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冷たい風さえもが君と触れ合う口実 

海面が風に撫でられて静かに揺れている。

「クシュン」

艶やかな黒髪を風に弄ばれながら、身体を縮こませた。
 
「ホラ、おいで」

コートの合わせを広げて千鶴を呼び込んでいるのは、その翡翠の瞳に悪戯っぽい色を浮かべた沖田だ。

「い、いえ、だ、大丈夫です!!」

顔を真っ赤に染めながら勢いよく首を振って、沖田の申し出を断る千鶴に、沖田は眉間を僅かに潜めた。

「それって僕が゛嫌い゛ってこと?」
「へ?」
「千鶴ちゃんは僕に触れられるのがそんなに嫌なんだ?…僕はただ千鶴ちゃんが風邪をひかないようにって思っただけなんだけど…」

千鶴の態度にショックを受けたように俯く沖田に千鶴は慌てて言い訳を口にする。

「ち、違うんです!沖田先輩が嫌とかじゃなくて……恥ずかしい…っていうか…心臓がもたないというか……」

最後の方はボソボソと小さな声ではあったが言質をとった沖田はニヤリとした笑みを口元に刻む。

「僕のことが゛嫌い゛じゃなければいいよね」
「ほぇ?」

呆気にとられた千鶴の細い手首をやんわりと掴むと自分の方へと引いた。
ポスリと音がしたかと思うと、頬に暖かみを感じるとともに少し早めの心音が聞こえる。

「ねぇ、一石二鳥だと思わない?千鶴ちゃんも暖かいし、僕も暖かい。…身体も心も、ね」

優しい声色が千鶴の耳を刺激し、冷えた身体を抱きしめる腕も、そのすべての優しさを感じてそっと目を閉じると小さく頷いた。

「…はい」

-――と。


【終わり】

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