終刻に舞う雪桜
死ネタです。
沖田独白っぽい感じ。。。?
暗いかもしれないデス(汗)
沖田BADエンドルートのゲームオーバーネタです。
それでもいいですか?
▼読んでみる?▼
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僕の腕の中で眠る彼女の表情は穏やかなようにも見える。
だから、僕はソレが何か理解できずにいた。
鮮やかなほどの美しさに目を奪われ、鼻を擽るような甘い香りに酔いしれる。
彼女の身体から溢れ出る紅い華--。
けれど、その”紅い華”が彼女の血だと頭が理解した途端、僕は獣のように咆哮をあげていた。
哀しみとも怒りとも分からないほどの悲痛な雄叫びが闇に包まれた山中に響く。
それと同時に僕の身体の奥底からは自分でも抑えきれないほどの激情が吹き上がる--
彼女を喪う悲しみなのか、
彼女を奪ったアイツへの憎しみなのか、
彼女を守れなかった自分への怒りなのか、
もしかしたら、その総てかもしれない。
彼女をそっと地へ横たわらせた僕は激情に支配されたまま、彼女と同じ顔をした、けれどまったく別の存在である男へと刀を振るう。
今まで何度も感じたことのある肉を裂く感触、生暖かい赤い液体。
けれど、目の前の男は血に塗れながらも憎たらしいほどの満足そうな笑顔を浮べている。
彼女と同刻に逝くことに幸せを感じているかのように、一人残る僕を嘲笑うかのように--
ふと、気づくと自分の荒い息づかいだけが辺りに響いていた。
心に隙間風が吹いたような、唐突に感じる孤独。
肩を上下させながら、彼女の傍に居いという一心で重い身体を引きずる。
木々の隙間から差す淡い月光に照らされた彼女の顔を視界に捉えた瞬間、身体すべての力が抜け落ちるかのように、彼女が横たわる地へと膝をつく。
僕の頬を伝う暖かな透明な液体は、ぽつり、ぽつりと彼女の頬へと滴り落ちる。
まるで僕の熱を彼女に分け与えようとするかのように。
空からはらり、はらりと、季節はずれの雪が舞い始める。
それは、彼女の身体の上にも舞い降りる。
それを見つめながら僕は、彼女が最後に告げた言葉を思い出す。
「あぁ、本当に桜みたいだね、千鶴ちゃん・・・」
彼女の血で薄い紅色染まる雪は、先ほどの鮮やかなほどの華ではなく切ないほどに散っていく桜の花びらのようだと思った。
彼女の胸元は雪桜で覆われていく--
僕は桜を纏った彼女の躯を掻き抱きながら願った。
いるかも分からない神へ、彼女を胸に抱いたままひたすらに願い続ける。
けれど、僕の腕に、胸に、身体全体で感じていた彼女の柔らかい感触を途端に失う。
彼女の着ていた着物だけが僕の元に残っていた。
着物だけになった彼女を僕は抱きしめ続ける。
ふと、優しく吹く風が僕の頬を撫でる。
その風に誘われながら彼女の結晶は煌きながら冷えた夜空を越えて・・・夕暮れの橙色の空へと飛翔する。
呆然と煌く空を眺めていた僕の耳に聞こえてきたのは子供たちの声--
「じゃぁな、そうじ!!また遊んでな」
「そうじお兄ちゃん、ありがとう」
「うん、また遊ぼうね。気をつけて帰るんだよ」
手を振りながら去っていく子供たちを、見送っているのは・・・僕?
でも、今の僕とは髪型も服装も違う。
今の僕は短髪に洋服だけど、あそこにいる僕は近藤さんを真似て結った髷に和服。
辺りを見回すと、夜の山中にいたはずの僕は見慣れた場所に佇んでいた。
よく近所の子供たちと遊んでいた八木邸近くの境内だと。
つまり、ここは京だ。
そして、肌を刺すような寒さ。
けれど僕の手の中には、血の滲んだ彼女の桃色の着物が残されていた。
瞬間的に僕は悟る。
僕の願いが叶えられたのならば、
あの運命の日、
文久三年の師走だと--
昔の僕が屯所に帰るためにこちらへ歩んでくるのを視界に捉えた僕は、とっさに手にしていた彼女の着物を頭から被り、昔の僕へと声をかけた。
「今晩、桜が舞うよ」
彼女の運命を変えられるのなら--。
僕は僕を裏切ることも厭わない。
【終幕】
††後書き††
沖田BADエンドルートのゲームオーバーネタです(汗)
確か、あったはず。。。
お兄ちゃんに斬られてしまう千鶴ちゃんの最後が(泣)
(最初にプレイしたときのことなので曖昧ですが。)
そこからの派生デス。
んで、実は「始まりの雪桜」と繋がっています。
「始まり~」を書いてるときからこちらの妄想はありました。
うーん、もっとこの話、広げたいかも・・・。
なぁんて、独り言を呟いてみたり☆
(本当にやるかは分かんないケド。)
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!!