偽りに隠れた真実(5)
今回は沖田視点デス。
前回(4話)での巡察から帰ってきた後のお話になっています。
そして、コメディにはなりませんでした、スイマセン。。。
ちょっぴりシリアスかな?
本当に最近、どーした?(タクミん口調で)←
理空がおかしいのなんていつものことじゃない?(沖田口調で)
・・・・・・・・・マジでヤバイよ、私orz
あと、さらにスイマセン!!
読み返しが甘いのでいつも以上に文章とかがおかしいかと思います。
後々、コッソリ修正をかける可能性があります。。
それでもよろしければ、「読んでみる?」からドウゾ!!
▼読んでみる?▼
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昼の巡察のすべての仕事を終えた僕は自室へと向っていた。
余程のことが無い限りは稽古が始まるまでの短い時間ではあるけど休憩時間が与えられるのが常。
あ、でも土方さんの機嫌に左右されるのも常。・・・僕の場合は、だけど。
それはそれで土方さんで遊べるから僕は別に構わないんだけどね。
でも今日に限っては土方さんに構ってるヒマなんてないからザッと報告だけして、捕まえた浪士たちに関してもすべて任せて部屋を出ることした。
叩けば色々と出てきそうなあの浪士たちから情報を引き出す段取りを決めるのは土方さんの仕事だし。
僕に振ってきたとしても今日ばかりは丁重にお断りさせてもらう。
他の人間でも問題が無いだろう仕事をワザワザ請け負いたくないしね。
それに今の僕には浪士たちをいたぶることよりも、土方さんで遊ぶことよりも重要な用事がある。
そう言うわけで今日の所は、大人しく短い休憩を(何がなんでも)貰うことにして、僕はお茶と団子を載せた盆を手に自室へと向っていた。
歩きなれた廊下をいつもと変わらずに進んで角を曲がれば僕の部屋。
自室の襖扉を開ければ襖の音に反応して顔をあげた千鶴ちゃんの視線とぶつかる。
――これが理由。
僕の部屋で千鶴ちゃんとお茶をするという大事な用事。
今、何に置いても僕が一番優先させたいのが千鶴ちゃんの傍に居ることだった。
土方さんの部屋へ報告に向う前に、僕の部屋で待っててね、と告げた僕の言葉を生真面目に従って千鶴ちゃんがソワソワとしながらちょこんと座って待っていた。
千鶴ちゃんから視線を外さないまま後ろ手で襖を閉めると、ピシャリと僅かな音が部屋の中に響いた。
その僅かな音にも千鶴ちゃんは身体をピクリと反応させて、困った様に瞳を泳がせて最後には膝の上に乗せられた両手へと視線が落ちる。
千鶴ちゃんの視線を追って僕も手へと目を向ければ、片手に白い布地が巻きつけられている様が目に入った。
「・・・おまたせ」
その小さな手に白い布地が巻かれることになった経緯を思い出して、何て言ったらいいのか分からない感情がカッと心に生じた。
けれどその激情を誤魔化すかのように、殊更に優しい声色で千鶴ちゃんへ声を掛けながら僕は畳へと腰を下ろす。
「い、いえ・・・そんな・・・っ!?」
千鶴ちゃんは反射的に再び顔を上げて言葉を発しようとしたけれど、その言葉は最後まで紡がれることはなかった。
顔を上げた先に僕の顔が思いがけないほど間近で見えたからだろう。
つまり、至近距離ってこと。
お互いの膝頭がくっ付くほどの近さ。
それを狙って千鶴ちゃんの真正面へと腰を下ろしたんだから当然といえば当然。
「待たせちゃってゴメンね、一緒にお茶でもしようかと思ったんだよねぇ・・・どうかしたの?」
白い肌が羞恥で赤く染まっていくのを目に留めながら、素知らぬフリをする。
「・・・あ、あの・・・その・・・」
薄っすらと目を細めて微笑む僕に対して、千鶴ちゃんは何て言おうか迷っているせいか袴をギュッと握って発するべき言葉を模索しているようだった。
「ん?」
さらに笑みを深くする僕に何かを感じ取ったのかビクリと身体を揺らし、身体を赤く染めたまま表情が固まってしまう。
「・・・・・・・何か・・・怒ってます、か?」
シーンと静まり返り、どこか重い空気に満たされた空間に耐え切れなかったのか千鶴ちゃんの細い声が恐る恐るといったように呟かれた。
「ん、何が?」
笑みを崩さないまま、そう答えると、再び千鶴ちゃんは困ったように眉根を寄せて俯いてしまった。
――やっぱり、こういう時の千鶴ちゃんは何気に鋭いなぁ。
確かに僕はかなり苛々してたりする。
さっきは手を繋ぐことで、千鶴ちゃんを僕の傍に感じることで何とか飲み込んだ激情。
僕の手をすり抜けて離れていく彼女。
彼女の上に鋭い刃の光を見た瞬間にはヒヤリと背中に冷たいものが伝うのを感じた。
もし、あの時、彼女を喪っていたら僕はどうなっていたんだろう?
もし、彼女が僕から離れて行ってしまったらどうなるんだろう?
千鶴ちゃんを僕に繋ぎとめておくにはどうしたら―――
「・・・あの、沖田さん?」
遠慮がちな小さな声にハッとする。
僕は無意識のうちに千鶴ちゃんの包帯へと触れていたようだった。
ふとした瞬間、心の奥底に生まれそうになる暗い灯。
そんな自分を誤魔化すように殊更に甘い笑みを刻んで、包帯に触れている指先にも意味を持たせる。
「・・・・ねぇ」
つーと包帯の上から指先を滑らせながら吐息に載せた少し掠れさせた声を響かせれば益々と顔を赤くさせる千鶴ちゃん。
「僕を癒して?」
切なげに眉を寄せて見つめるというオマケも一つ付けてみる。
「え、い・・・癒すとは、な、何を・・・?」
予想を裏切ることもなく千鶴ちゃんは頬に朱を走らせてパクパクと口を動かして動揺の色を隠すことはない。
「それはね―――」
僕は千鶴ちゃんの問いに言葉ではなく行動で答えることにして、素早く身体を動かした。
あまりに突然のことでもあったせいか、千鶴ちゃんは呆然として事態をすぐに飲み込めない様だ。
うん、これも予想の範疇だけどね。
「・・・・・・・っっ!!!お、沖田さんっ、な、なにをしてるんですかぁあ!!??」
千鶴ちゃんが固まってしまっていることは無視して僕はその”癒し”・・・千鶴ちゃんの膝の柔らかさを堪能しながら、本当に効果あるかも、なんて考えていた。
そしたら、正気に戻ったらしい千鶴ちゃんの落ち着きのない質問が降ってきた。
「んーーー。だから、癒されてるんだよ?千鶴ちゃんの膝枕ってすっごく気持ちいいなぁ・・・ふぁーあ」
本当に気持ち良すぎて何だか眠気に誘われ始めた僕は目を閉じながら千鶴ちゃんに答えた。
「・・・っ!あ、あの、お茶をするんじゃありませんでしたっけ!?」
初めに言った僕の言葉を思い出したのか、千鶴ちゃんが苦し紛れに、お茶にしましょう、と訴えている。
よく思い出したね、とは思うけど・・・ごめんねぇ、千鶴ちゃん。
お茶は手段の一つであって、より癒される手段があるのであればそっちを取るよね、普通。
「あぁ、お茶ねぇ。千鶴ちゃんとのんびりお茶でもすれば、さっきの巡察の疲れも吹き飛ぶかなぁって思ってたんだけど、こっちの方がいいな、僕」
だって元々、僕の目的は、この”暗い灯火”を消すことだから―――
だからキミとのお茶は、あくまでも手段の一つに過ぎない。
「それとも僕がこうするの、イヤ?・・・本当は僕のこと嫌い?」
薄く目を開いて甘えた声で告げれば千鶴ちゃんは首を小さく横に振ってポソリとした微かな声で答えてくれる。
「・・・いえ、イヤとか、嫌い、ではないんです。その・・・・」
千鶴ちゃんの中で引っかかっているものが何なのか知っていながらも言う事はできない。
「良かった・・・やっぱり僕たち相思相愛なんだね。千鶴ちゃん、大好きだよ」
僕が作り出した偽りの状況の中で、僕は本心だけを口にする。
けれど千鶴ちゃんにとっては、すべてが”偽り”に見えるんだと思う。
「っ・・・・」
その証拠に千鶴ちゃんの瞳が悲しそうに僅かに伏せられる。
「どうかした?」
ごめんね、そんな顔をさせちゃって。
でも『まだ』だと思うから―――
そっと腕を伸ばして千鶴ちゃんの頬に触れて、慰めるかのように撫でる。
「い、いえ・・・何でも、ないです」
その感触に驚いた千鶴ちゃんは僅かに身体を揺らして、ぎこちない笑みを浮かべた。
「そう。・・・・金平糖なんて関係ない僕の本心なのになぁ」
千鶴ちゃんに聞こえないほど小さく呟く。
『まだ』なのに、言わずにはいられなかったんだと思う。
でも、伝えることはできないから音になるかならないかの本当に小さな呟き。
「え?沖田さん、今なんて・・・・」
何て言ったのかまでは聞こえなかったんだろう千鶴ちゃんの質問を遮るかのように、頬から手を離して自分の口元へと持っていき、大きな欠伸を漏らす。
「ふぁぁあ・・・眠くなってきちゃった。時間になったら起こしてくれる?」
僕は今感じている欲望を素直に口にしてチラリと上目遣いで見る。
そして、仰向きになっていた身体をクルリと回転させて横向きになる。
千鶴ちゃんの柔らかな膝を頬に感じながら僕は再び目を閉じた。
「はい」
眠りの体勢に入った僕に、邪魔したら悪い、と思ったのか千鶴ちゃんは僕のお願いに頷いてくれた。
「ありがと。おやすみぃ」
口元に笑みを刻みながら意識を眠りへと落としていく。
愛しい声と、ふわと僕の髪に触れられた優しい指先を感じながら―――
「・・・おやすみなさい、沖田さん」
【つづく】
★☆後書き☆★
ありゃ、沖田視点にしたらコメディにならなかったorz
これも番外編やっちゃおうかなぁ、例の”あの人”で。
そうすれば完全にコメディになる!
・・・私の頭の中ではね。
では、お読みいただき有難うございました。