【18888Hit !】 桜餅と渋茶 ~前半~
すいません~~、ものすごくお久しぶりになってしまいました。
そして、18888HITリクエストをくださっていた、るか様!
長らくお待たせしてしまっていて申し訳ございません(大汗)
妄想が膨らみすぎて、ちょっぴり長くなりそうだったので、前半・後半に分けさせていただきます。
ひとまず、前半だけでも貰っていただければ、と思います。
後半もなるべく早くにアップできるようにいたしますね。
では、「沖千で千鶴が嫉妬する話」という萌え設定を活かせているのか不安ではありますが、とりあえず前半を楽しんでいただければ幸いです。
今回は、屯所時代で書かせていただいていますv
いやぁー現代とか新婚も捨てがたかったんですが・・・
つか、新婚で書いてたらかなり暗めになってしまて(>_<)
やっぱ、明るめの方がよいかなぁーということで、現代設定が屯所時代を考えて・・・・結果、屯所時代にさせていただきました。
ではでは、るか様のみ、お持ち帰りOKです!!
「読んでみる?」から前半・本文へドウゾ!!
▼読んでみる?▼
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「はい、お土産だよ」
外に出かけていた沖田がそう言って千鶴へと差し出したのは【桜屋】の刻印が押された包みだった。
「―――っっ」
だが、千鶴はその包みを苦しそうな表情で見つめるだけで受取ろうとはしなかった。
半月ほど前の”あの日”を境に沖田のお土産のほとんどが【桜屋】のものになっていた。
その包みを見る度に、あの娘に会って来たついでなのかな、と考えては胸が苦しくなってくるのだ。
「どうしたの千鶴ちゃん?ほら、お茶でも飲みながら一緒に食べよう」
「い、いえ、私は・・・・・あまりお腹すいてないので」
せっかくの菓子も今の自分では味なんて分からないだろうと確信していた千鶴はたどたどしい口調ながらも断りの言葉を口にする。
甘党の千鶴にとって菓子は本来なら甘くて幸せな気分を与えるもののはずだった。
だが【桜屋】の菓子だけは、まるで渋茶でも飲んだときのように苦味を与えるのだ。―――最初に口にしたときは【桜屋】の甘くて頬が零れ落ちそうな桜餅に幸せを感じていたというのに、だ。
つまりは千鶴の心が大きく関係している、ということなのだろう。
桜餅を見る度に笑顔に溢れた【二人】の姿が脳裏に浮かんできて、胸が締め付けられるように痛みを訴えるせいで本来の美味しさを感じずにいられなくなっているのだ。
「ふぅーん。・・・・ねぇ千鶴ちゃん、一つ聞いてもいいかな」
「な、なんですか」
「どうして、そんな泣きそうな表情してるのかな」
「・・・え?」
溢れ出しそうになる感情に戸惑いながらも必死に抑えていた千鶴は、沖田の言葉に一瞬思考が止まった。
何を言われたのか理解できずにいる千鶴にもお構いなしに沖田は言葉を重ねる。
「僕が【桜屋】の菓子を買ってくる度に泣き出しそうになってるよね、何で?」
必死になって隠していたつもりの千鶴は、沖田に気づかれていたことに驚愕して黒真珠のような瞳を大きく見開いた。
そう告げる沖田の言葉に、その表情に千鶴の頭が混乱で満ちていく。
「な、なん、のことを・・・・言って・・・・」
千鶴の瞳に映し出されているのは、嬉しそうに満面の笑顔を浮かべている沖田だったからだ。
「そんなに嫌?・・・・・僕が、あの娘と楽しそうに話してたのが」
「そ、そんなこと・・・・」
動揺する千鶴に、口端を綺麗に吊り上げて悪戯っぽい笑みを浮かべる沖田が至近距離へと詰め寄ってくる。
「『ない』わけないよね。あの日の”あのとき”も今みたく泣きそうになってたもんね」
あの日のあのとき―――。
半月ほど前のある日、人々で賑わう町中に紙切れを手にした千鶴の姿があった。
巡察の同行以外で外に出ることが滅多に無い千鶴が巡察に同行するわけでもなく町中にいることは珍しいことではるが、もちろん屯所を抜け出して一人で歩いているわけでは無い。
当然のように千鶴の隣を陣取る男の存在がそれを証明しているといえるだろう。
「ねぇ、千鶴ちゃん。市場に行く前にお茶屋さんに寄って行こうか。【桜屋】っていうお茶屋なんだけどね、あっという間に売り切れちゃうほどに美味しいって噂なんだよね~。お団子とかももちろん美味しいんだけど特に桜餅が美味しいらしいよ、それでね――」
「沖田さん・・・寄り道なんてしたら、また土方さんに怒られてしまいますよ?」
ゆったりとした歩調で千鶴の隣を行く沖田が楽しそうな笑みを浮かべながら寄り道の誘いを口にするのに対し、千鶴は困惑した曖昧な笑みを浮かべる。
それもそのはずで、千鶴と沖田は遊びに来ているわけではないのだから。
本来の目的は、足りない食料の買い出しである。
「土方さんのことなんてどうだっていいじゃない」
「で、でも・・・・」
千鶴の口から『土方』の名が出た途端につまらなさそうに口元を尖らせて不機嫌顔になる沖田に、千鶴はどうしたら良いのか困ってその表情を僅かに曇らせる。
そんな千鶴を横目に捉えた沖田が肩を竦めながら大きな溜息を吐く。
「あぁー。せっかくの非番だった僕がわざわざ荷物持ちをかって出たのは、荷物がいっぱいで大変だろう千鶴ちゃんを心配してのことだったんだけどな。親切心で付いて来た僕に辛辣な態度をとるんだ?千鶴ちゃんってそんなに冷たい子だったんだねぇ・・・・」
沖田の言葉に千鶴の困惑に細められていた瞳がみるみるうちに見開かれていく。
「っ――!!わ、私だって本当は沖田さんと・・・・」
咄嗟に口にした本音を、けれども千鶴は最後まで告げることなく閉ざしてしまった。
新選組幹部である沖田の手を煩わせていることに申し訳なさを感じながらも千鶴はこの買い出しを密かに嬉しく感じていたりしたのだ。
用事のついでだったとしても恋心を持つ相手と肩を並べて青空の下を歩くことにトキメキを感じない乙女などいないだろう。
千鶴とて、男装していようがれっきとした【乙女】なのだからトキメキを覚えても仕方がないといえよう。
確かに、最初の頃に沖田に対して感じていたのは怖さだった。
けれど、新選組で過ごす日々の中で【怖い人】が【意地悪な人】になり、やがて【気になる人】になっていった。
冷たそうで暖かくて優しいヒト。大人のようで子供のように無邪気なヒト。
千鶴の目はいつの頃からか沖田の姿を探すようになっていたのだ。
「ねぇ、千鶴ちゃん。『本当は僕と』なに?」
「・・・・い、いえ。なんでもありません。沖田さんにはせっかくのお休みに私の用事に付き合っていただいて申し訳ないと思っています」
沖田の存在理由と断言している新選組、近藤のことを考えると、この想いは告げたら駄目なのだと心が静止をかける。
努めて明るめの声でニッコリとした笑顔を沖田へと向ける。
「・・・そう」
千鶴の答えが望んでいたものと違ったせいなのか、沖田は不貞腐れたような表情になった。
「あの、沖田さん・・・・怒って、ます?」
「別に。何でそう思うわけ?それって千鶴ちゃんが罪悪感を感じてるからじゃないの」
「そ、それは・・・・」
「申し訳ないと思っているなら、僕のお願いぐらい聞いてくれてもいいじゃない」
「で、でも、駄目です!!寄り道する度に凄く怒られてるじゃないですか。他の皆さんの食事も遅らせてしまうご迷惑をおかけしてしまいましたし、お忙しい土方さんにも申し訳がないです」
千鶴の買出しに沖田が付き合うのは初めてのことではなく、沖田が千鶴に付き添う度に
寄り道をしては土方に怒られるということを繰り返していた。
「・・・千鶴ちゃんはそんなに土方さんが気になるんだ?」
「え?沖、田さん?」
一人ごとのように呟かれた低く小さな冷たい響きと、沖田と隣り合う肩に刺さるような空気に、沖田を呼ぶ千鶴の声が僅かに震えた。
「ん?なに、千鶴ちゃん」
けれど、千鶴の呼び声に振り向いた沖田は何時もと何ら変りのない様子だった。
無意識に力が入っていた千鶴の身体は途端に弛緩し、口からは安堵の溜息が漏れ出たが、すぐに千鶴の身体が緊張に固まったのだった。
「いい加減にしてくださいっっ!!」
少女の困り果てた悲鳴が千鶴の鼓膜を刺激したからだ。
振り返ってみれば、千鶴と同じ歳くらいの少女が浪人に絡まれているようだった。
「ちょ・・・・千鶴ちゃん、待ちなって!!」
その姿を捉えた瞬間、千鶴は考えるよりも早く走り出していた。
沖田の静止する声も聞こえなかったように足を止めることなく。
――――それから間もなく。
カチャリと刀を鞘に収める音と盛大な溜息を吐く音が響く。
その音を響かせた本人である沖田は、なぜかニッコリとした笑顔を千鶴たちへと向ける。
「ねぇ、雪村くーん」
「は・・・い」
助けた町娘の手前、千鶴のことを『雪村』と呼ぶ沖田の目は全く笑っていない。
自分の力量も考えずに危険に飛び込んだ自覚のある千鶴としては謝ることしかできない。
「君さ、もうちょっと自分が強くないこと自覚したら?っていうか、自分の立場分かってるのかな」
「す、すいません」
しかも軽率な行動を自分がとってしまったばかりに沖田に迷惑を掛けたのだと思うと哀しくなってくる。
と、言っても千鶴には困っている人を放っておくことなど出来ないのだが。
「雪村くん、何度目だっけ?困ってる人を見かけると頭より先に身体が動くクセなんとかしなよ。何かあってからじゃ遅いんだよ?」
「ほぇんはさぁいぃー、おひたしゃぁーんん(ごめんなさい、沖田さん)」
お仕置きとばかりに、黒い笑顔を浮かべながら沖田の手は、千鶴の柔らかな頬を掴んで横に引っ張ている。
一応手加減しているのだろうが、それでも千鶴の目端には痛みによる涙が浮かんでいる。
千鶴の背後に居る存在を忘れているかのようである。
しばらくすると、千鶴と沖田のやり取りを静かに見つめていた人物の口から何かに気づいたような声が発せられた。
「・・・・はっ!! 」
やっと、その人物のことを思い出したのか、千鶴の頬をずっと引っ張っていた沖田の手が外され、千鶴と沖田の視線が声の主へと向けられる。
「あ、あの、そんなに怒らないであげてください!!えと、雪村、さん、でしたよね。助けていただいて有難うございました」
「い、いえ、わ・・・ぼ、僕は結局、何も出来なかったから・・・」
「そうだよね。浪人たちを追い払ったのは僕だしね」
「うっ・・・」
ひりひりとする頬を押さえながら千鶴がそう言えば、沖田の少し怒っているような声が千鶴の言葉を途中で遮ってしまう。
「そちらの方も有難うございました。あの・・・ぜひ、お礼させてください」
沖田へと顔を向けた少女の表情はまるで花が咲くように朗らかな笑みを浮べていた。
「別に気にしなくてもいいよ。連れのこの子が飛び出して行っちゃたから成り行きで助けただけだし」
「いいえ、それでも助けていただいたことに変りはありませんので。私、すぐそこのお茶屋の者なんです。お礼にご馳走させてください。」
こうして千鶴と沖田は、少女の懇願もあって茶屋に寄ることになったのだった。
この少女が案内した先が【桜屋】だった――。
<後半へつづく>
★♪中書き♪★
るか様、この度は素敵設定でのリクエストをくださり
有難うございます!!
そして・・・・・・・
も、申し訳ありません・・・続きます。
すっごくお待たせしてしまったのに続きって(汗)
妄想が膨らみすぎました(大汗)
ひとまず、前半だけですが進呈させていただきます。
後半も近いうちにお届けしたいと思います。