、怪訝な表情を生徒へと向ける。
緩められた襟元に巻きつけられているのは、ここにいる男たちと同様の赤のネクタイだ。
この学校では、学年ごとにネクタイ(女子はリボン)の色が違う。
赤のネクタイをしているのだから二年であることは確かなようだが、見覚えの無い生徒から担任が視線をを外すことはない。
ソイツが一目見たら忘れられないだろう存在感を放っているだけに、この学年の担任を持っている教師がその生徒に見覚えが無いのが腑に落ちない、といったところなんだろう。
そんな担任と対照的なのは女どもで、クラス中の女生徒たちが色めき立っている。
女生徒の顔には期待に満ちた色が浮かび、顔を赤くさせているものや見惚れてしまっている女生徒がほとんどだ。
見覚えの無いその生徒をチラチラみては女子同士で小声で盛り上がっている。
ついでにいえば、男子生徒に到っては面白くなさそうに文句を言い募っているんだが。――それもそのはずだよなぁ。
眠そうにしているコイツは、整った顔立ちに、均整のとれたスタイルの持ち主だ。・・・【剣の天才】とまで言われてたからな、今も剣道かなんかでバッチリと鍛えてんだろうよ。
眠いせいで細められているが切長の目にパッチリとした二重、輝く翡翠色の瞳、鼻筋スッととおり、薄く形の良い唇、緩めた襟元から覗く綺麗な鎖骨、広い背中に細い腰と見事な逆三角形の身体・・・と、その生徒を形取るものはすべてにおいてイケメン】と呼ばれる部類のものであり、女生徒が騒ぐのも当然だ。
確かにコイツが【イケメン】であることは認めるが、非常に面白くない。
顔良し、頭良し、運動神経もバツグンで、剣の才能もあり強い・・・・・・何の嫌味だ。
まぁ、性格は悪いがな。
と、まぁ驚愕しながらも頭の中では冷静な思考を巡らせていたんだが、俺の横で担任の声がソイツへと向けられる。
「君、何組の生徒だ?」
「何組って、ここに決まっ・・・・」
「沖田ぁああああああっっっ!!!!!!!!!!」
担任の質問にソイツは寝起きの呆けた声で答えようとしたが、それを掻き消したのは俺だ。
先ほどから空気にしかならなかった言葉がやっと音に変って絶叫となった。
俺とは逆に言葉をなくしたのは、担任やクラスメイトたちだ。
正体不明の【イケメン】生徒が、あの【真面目で暗い沖田】だということや、沖田と俺が知り合いらしいという事実に、担任やクラスメイトたちは言葉も無く俺たちを凝視している。
「あれー、井吹君じゃない。久しぶりぃー」
そんな教室を包み込む雰囲気にも沖田は気を留めることはせずにその口元に笑みを刻んでいる。
その表情はクラスメイトたちにとっては初めて見るものかもしれないが、俺にとっては見慣れた飄々とした笑みだ。
――懐かしさを感じるのと同時に、思わず”あの頃”を思い出してイラッとくるぐらいにな。
「”久しぶりぃ”じゃねーよ!なんで沖田がココにいるんだッ!?」
「何でって、当たり前のことを聞かないでくれない。そんなことも分からないくらいに馬鹿なわけ?――普通【犬】は賢いものなんだけどね。まぁ、君は別かもしれないけど」
やっぱり沖田は、俺の知ってる沖田だった。
この様子だと記憶もあるみたいで、挨拶代わりとでもいうように平然と嫌味を繰り出してきやがる。
「”犬”って言うな!芹沢さんが勝手にそう呼んでただけだろう!!・・・ってそうじゃなくてだな!このクラスの”沖田”とやらは真面目で暗いヤツじゃなかったのか、って話をしてるんだよ!!お前とは正反対の”沖田像”を聞かされていたんだよ、俺は!!」
沖田の言い様に一気に血が頭へと上り、声が大きくなってしまう。
あんな風にクラスメイトたちに言われていたのに当の本人は飄々としていて、俺は意味も分からずにイラツキを覚えた。
「うるさいよ、井吹君。”真面目で暗い”って失礼じゃない?」
「俺が言ったんじゃないっ!!こいつらが言ってたんだよ!」
「ふぅーん、そう。・・・まぁ、当たり前といえば当たり前かなぁ」
【ふぅーん】って気の無い言葉はなんだよ!?
お前はそんな奴じゃなかっただろう!!
んなことを言おうものなら十倍どころか百倍返しは普通だっただろ、お前っ!!
と、思ったが、それが勘違いであることに気づく。
少なくとも今俺の目の前にいる沖田は、昔のまんまの反応をしているからだ。
チラリとクラスメイトたちへ視線を向けた沖田は相変わらず笑みを浮べていたが、目は笑っていなくて禍々しいほどの殺気が放たれている。
教室の中が一気に氷点下まで下がったような冷気に包まれる。
教師もクラスメイトたちもゴクリと唾を飲み込んで、沖田から目を離すことができない。
目を離した瞬間に命を奪われかねない緊張感が漂ったが、それは一瞬のことだった。
沖田がすぐに興味をなくしたかのように、俺へと向き直ったからだ。
「”当たり前”ってなんだよ。このクラスの”沖田”がお前なら、普通は”真面目で暗い”じゃないだろ。どっちかっていうと、”捻くれた性格の油断ならない奴”だよな!?」
「・・・・・・・・・」
クラスメイトたちは沖田の興味が俺へ向いたことで安堵の溜息をつく。
つまり、自分に被害が及ばなければ問題はない、ということなんだろう。
――沖田としては、そんな奴らに構うのも馬鹿らしかっただけなのだが。
「つーか、その前にクラスの奴らがお前のこと表立って好き放題言えるはずがないよなっっ!!近藤さんとあの可愛い嫁さんと子供以外には血も涙も無いお前なら、【斬っちゃうよ】とか言って殺気だけで相手を殺せるもんな!?」
だが、久しぶりの”犬”呼ばわりに多少頭に血の登っていた俺は、自分の失言に気づくことが出来なかった。
「ちょっと、井吹君・・・なに失礼なこと言ってくれちゃってるわけ?濁流に突き落とすだけじゃなくて今度こそキッチリと斬ってあげようか?」
「っ――――」
沖田の表情から完全に笑みが消えたところで、俺はやっと自分の失言に気づいて口を閉ざす。
「それと――確かに千鶴は可愛いけど、手をだしたらどうなるか・・・・分かってるよねぇ」
言葉が進むにつれて沖田の声色が低くなり、目も据わり始めている。
コイツ、本気だ。俺には分かる。
「ちょ、ちょ待てって!!お前の【斬る】とか【殺す】は冗談にならねーんだって!!」
”あの頃”の話とはいえ、沖田には近藤を暗殺しようとした隊士を斬ったという前科があるのだ。
しかも、再会した際に目の当たりにした、沖田の嫁さんへの惚れ込み具合を考えると冗談で済ますわけにもいかないだろう。
「あはははは。嫌だなぁ、井吹君。・・・当たり前じゃない、【本気】なんだから」
沖田は俺の考えがあっていることを証明するように、形だけの笑みをその整った顔に微塵も浮べることもせずに乾いた笑い声とともに、ドス黒いものを秘めた言葉を口にする。
俺、マジでヤバイかもしれない、俺は転校初日にして命を落とすことになるのか!!??
い、いや、それは勘弁してもらいたい。
俺は、俺は、まだ【アイツ】に再会してないんだッッ!!ここで死んでたまるかッ!!
「だからッ!俺がお前の嫁さんに手を出すはずねーだろ!!お前、本当に近藤さんと嫁さん以外には容赦ねーよなっっ!!」
【アイツ】のことを思い浮かべた俺の目には力が込もり、意志だけでも沖田に負けないようにと睨み返したんだが・・・。
「当たり前じゃない・・・・僕を信じてくれたのは、信じさせてくれたのは、近藤さんと千鶴だけなんだから―――――。」
予想外のことに、沖田は寂びしそうな色を表情と声に滲ませた。
沖田が抱えるもう一つの側面を思い出す。
それは自分と似すぎている部分。その気持ちが自分のことのように理解できてしまう部分だ。
「沖田・・・・」
昂ぶっていたものがスッと落ち着いていき、静かな声色で自分と似すぎた”友”の名を呟く。
「あと―――、かな」
沖田の口からふいに漏れた小さな呟きは、音になるかならないかのものだった。
「何か言ったか、沖田?」
「別に何も。・・・ただ、井吹君は相変わらず人に流されやすいな、って言っただけ」
再び意地の悪い笑みとともに意地の悪い言葉をぶつけてくる沖田に、俺の肩が怒りに震える。
「おーきーたぁああああ!!!今日という今日は絶対に許さないからなぁ!」
「君が僕に敵うと思ってるわけ?」
「うっ!!」
「・・・・そこで怯まないでかかってくれば、少しは認めてあげたのに。本当に井吹君って変ってないよね」
「くっ・・・お前もなっっ!!」
その後も俺たちは、唖然としている担任とクラスメイトを無視して久しぶりの再会を堪能したのだった。
――だが、疑問が残ったままだ。
何故、沖田がクラスメイトに【真面目で暗い】と評されていたのか、ということだ。
まったくもって腑に落ちん!!
<END>
★★後書き★★
やはり「廻る」がシリーズになってしまいました(汗)
黎明録をやったら、この「廻る」でやりたいネタが増えたともいふ。。。
・・・と、いうわけで今回は龍ちゃん視点にしました。
龍ちゃんと沖田のコンビも好きなのよねぇ。
そして、龍ちゃんx小鈴も好きだ!!
あ、書いちゃったけど、そのうち小鈴もだしますよ♪♪
絶対、沖田x千鶴に絡ませてやるvv
では、お読みいただき有難うございました!!