偽りに隠れた真実(2)
ふー、やっとアップできたぁーー。。。
というわけで、「偽り~」の2話目デス。
あまーい沖田に振り回される千鶴といつもの皆さんでーーす(笑)
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夕餉の時間--
私は居心地の悪さを感じながら食事をとっていた。
と、いっても私の箸は進んでいないのだけれど。
いつもは騒がしいほどの食事風景が展開されているというのに、今夜は水を打ったようにシーンとした空間が広がっている。
それは、いつも食事の時間を騒がしくしている平助君と永倉さんが大人しいから・・・だけではなく、皆さんが沖田さんの唐突ともいえる行動に唖然としているから。
ここにいる幹部皆さんの視線が私たちへと突き刺さる。
「千鶴ちゃん、あーんして?」
私のすぐ隣に座している沖田さんは私の口元へと箸を差し出している。
箸先に挟まれている綺麗にほぐした焼き魚を見てから沖田さんへと視線を移す。
その表情は純粋なほどの笑みを浮べている。
けれど、食べさせてもらうなんて私には恥ずかしくてできない。
しかも他の人が見ている前でなんて尚更で・・・。
「あ、あの、沖田さん。私なら一人で食べられますから、その・・・」
「僕が千鶴ちゃんに食べさせてあげたいんだよ。・・・ダメかな?」
「う・・・」
沖田さんは、悲しそうに眉をさげて私を見つめる。
まるで捨てられた子猫のような瞳に私はついつい沖田さんが差し出す箸先の焼き魚へと口をつけてしまった。
「おいしい?」
「は、はい///」
先ほどの悲しげな表情が嘘のような笑顔で私に聞いてくる。
本当は、恥ずかしすぎて味なんて分からなかった。
それでも私には断るなんてできそうもない・・・。
そんな表情すれば私が断れないのを見越してのことだったんだと思う。
沖田さんは、分かっているのに断ることができない私のことを予想済みなんだろう。
「よかった♪やっぱり、僕の愛が詰まってるからだね」
「っっ!!///」
「「「「「ぶっっっっーーー!!!!!!!!!!!!!」」」」」
沖田さんの言葉に、私が顔を赤くしてしまうのと同時に皆さんは口にしていたご飯を吹き出してしまっていた。
そして、信じられないモノを見るような目で沖田さんを凝視している。
「なに?皆、汚いなぁー。いい大人がご飯もちゃんと食べれないの?」
皆さんの方にに視線を移した沖田さんは、私に向けていた雰囲気とは反対に挑発するような言葉を口にする。
「もう我慢できねーー!おい、総司っ、俺の前でイチャコライャコラしてんじゃねーよっっ!!羨ましいってーんだよ」
「っていうか、いつから千鶴とそういう仲になってんだよ!」
「やだなぁ、焼いてるの?新八さんも平助も」
「俺も聞かせてもらえてーな、総司ぃ」
「土方さんに同じく、だな」
「俺も副長と同意見だ」
「あれ、皆、そんなに僕と千鶴ちゃんの馴れ初め聞きたいの?」
「ふざけてんじゃねーよ!!!」
「稽古が終わった後からですよ」
「「「「「は?」」」」」」
「だから、稽古が終わった後ですよ、今日の。僕と千鶴ちゃんはお互いの気持ちを確かめあったんです。つ、ま、り、僕たちは愛し合ってるんです」
「「「「「あぁあああああああ!!????」」」」」
「ね、千鶴ちゃん。僕たちは相思相愛なんだよねv」
「へ、あ、あの・・・//」
「ちょっと待てよ、総司!お前、稽古前まではそんな素振りこれぽっちもなかったよな!!?つーか、平助、しっかりしろっっ!!」
「ち、ちづるが・・・そ、そーじと・・・ぶつぶつ」
「あははは。どうしたの、平助」
「どーしたもこーしたもねーだろっっ!!お前、ぜってー分かってて言ってるよなっ!!」
「やだなぁ、新八さん。僕は本当のことしか言ってませんけど?」
「そ、そぉーーじぃ、てめぇー・・・」
「あれ、生きてたんですか、土方さん」
「死んでねーよっっ!!つーか、総司っ、忘れたとは言わ・・・」
「忘れました」
きっぱりと告げる沖田さんに、土方さんは眉間へと皺を寄せると広間に怒声を響かせて沖田さんの襟元を掴み引き立たせたけれど、それに対して沖田さんはいつものように飄々とした笑顔を浮かべていた。
私はというと、一気に騒がしくなったこの状況に追いつけず一人オロオロとしてしまっていた。
「てめーはぁああああ!!!!年頃の娘を預かるにあたって”間違え”が起こらないように言っといたよなぁ!!??」
「やだな、まだ”間違え”は起こしてませんよ、”間違え”は。想いが通じ合ってすぐなんて僕がっついてませんから、誰かさんと違って」
「そういうこと言ってんじゃねーよっっ!!最初に千鶴に手を出さないように全員で決めただろうがぁっ!!てめーも”千鶴に興味がない”って言ってただろうがっっ!!」
「!っ・・・・」
「その時はその時。今は今ですよ、土方さん」
土方さんの言葉を聞いた瞬間に私の身体はピクリと固まる。
あまりにも沖田さんが優しい瞳で甘い雰囲気を漂わせていたから、この短時間で忘れそうになっていた。
沖田さんが”こうなった”理由を。
静かになった私に気付いた原田さんと斎藤さんが私の元へときてくれた。
そして、原田さんがポンと私の肩へ手をかけながら優しい声色で声をかけてくれる。
「どうかしたのか、千鶴?」
「い、いえ・・・」
「アンタも総司に巻き込まれているだけじゃないのか。・・・いつもの総司の悪ふざけとかな」
「あぁ、やっぱり斎藤もそう思ったか」
「ち、違うんです。じつ・・・!!」
斎藤さんの言葉に私は”真実”を言おうとしたけど言うことが出来なかった。
心苦しいものを感じながらも、沖田さんのこの状態は”ホレ薬”によるものだとは言えずにいた。
言ってしまえば、出どころも明かすことになってしまう。
新選組の皆さんのお千ちゃんへの信用がなくなってしまうかもしれないと思うと言うことができなかった。
そして、そんな薬を偶然とはいえ使ってしまった自分を沖田さんはは軽蔑するかもしれない。
”ホレ薬”の効果が切れたときの沖田さんの反応を考えると、私は自然と顔が蒼くなってしまう。
「千鶴、お前、体調が悪いんじゃねーか?」
「あぁ、左之の言うとおりだ。顔色が悪いぞ、雪村」
「い、いえ、大丈・・・」
「駄目だよ、千鶴ちゃん」
「お、きたさん?」
「そんなに蒼い顔して大丈夫じゃないでしょ?」
いつの間にか土方さんとのやり取りを終えて私の元に戻ってきた沖田さんは、そう言いながら私をあっという間に横抱きにする。
「僕が部屋まで連れてってあげる。落ちないようにしっかり僕の首に腕をまわすんだよ」
「いえ、自分で歩けますから!!」
「人の好意は素直に受け取るものだよ、千鶴ちゃん」
「・・・はい」
大人しく言われたままに腕を回すと、沖田さんは揺れを感じさせないようにゆっくりと歩み始めてくれた。
広間を出ようとした沖田さんの足を止めさせてのは土方さんだった。
「総司、話は終わってねーぞ!!」
「何、言ってるんですか。こんな状態の千鶴ちゃんを無視しろとでも?さすがは”鬼の副長”ですね」
「誰も、んなこと言ってねーだろ!千鶴は他の奴に・・・」
「寝言は寝てから言ってください。千鶴ちゃんを他人に任せられません」
「そ、総司・・・?」
沖田さんに抱きかかえられている私には土方さんの様子が見えなかったけれど、最後に沖田さんの名を口にした土方さんには驚きの色が滲んでいた。
土方さんに向けていた冷たい空気を瞬時に払拭して、私へと視線を向けた沖田さんの瞳は優しいものだった。
けれど、沖田さんの瞳が優しい色を浮かべれば浮かべるほど、私の胸はチクリと痛む。
嬉しいと思いながらも痛む心。
矛盾した想いが私の中に存在した。
私たちが去った後、広間は再びシーンとなっていた。
そして、土方さんの呟きがその空間を支配した。
「まずいな・・・総司のヤツ、本気じゃねーか??」
けれど、広間を去った私にはそれを知る術はなかった。
【つづく】
‡‡後書き‡‡
ふふ、幹部の皆さんはヤキモキ。
油断してたらカワイイ千鶴ちゃんが毒牙に(笑)
このシリーズは沖田にとことん甘くなってもらうつもりですv
千鶴ちゃんは沖田が甘ければ甘いほど葛藤が・・・(汗)