【18888Hit !】 桜餅と渋茶 ~後半~
本当に申し訳ありません!!
沖千で千鶴が嫉妬する話で、「桜餅と渋茶」の後半になります。
また長くなりました、本当にごめんなさい(>△<)
しかも自分の趣味に走った部分が・・・・・(大汗)
どこ、とは言いませんが。(多分、バレバレですね)
るか様のみお持ち帰りOKです!!
ではでは、「読んでみる?」から、後半・本編へドウゾ!!
▼読んでみる?▼
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【桜屋】の包みをぼんやりと視界に留めた千鶴の脳裏に”あの日”の【桜屋】でのことが否応無く思い出されれる。
”あの日”に見た【二人の笑顔】も―――。
ぎゅーっと締め付けられるよう胸の苦しさもが強く蘇り始める。
「そんなに嫌?・・・・・僕が、あの娘と楽しそうにしてたのが」
空を彷徨わせる千鶴の瞳に哀しみの色が浮かんでいることを沖田が見逃すわけもなく言葉を発する。
そんな沖田に千鶴は焦りで混乱するばかりだ。
「そ、そんなこと・・・・」
沖田の言う通り、嫌で嫌で仕方がなかった。
女の子の格好で女の子として沖田への笑顔を交わせる少女が羨ましくて、でも、そんなこと言う資格は自分には無くて。
けれど、千鶴は動揺しながらも咄嗟に否定しようとしていた。
自分の立場や沖田が望むもののことを考えればこの気持ちを知られるわけにはいかないからだ。
「『ない』わけないよね。あの日の”あのとき”も今みたく泣きそうになってたもんね」
だが、沖田の確信しているかのような強くしっかりした声がそれを遮ってしまう。
沖田のその言葉に千鶴は何も言い返すことが出来ないまま俯いてしまう。
蘇り始めていた苦しさに息すことさえ難しくなってくる。
そうなってしまえば、必至に耐えていた涙は意図も簡単に溢れ出て、止めることなど千鶴にはできない。
「ふぇっ・・・・な、なんで、そんな・・・こと、言う・・・んですかぁ・・・・」
我慢に我慢を重ねていた想いが千鶴の小さな身体の奥底から堰を切って溢れ出してくる。
「何でって、本当に分からないの?」
そんな千鶴に対して僅かに沖田の眉間に皺が寄る。
「そ、そん、なに・・・わ、わたしの、こと・・・・きら、い・・・ふぇ・・・」
こんなグルグルしてドロドロした想いでいっぱいの自分なんて、嫌で嫌で、大嫌いで仕方がないのに言葉を止めることなんて出来なかった。
ふいに自分が発した『きらい』という言葉に、沖田もこんな自分なんて嫌いに決まっていると気づいた瞬間、大粒の涙が千鶴の黒真珠の瞳から際限なく生まれては頬を滑っていく。
「ちょっと来て」
沖田は、更に涙が溢れ出そうになっていた千鶴の腕をギュッと握ると徐に歩き出した。
唐突とも言える沖田の行動に頭がついていかない千鶴は沖田のなすままに歩を進めていたが、外へと続く門の所まで来てハッと慌て始める。
「ど、どこに行こうとしているんですか、沖田さんっ!」
「付いてくれば分かるよ」
後ろにいる千鶴へと振り返ることもせずに一言だけきっぱりと告げる沖田に、千鶴は困惑してしまう。
「で、でも、外に行こうとしているんですよね!? わ、私、今日は外出許可をいただいていません」
「大丈夫だよ、僕が一緒なんだから」
「で、でも、土方さんに・・・・」
「土方さんのことなんて気にすることないよっ!!」
千鶴が土方の名を出した瞬間に沖田は足を止めて怖いほどの冷ややかな怒りを含んだ言葉を吐き出した。
「え・・・おきた、さん?」
急な沖田の変化に千鶴は驚きで涙で濡れている瞳を瞬かせたる。
「ねぇ千鶴ちゃん。お願いだから一緒に来て?」
「・・・・なんで・・・・何で沖田さんがそんなに辛そうな顔をされるんですか・・・・」
懇願するような響きに千鶴は戸惑いながら、そっと沖田の頬へと手を添える。
「・・・君と【同じ】かな」
「え?おなじ?」
「そう。だから一緒に【桜屋】に行こう」
「さくらや・・・・」
沖田の口からはっきりと【桜屋】と聞いて、千鶴は困ったように視線を下に向けてしまう。
出来れば【桜屋】には行きたくなかった。
醜い自分を感じて自己嫌悪するだけだと分かっているから――。
「そう。千鶴ちゃんと、”あの日”みたいに桜餅を食べたいから・・・・それにあの娘とも約束したしね」
「え・・・やくそく・・・・?」
「うん。君と一緒に桜餅を食べに来るって」
「わたし、と?」
頬に添えられていた千鶴の手をそっと掴んで己の口元へと誘導する。
そして、千鶴の白く細い指先に唇を触れさせながら言葉を続ける。
「そうだよ。だから一緒に・・・ね?」
「ぁっっ・・・」
指先にかかる吐息がくすぐったかのか、千鶴の口からは甘い声が零れ落ち、頬を紅色に染め上げていた。
だが、千鶴の頭の中は混乱でごちゃごちゃになってしまっていた。
嫌な気持ちになって、落ち込んで、悲しんで、迷って、泣き続けていたかと思えば、こんな風に恥ずかしさと嬉しさで頬を赤らめているのと同時に疑問が広がるばかりである。
『千鶴と一緒に桜餅を食べに来る』――それが、【桜屋】の少女と沖田がした約束らしい。
なぜ、そこに自分が入っているのか?
たくさんの感情が入り混じって頭が爆発寸前ではなかろうかというくらいに千鶴はあたふたとしていたが、あの日のどこに沖田が【桜屋】の少女と交わしたという約束の要素が含まれていたのか、”あの日”の【桜屋】でのことが千鶴の脳裏を走馬灯のように駆け巡っていった。
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”あの日”の【桜屋】――。
たまたま浪人から助けた少女が【桜屋】の看板娘であり、お礼をさせて欲しいと、強く懇願されたことから千鶴は断ることが出来ずに【桜屋】とやって来ていた。
買出しの途中であることは気に掛かってはいたが、少女のお礼をしたいという気持ちを無碍にもできない千鶴の性格にプラスして、沖田が「べつに少しくらいいいじゃない♪」と千鶴の背を押したのが大きな理由だったりする。
とはいえ、千鶴も最初はホンワリとした幸福感を堪能していたのだ。
繁盛していることに納得してしまうほどに、甘くてしっとりとした桜餅は絶品で、さらに暖かなお茶がその甘さを優しく包み込んでくれるかのようだった。
桜餅をほお張りながら『ほっぺたが落ちちゃいそう』と思わず呟くと、クスクスという笑い声が聞こえてくる。
チラリと瞳だけを隣に向ければ、千鶴のそんな姿を目を細めて見つめている沖田の姿がある。
その表情は楽しそうで、どこか優しい眼差しをしている。
その事実に千鶴は、秘かに幸せと共にトクントクンと心臓を高鳴らせていたくらいだった。
そう、つい数刻前までは―――。
今は桜餅の味も思い出せないほどに、幸せを感じていたはずの心がズキズキと痛みを訴えている。
「っっ―――」
ぎゅーっと心臓が握りつぶされるような痛みに千鶴は無意識に自分の胸部の着物を握り込みながら、目の前の光景に息を飲む。
千鶴の呆然とした黒真珠の瞳に映し出されているのは、これ以上なく楽しそで綺麗な笑みを浮かべる沖田と、見る者を明るくするような朗らかで愛らしい笑顔の少女で―――笑顔に溢れた【二人】の姿。
沖田の隣で花の顔を綻ばせている、この茶屋の看板娘は千鶴と同い年くらいのようである。
年頃の女の子らしく結いあげた艶やかな髪には小柄ながらも愛らしい簪が挿され、袂をたすき掛けした着物は少女によく似合う鮮やかな山吹色だ。
そんな少女に対して今の千鶴といえば、艶やかな黒髪を一本に結い上げ、上衣に袴、腰には小刀を差している。
その姿は、さながら少年武士である。
例え、白い肌に柔らかな頬の輪郭、大きな瞳、自然な桜色に色づいた小さな唇と、愛らしさに溢れていたとしてもだ。
刀を腰に差す女など本来ならありえないのだから、何も知らない人物が千鶴を見かければ一瞬戸惑いはするだろうが【女顔の少年】と判断するだろう。
いや、【男】に見えねば困るのだが。
【男】として屯所でお世話になっている千鶴としては【女】だと知られるわけにはいかない。
それでも、今の自分が絶対に出来ない娘の格好に羨望や様々な感情を覚えてしまう。
目の前にいる沖田の存在が千鶴のそんな想いに拍車をかけているのだろうに、当の本人はそのことに気づいていないかのように茶屋の娘に悪戯っぽい笑顔を見せている。
それ以上は見ていたくなくて、こんなドロドロとした醜い自分を知りたくなくて、千鶴はギュッと固く己の目と口を閉ざす。
現実から目を背けるように光を遮った千鶴の目蓋裏に浮かぶのは数刻前の青空と、何時ものからかいを含んだ翡翠色の瞳―――。
けれど、千鶴の耳を通り抜けていくのは、いつもは千鶴へと向けられているのと同じ意地悪で優しい沖田の声と―――そして、少女の歓喜した弾んだ声。
どんどんと加速して心が冷えていく感覚に千鶴の表情から笑みが完全に消えていった。
「あの、ぜひまた寄って行ってくださいね」
「ん、ありがと。噂どおり凄く美味しかったし、また寄らせてもらうよ」
「本当ですか!!絶対にまたいらっしゃってくださいね、沖田さん!!」
嬉しさを隠すこともない興奮したような少女の声が狭い店内に響き渡り、感情が声や表情に出てしまう素直な少女に沖田は興味を覚えたのか、クスクスと笑い声を漏らしている。
「――――君、面白いね」
「お、面白いってどういうことですか!?」
笑いながら告げられた沖田の言葉に少女はぷぅーと両頬を膨らませて上目遣いに睨みつける。
その姿は傍目から見れば愛らしくしか映らないだろう。
「だって君さ、さっきから―――――――でしょ?」
「っっ!!き、気づいてたんですかっ!?」
沖田はよほど面白いのか笑いを絶やさないまま、頬を膨らませる少女の耳元に顔を寄せて何事かを囁く。
すると、少女の目が見開き、顔が瞬く間に真っ赤へと染まる。
「うん、もちろん。気づかない方がおかしいと思うよ、あんな・・・・あ、僕の連れは鈍感だから気づいてないと思うけど」
「だ、だから・・・途中からあんなに・・・・積極的、だったんですか?」
「うん、もちろん♪♪・・・僕にとっても役得だし、君も堪能できたんなら一石二鳥じゃない?」
「そ、それは・・・・・・はい」
しどろもどろに少女が尋ねれば、沖田は満面の笑顔でもって肯定の言葉を口にする。
そんな沖田に少女は観念したかのように小さな溜息を一つ吐くと、少女も素直な気持ちを告げた。
「ふぅん、そう。なら良かった・・・またいつでも堪能させてあげるよ?」
口の両端を綺麗に吊り上げていた笑みを片端だけにして悪戯っぽい微笑みに変えると、少女の耳元でコソリと囁きかける。
「・・・・ほ、本当ですか!!う、嬉しいです~~!!絶対、絶対ですよ!!また絶対にいらしてくださいねっっ!!」
少女は一瞬、何と言われたのか分からずに瞬きするのも忘れたかのように呆けていたが、その言葉の意味を理解すると、大きな瞳を更に見開き、瞬く間に頬を紅潮させていく。
自然と少女の言葉は興奮で語調が強くなっていた。
「あははは、本当に君は面白いねぇ~~」
「だって、沖田さんにはすっかり気づかれていますし、今さら隠しても仕方がありませんからっ!!」
あからさまと言っていいほどに目の色を変える少女に、沖田が心底おかしそうに笑い声をあげる。
「へぇ、随分と潔いんだね。うん、じゃぁ、期待に応えてあげないとねぇ・・・・」
「・・・・沖田さん、何か企んでませんか?」
「ぅんー?べっつにぃーー?」
笑いを収めた沖田がチラリと視線を向けた先には、黒真珠のような瞳からは光彩をなくし、唇を堅く噛み締めて俯く千鶴の姿。
千鶴の苦しそうな姿を目にしながらも、沖田から漏れ出るのは微かな笑みだった。
もちろん、すべの意識を自主的に閉ざしていた千鶴が沖田のそんな様子に気づくわけがないのたが。
それからどのくらいの時間を一人でいたのか、どうやって帰ってきたのか、千鶴はよく覚えてはいない。
腕を引っ張られていたような感覚をうっすらと覚えているだけだった。
「ねぇ・・・・千鶴ちゃんも僕と同じ気持ちを少しは感じるといいよ」
その際、沖田がポソリと呟いた言葉さえも心を閉ざしていた千鶴には聞こえてなどいなかった。
=====
「はい、あ~~んして、雪村くん♪♪」
心から楽しそうな悪戯っぽい笑顔を浮かべて沖田が千鶴の口元へと差し出しているのは、淡い桜色が可愛らしい、絶品の桜餅だった。
その桜餅を視界に入れた後、千鶴はチラリと上目遣いに沖田へと視線を向ける。
そして、暫く桜餅と沖田を交互に見やってから、意を決して口を開く。
「え・・・えと・・・あの沖田さん、これは一体??」
「ほら、ちゃんと『あ~~ん』してよ」
「で、でも・・・あの・・・」
口元をもごもごさせながら、千鶴は【桜屋】の狭い店内に視線を這わせる。
そこには、狭い店内とはいえ、繁盛店らしく客であふれている。――”あの日”と同じように。
そう、千鶴と沖田は半年ぶりぐらいに【桜屋】の店内で肩を並べていたりする。
【桜屋】の暖簾をくぐると、出迎えてくれたのは”あの日”の少女で、沖田と千鶴、二人の顔を交互に見ると満面の笑顔を浮かべた。
注文聞きの際には、『やっとお二人でいらしてくださったんですねっ!!」と、何故か興奮した様子だったりした。
そんな少女の様子に理由が分からずに千鶴が呆けているうちに、桜餅とお茶が運ばれて来ていて、沖田の『あ~~ん、して』で正気に戻ったのだった。
「さっきココに来る前に僕はちゃんと言ったでしょ。『”あの日”みたいに桜餅を食べたいから』って。”あの日”はちゃんと『あ~~ん』してくれたじゃない」
「そ、それは、沖田さんが・・・・『買出しに付き合ったんだから僕のお願いぐらいちょとは聞いてくれてもいいんじゃない』って・・・・」
「そうだったけ?まぁ、今日は今日ってことで・・・はい、あ~~ん♪」
「ぅえぇええっっ!?」
「ゆ・き・む・ら・くん?まさか、僕の桜餅が食べられないなんて言わないよね?一応、僕は君が身を置いている組織の幹部なんだけど?」
「うっ!!ず、ずるいです、沖田さんっっ!!」
「何とでも言っていいよ。まぁ、その方が皆も喜ぶかなって思ってさ」
「は?『皆』?」
「うん。まぁ、なんでもいいじゃない。それより、一応上役である僕の申し出を断ったりしないよね、雪村くん?」
「・・・・はぃぃ」
沖田が差し出す桜餅を暫くジッと見つめた後、観念したように小さく溜息を吐く。
仄かに頬に朱を差しながら、その小さく愛らしい唇を開けてパクリと、沖田の手の中の桜餅に口をつけた。
餡の優しい甘さが口内に広がる。
”あの日”から、甘さを感じることがほとんど無かったというのに、今日の桜餅はいつも以上に甘く感じる。
「くすくす・・・・美味しい?」
「はい、美味しい、です」
「そう、良かった。 あれ、雪村くん、口端に餡子かついてるよ」
そう言って、口端を指す沖田に千鶴が慌てて餡子を拭おうと指先を口元に当てるが、指先に餡子が拭われることはなかった。
「えぇ、どこで・・・」
「反対だってば、ほらコッチだよ・・・・ペロっ・・・」
千鶴が言い終わる前に沖田の顔が近づき、千鶴の口端の餡子をペロリと舐め取ってしまう。
「ん、美味しいvご馳走様、雪村くん♪」
唇を舌で舐めとると、ふと意地悪な微笑を千鶴へと向けて、からかいを含んだ声でそう告げた。
「っっっ!!!!お、おおおおおおおおおお沖田さ・・・「きゃぁあああvv」・・・え?」
顔を真っ赤にさせて口元を手で覆った千鶴は、羞恥による混乱で何か言葉にしようとしていたが、周囲からあがる黄色い悲鳴によって遮られてしまう。
予想外の声に千鶴はビックリして周囲へと視線を巡らせる。
「ほぇっ????」
店内に居たうら若い乙女たちの視線が一斉に、千鶴と沖田へと向けられていた。
うら若い少女たちの中には、この【桜屋】の少女もいる。
「本当に好きだよね、あの娘たち。・・・・僕と雪村くんが」
「は・・・?沖田さん、今なんと?」
「ん?だから、僕と雪村くんがイチャイチャしたり、僕が雪村くんを苛めて楽しんでるのを、ひっそりと眺めるのが、ってことだけど?」
「ぜんっぜん、意味が分かりませんっっ!!」
「彼女ら曰く、麗しい男子がイチャイチャしてるのを見るのが密かな楽しみなんだって」
「あの・・・すいません、もっと分かりやすく教えていただけませんか?」
「あれ、まだ分からない?そう・・・じゃぁ、『雪村くん』の性別は?」
「・・・・『男』?」
「うん、屯所にいるんだからそうだよね。良かったね、雪村くん。そんなに女の子みたいに可愛い顔してるのに彼女らにはちゃんと『男』と認識されてるらしいよ」
「えぇーと、つまりどういうことですか?」
「んー、じゃぁ次は、このお茶を口移しで飲ませてあげるv」
(・・・・・・え?沖田さんは男性で、私は『男』ってことになっていて・・・・それなのに口移しでお茶を・・・・それで、いちゃいちゃ?・・・・・・・・・・・・・・・・・って、お茶を口・・・・・・)
「えぇぇええええっっ!!!い、いいいいいい、いいですっっ!!」
「そう、口移し、してもらいたいんだね、雪村くんも」
「そうじゃなくて、やめてください、ってことです!!」
やっと意味を理解した千鶴は、ぶんぶんと頭を振り、目を回すのではないかという勢いだ。
「なんでいいじゃない。・・・・僕はしたいな、千鶴ちゃんに」
「へ?」
千鶴にだけ聞こえるような小さな呟きに、千鶴の動きが止まる。
「好きだよ、千鶴ちゃん」
耳元に息を吹き込むようにコッソリと告げられた言葉に、千鶴の目が見開く。
バクバクと心臓の鼓動が有得ないほど高まっていくのを感じる。
「うそ・・・・」
なんとか口に出来たのは、その一言だった。
沖田はクスリと笑い声を漏らして、千鶴の結い髪に唇を寄せる。
「うそ、じゃないよ。これで、外でも君に愛を囁けるね。・・・土方さんのことなんて思い出せなくなるぐらいに僕でいっぱいにしてあげるよ」
「え・・・・土方さん?・・・・・あぁああっっ!!外出許可っっ!!ど、どうしましょう!!きっと土方さん怒ってらっしゃいますよ!!」
土方の怒りを思い起こして顔を蒼白にしてガバっと千鶴が立ち上がると、沖田が大きな溜息を吐いた。
「はぁ・・・・ちょっとは僕の気持ち分かってくれたんじゃなかったのかなぁー」
「え?気持ち?」
「そう。君もさ、ここ暫くの間ドロドロした気持ち抱えてたんじゃないの、あの娘に」
顎で差した先には【桜屋】の少女の歓喜した姿がある。
その表情を見ると、複雑な気持ちを感じずにはいられないのだが、確かに沖田の指摘どおり【嫉妬】していた。そこまで考えて、千鶴はハッと顔をあげる。
「『僕の気持ちが分かったんじゃない』・・・・って、沖田さんも誰かに【嫉妬】してたんですか・・・?」
「ち・・・雪村くぅーーーん。ここまできて”誰か”って言うの?土方さんに決まってるでしょ!!君ときたら何かしらにつけて『土方さん』『土方さん』って」
「そ、それは・・・・」
「分かってるよ、分かってるけど、僕が気に入らないの!!」
「で、でも、私は沖田さんが土方さんに―――」
「それ以上は聞かないっ!!」
「んんっっ!!!!」
千鶴の言葉を遮るように、千鶴の唇を沖田のソレが塞いだ。
見守っていた少女たちから更なる歓声があがったのは言うまでもないだろう。
・・・・・そしてついでに言うなら、屯所に帰った後、土方の盛大な雷が落ちることになるのだが。
小言中であっても終始ご機嫌で笑顔の沖田と、その態度に更に機嫌を下降させる土方に、千鶴だけがオロオロとしていたりする。
そして―――
「ふふふ・・・いつか、『雪村くん』とじゃなくて、『千鶴ちゃん』と町中でイチャイチャできるといいね♪」
――と、勢いを増した土方の怒りにも動じないどころか、土方の目の前で千鶴の耳元に囁きかける沖田は肝が座っているといえるだろう。、
そんな沖田に対して、千鶴は羞恥で顔に真っ赤にし、土方は怒りで顔を真っ赤にさせるのも、お決まり、というやつだろう。
<終幕>
★☆後書き☆★
るか様、大変長らくお待たせ致しました。
後半のお届けになります。
よろしければ、どうぞお納めくださいませ。
・・・・というか、ちゃんとリクエスト内容をクリアできているのか不安なのですが。。。。
ついでに、かなり長くなって申し訳ありません。(大汗)
詰め込み過ぎは私の悪いクセですorz
とはあれ、楽しんでいただければ幸いです。
では、この度は、素敵リクエストをありがとうございました。