紅闇の残像~序章~
またシリーズものになりそうです。
が、とりあえずカテゴリーは短編にしておきます。
溜まってきたら考えます。。。
このお話は、基本シリアスです。
もち、沖千!!
序章では沖田視点。一応、千鶴もいますがほぼ眠ってます。
そして沖田も千鶴も子供です!!
時代は、”現代”。
けれどもけれども、現パロではナッシングぅーー。
ある程度は本編の流れを汲んでるつもりです。
もうひとつ注意!!
ストラバのタクミんがいます!(こちらもこの序章では子供ですが)
今後の展開でタクミx由奈が出てくる可能性あり・・・っていうか有るな。
それなりに重要なお役目を担ってもらおうと思っています。
では、それでもOKという方は、「読んでみる?」からドウゾ!
▼読んでみる?▼
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”生きる”意味ってなんだろう?
なぜ、僕はココに居るんだろう?
僕という”存在”は―――――?
都心から少しだけ離れたところに建てられた、この施設を運営している近藤勇がその子供たちに出会ったのは、ある雨の日だった。
買い出しから帰ってみると、傘も差さずにずぶ濡れになった二人の子供が施設の門前に佇んでいた。
「はぁ、はぁ・・・・・」
「うっ・・・ふぇ・・・ソウちゃぁ・・・ん」
「だいじょ、ぶ、・・・づるちゃんは、僕が・・・もるから」
雨に濡れていてもはっきりと分かる艶やかな黒髪を持つ幼い少女がしゃくり泣くのを少女より少しだけ年上のように見える茶色い髪をした少年が息も絶え絶えになりながらも強い意志が感じられる声で慰めの言葉を口にしている。
そんな二人の子供の姿といえば――――
全身が雨と泥でグチャグチャに汚れており、裾が膝小僧あたりまである薄いシャツ一枚を身に纏い、裸足というものだった。
二人の小さな身体を包んでいるそのシャツは、元は白かったのだろうが今となっては元の白を想像することが難しいほどの汚れだ。
雨の冷たさに震えながら子供たちはただ手を離さないようにお互いがギュッと握っている姿は、痛々しいほどで近藤は胸を掴まれるかのようだった。
グッと目頭が熱くなるのを堪えて子供たちへと近づこうとした。
「おい、君た・・・っっ!?」
近づくのと同時に声を掛けようとしたが、ふと少年が手にしているものを視界に捉えた近藤は驚きに息を飲み、その足を止めてしまった。
少女の手を握っている左手とは反対側の・・・少年の右手には、その小さな身体には不釣合いなほどの日本刀が握られていたのだ。
鈍い光を放っている刀身にはこの激しいほどの雨が打ち付けられ、刃先を滴が伝っている。
そう、まるで”何か”を洗い流すかのように――――
ジッと子供たちから視線を外さずにいた近藤に少年が気づいたのか、少女の肩越しに上目遣いで視線が向けられた。
だが次の瞬間、少年の目が驚いたように大きく見開いたのだった。
「・・・・どう、さん?」
少年らしいボーイソプラノの声でそれだけ口にしたかと思うと、少年の身体から力が抜けたように揺らぎ少女の上へと倒れこんでいく。
もちろん、少女の力で支えられるわけもなく二人して雨でぬかるんだ地面へと重なるように身体を横たえたのだった。
「っっ!!君たち!!」
その姿に慌てて駆け寄ってみると、二人は気を失っていた。
近藤は急いで少年を背負い、少女を横抱きにした。
子供たちと触れ合った部分がヒヤリとした冷たさを近藤に伝えている。
こんな年端もいかない子供が薄着のうえに裸足で、雨の寒い中をずっと居たのなら当たり前だろう。
近藤はギュッと口端を結ぶと、厳しい表情を浮かべ急いで施設の建物の中へと向ったのだった。
そして誰も居なくなった施設の門前には、少年が握っていた日本刀だけが残されていた。
しかし、その日本刀は映像のように刀身を揺らめかすと、最初からそこに存在していなかったかのように掻き消えたのだった――――
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透明な入れ物の中で揺らめく血のように紅い水。
白髪に赤く光る瞳。
赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅、赤、紅―――――――
飛び散った血によって全てが赤に染まり、色素の抜けたような白髪の髪先からはポタリ、ポタリと音をたてて血の滴が滴り落ちていく。
・・・世界は真っ赤に染まる。
血の紅に犯された世界の向こう側にはあの娘の悲痛な表情。
『馬鹿だなぁ、別に君のために”コレ”を飲んだわけじゃないのに。そんな顔しないでよ・・・』
その言葉を最後に僕の目は閉じられ、真っ赤だった世界は黒い闇の世界へと姿を変えた。
次に目を開けば、そこは赤でも黒でもない世界だった。
よく分からない世界。
僕とは透明な何かで隔てた向こう側には、僕には分からない大きな”箱”のようなものが所狭しと置かれている。
その中を動き回っている複数の人の姿は共通して、白い布を纏い、何かに熱中しているかのような堅い表情をしている。
薄暗い中に四角い光が淡く浮かんでいて僕には意味の分からない文字のようなものが刻まれていている。
大きな”箱”からはたくさんの”紐”のようなものが無数に出ていた。
動かない身体はそのままに視線だけを横へと移動させると、視界の端に”紐”が身体に絡みついている状態で水の中を漂っている幼い少女の姿が映った。
艶やかな黒髪が水の中で揺らめきながら舞っている。
あぁ、僕もこの娘と同じなのかなぁ、と思いながら再び僕の意識は黒の世界へと沈んでいった。
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「ねぇタクミちゃん、二人とも起きないねぇ・・・大丈夫かなぁ」
「大丈夫だ、二人とも眠ってるだけだから」
断片的な”記憶”を見ていた僕を現実へと引き戻したのは、幼い少女と少年らしいものの声だった。
傍らに気配を感じながらうっすらと目を開いていく。
小さな女の子がベットの端に腕をつきながら僕を覗き込むようにジッと凝視していた。
「あ、タクミちゃんっ、男の子の方が起きたよー!!」
僕を覗き込むようにしていた女の子は、僕が目を開いたのを見ると、おかっぱくらいの長さの茶色い髪を揺らめかして背後へと顔を向けた。
そして僕の傍らで大きな声をあげて誰かを呼んだようだった。
少女の声に、もう一人が僕の元へと近づいてくる。
「調子は?」
そう声を掛けてきたのは、今の僕と同い年ぐらいの冷めた表情をした少年だった。
「うん、まぁ大丈夫、かな・・・・ねぇ、ここは?」
まだ”記憶”が多少、混乱していた僕は現状を確認しようと、上半身を起き上がらせながら冷めた表情の少年に問いかけた。
「ここは児童保護施設”誠桜荘”・・・近藤先生が、お前たちのこと抱えて帰ってきたんだけど」
「”近藤先生”?」
その名前を聞いた瞬間、”昔”と変わらず優しそうな瞳をした”近藤さん”の顔が僕の脳裏に浮かんだ。
「あぁ、ここの責任者。・・・で、一応聞いておくけど名前は?オレはタクミで、こいつが・・・」
「ミカだよっ!!」
簡潔に僕の問いにも答える少年は、面倒くさそうな表情をしながらもほっとくことができないタイプなのようだった。
自分の名をぶっきらぼうに告げたかと思うと、ミカとかいう女の子にも視線で自己紹介するように促した。
なんだか、その様子が僕に似ているような気がしなくもなくて、ふと顔が少しだけ緩んでしまった。
僕も、あの娘のことが何だかんだ言ってほっておくことができなかったから。
”今”も”昔”も―――――
「僕は・・・・”総司”」
「で、そっちのは?」
タクミがあごをクイと軽く向けた先には、涙の跡を残しつつもあどけない寝顔を浮かべる少女で――
「”千鶴”―――千鶴ちゃんだよ」
「ふぅん、総司に、千鶴、ね。今、近藤先生呼んできてやるよ」
それだけ言うと、タクミは背を向けてミカちゃんと一緒に部屋から出て行った。
そうなれば物理的にこの部屋に居るのは僕と千鶴ちゃんだけの状態になる。
「―――まさか、また”近藤さん”に会えるなんて思わなかったなぁ」
本当に思わなかったんだ。
僕という”存在”は”アノ場所”でしか意味がないと、”アノ場所”を出ることがあるなんて思っていなかったから。――そう、”あのコト”がなければ。
「でも、近藤さんに迷惑はかけられないよね」
僕がココに居たら、近藤さんに迷惑がかかる。
すぐにアイツらはココを探り当てるに決まってる。
それに―――
「近藤さんになら千鶴ちゃんを任せられる」
穏やかな寝息をたてながら僕の隣で眠る千鶴ちゃんを暫し見つめる。
そして千鶴ちゃんの前髪を掻きあげて額を露にさせると、そっとそこに口付けを落とした。
「僕が千鶴ちゃんを護るから。だから君は―――」
千鶴ちゃんの体温を名残惜しく感じながらも、僕は意を決するとベットから抜け出して窓際へと駆けよって窓を開け放った。
すると、冷たい空気が部屋の中へと流れ込んでくる。
「どこ行くんだ?」
窓枠に足を駆けたところで背後からタクミの声が駆けられた。
タクミを見れば、僕の知る誰かさんのように眉間を寄せて僕を睨みつけている。
こんなときだというのに、僕は思わず笑い声を漏らしてしまった。
「ぷっ」
そんな僕に、更に眉間の皺を深めたタクミは訝しめの表情を僕に向けた。
「・・・何が可笑しい?」
「ごめん、ごめん。なんか今の土方さんに似てるなぁって思って」
「土方?・・・それよりすぐに近藤先生、来るケド?」
「うん、ごめん。僕がココに居たら迷惑かかるから・・・近藤さんには”ありがとう”って伝えてもらえるかな」
「・・・自分で言えばいいだろ。それに千鶴を置いて一人でどこに行く気だ?・・・千鶴が泣くんじゃないか?」
「タクミって何気に痛いところついてくるよねぇ。――じゃぁさ、僕がすべてを片付けて帰ってくるまで千鶴ちゃんのこと頼むね。キミ、面倒見良さそうだし?見かけによらず」
「・・・・・」
軽い言葉とは反対に真剣さを含んだ視線に、タクミも子供ながらにも何か感じるものがあったのか真剣な眼差しを返してくる。
何の言葉もなかったけど、僕はそれを”了承”と受け取った。
「ありがとう、タクミ」
礼を告げた瞬間、少し離れた場所にアイツ等の気配を感じて僕は瞬時に殺気を纏う。
それは普通の子供には有り得ないもの。
―――そして、それと同時に僕の髪からは色素が抜けていくかのように白髪へと変じ、翡翠色だった瞳も血のような赤へと変わっていく。
その様を目の当たりにしたタクミの瞳が軽く驚きの色に見開いた。
これを見ても声も出さずにその程度で済むなんて、子供のくせに本当肝が据わってるなぁ、なんて思いながら僕は一瞬だけ微笑みを浮かべる。
「―――じゃぁ、またね」
そして僕は窓枠を乗り越えて、この身を未だに雨降る空へと舞い躍らせた。
【序章・終わり】
★★後書き★★
ふふ、タクミん登場させちった♪♪
これからもこのシリーズではタクミんには活躍してもらいます♪
さて、実はこのお話は”守護霊シリーズ”の元になったものです。
それをタクミんとかの要素を加えていっちゃいました。
まぁ、今となっては”守護霊”とは違うものになる・・・とは思っていますが。
どうなることやら。
今回は本当に序章なので。
次回は皆、高校生になっていると思われます。
そしてそして今度は千鶴にも活躍してもらわねばっっ!!ヒロインっっ!!(笑)
では、ここまでお読みいただき有難うございました!!