煙の無いところに・・・前篇(総受け)
千鶴総受けです。
・・・いつものごとく、おかしいデス。
長くなりそうなので、前編・後編に分けます。
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大広間では幹部衆が集まって、とある議題について話し合っていた。
その議題とは『京に流れる新選組幹部に関する噂』。
「本当、失礼しちゃうよね~。そんな根も葉もない噂、どこからでてくるんだろうね。土方さんはともかく。」
「総司っっ!!俺はともかくったーどういうことだっっ!!?」
「あれ、違いましたっけーー?男女問わず、大モテの土方さん♪」
「総司~~っっ。今日という今日は容赦しねーぞ。」
「あっれ~、そんなにムキになるってことは心当たりでもあるんですかぁ。」
「ねーーよっ」
「嫌だな、土方さんってそういう趣味があったんですねー。あ、僕に近づかないでくださいね。」
「だから、無いっつーーってんだろーーーがぁあああ!!!」
実は、ここ最近、京の町に真しとやかに流れる噂がある。
”新選組幹部(一部)は男色家である。”
---などという噂である。
土方と沖田のじゃれ合い(笑)に話が進まないと判断した近藤がやっと二人の間に入ろうと口を挟む。
「トシ、少し落ち着け。総司も思ったことをすぐに口に出すな。話がややこしくなるだろう。」
「近藤さん!アンタはいつも何を見てるんだ!?総司のは俺に対する悪意しかねーだろうが!!??」
「あはは、すいません~近藤さん。僕、素直なものでつい口をついてでてしまうんです。」
「誰が素直だ!!近藤さんも総司に甘いんだよっ!!」
「そ、そんなことはないぞ。俺は・・・」
またまた収集のつきそうもない事態に陥ろうとしていたが、ある役目を終えた監察方・山崎が戻ってきたことで、ひとまずの収束に落ち着いたのだった。
「失礼します。ご報告に上がりました。」
「あぁ、すまなかったな。で、何か分かったか?」
山崎は何か逡巡しながらも、口にしづらい様子をみせる。
だが、眉間に皺を寄せ始める土方の姿を目にすると、土方に忠誠を誓っている山崎としては黙っているわけにもいかなかった。
心の中だけで溜息をつくと、報告を始めたのだった。
「・・・・いくつかの証言を入手しました。あの噂も致し方ないかと・・・」
「致し方ない、とはどういうことだ?」
「副長・・・幹部の皆さんも本当にお分かりになりませんか?」
皆は一瞬顔を合わせると、『どういうことだ?』という不審げな表情を山崎に向けた。
そんな様子に山崎は今度は大きな溜息をつくと、捲くし立てるように”事実”を告げるのだった。
「はぁぁーーー。つまり皆さんが分かっていても周りは”それ”を知らない・・・・ということです。皆さん、たまに忘れられているようですね?では、入手してきた証言を報告いたします」
--証言1--
某・平隊士
あれは、夜の巡回から戻った時でした。
大広間から誰かが出てくるのが見えたんです。
よく見たら、副長だったので挨拶しようとしたんですができませんでした。
なんてゆーか、邪魔したらいけない空気というか。。。
実はその時の副長は一人ではなかったんです。
ちょうど廊下を渡っていく時に月の光で副長の腕の中には・・・そのなんていうか、ええと、は、はい、言います。
副長の腕の中には、あの少年がいたんですよ!!
大切そうに横向きに抱きかかえていたんです。
しかも・・・なんていうか。
甘い雰囲気だったというか---。
少年の寝顔を見ては、あの”鬼の副長”がそれはそれは優しげな表情をしていたんですよ。
え?もちろんそれだけじゃないですよ!!
決定的瞬間は次なんですから!!
なんと、その少年の・・・多分、頬だったとは思うんですけど口づけたんですよーーー!!!
その時は本当に砂をはきそうなぐらい甘い雰囲気があって呆然と眺めてしまいました。
それで、あの噂でしょ?
あぁ、やっぱりなぁ~って思いましたよ。
「---ということです。いかがですか、副長。お心当たりは?」
「・・・・・・・・見られていたのか。」
「副長は事の真相がお分かりになられたようですね?」
「あっれ~~、土方さん。さっきはあんなに否定してたのにどういうことですかーーぁ」
からかう気満々の沖田に対し、土方はそんな声も聞こえないほど、”いや、あれは、あいつが・・・”などとブツブツと一人の世界に入っていた。
だが、そんな沖田に言葉を返したのは山崎だった。
山崎は沖田の方を向くとビシっと指先を突きつけた。
「何言ってるんですか、沖田さん。アナタもですよっっ!!というか、アナタの場合は副長みたいに微笑ましい・・・なんて思えないんですよ!! この話を桃色指定にしたいんですか、アナタはっっ!!」
「総司・・・。お前にそんな趣味があったとはな。千鶴を構っていたのは上辺だったのだな。」
「それ本気で言ってるのかな、一君?それに、山崎君も何言ってくれよーとして・・・・ふーーん。」
言いかけていた沖田は何か面白いことに気づいたのか、その唇に弧を描く。
「ねぇ、山崎君。その噂とやらを聞かせてよー。面白そう♪」
「・・・沖田さん、気づきましたね?」
「なーーんのこと?僕、分からないけど~~。だから教えてよ。」
「いーえ。絶対に分かってる顔です!!この話を桃色指定にする気はありませんのでこの証言2は省きますっっ!!」
「えーー、つまんないなぁ。ほら、期待してる人もいるんだしさぁ。」
「総司、誰もお前のそのような話に興味はない。」
「あぁ、確かにな。」
「あっれー。左之さんも一君も分かってないんだ?」
「何がだ。」
「山崎君、もちろん、左之さんと一君の証言もあるんだよね。・・・まさか僕と同等のことはしてないよね?」
「・・・1つめに関しての答えは”あります”とお答えしましょう。2つめに関しては”ありません”とお答えしておきます。沖田さんじゃあるまいし。斎藤さんは微笑ましいものですよ、副長と同じで。・・・同等まではいきませんがある意味では原田さんですかね。」
山崎の言葉に、斎藤と原田の言葉が重なるように発せられたのだった。
「どういうことだ、俺には身に覚えがないが。」
「おいおい、何のことだ。俺は身に覚えないぞ!?」
そんな二人に、本日何度目かになる溜息をつく山崎だった。
「では、証言を続けて報告します。」
後編へつづく