恋 鎖 ~中篇~ *R15*
すいません、ちょっと長くなったので中篇、後篇に分けました。
この中篇はR15となりますのでご注意くださいまし。
血表現や、ヌルイですが、少しですが大人向け表現があります。
大人な方はどうぞ。
(もし、年齢が達していない方で、この話を読みたいという方がいるようなら、R15部分を抜いたバージョンも作ろうかなと思います)
▼読んでみる?▼
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病持ちの僕と”鬼”である千鶴。
そんな僕たちが会えるのは夜だけだった。
僕は一応”隔離”されている身の上のこともあって昼の間は部屋で大人しく寝てるしかないし、千鶴は昼に起きているのは辛いようで日が昇っている時間は誰も近づかない、この家で眠りについていた。
まぁ、つまりは二人して夜行性ということなんだけど。
そんなわけで僕は体調の良い夜はコッソリと抜け出して千鶴の居る村外れの家屋へと出かけて行き他愛のない話をして過ごすことが多くなった。
その度に千鶴の表情はくるくると変わって僕を楽しませてくれる。
僕にとって千鶴と過ごす時間はかけがえのないものとなっていた。
千鶴の元に通うようになった何度目かの夜 、まだ千鶴が話していない秘密に触れることになった僕は、千鶴が”鬼”という存在で、ここが”人食い鬼の住処”たる所以を知った。
そして、この夜から僕たちの関係が大きく変わることになる--
「もう、総司さんってばまた抜け出してきたんですか」
「あれ、僕が来るの迷惑?」
「そんなこと言ってません!体調は大丈夫なんですか?」
「うん、最近は随分調子がいいんだよね、不思議と」
「・・・なら、いいですけど、あんまり無理はしないでくださいね?」
「分かってるよ。千鶴は心配性だなぁ」
「総司さんが無頓着すぎるんです」
「あはは、姉さんにもよく言われる」
「・・・総司さん」
「ごめん、ごめん」
千鶴は僕のことを“総司さん”と呼んでいた。
二度目に千鶴に会いに行った時には、すでに”総司さん”と呼ばれていた。
僕に酷似しているうえに僕と同じ名だという”沖田総司”と区別しているためだと予想はついた。
彼女は最初に僕をその男と間違えて”沖田さん”と呼んでいたから。
そして僕も彼女を”千鶴”と呼ぶようになった。
僕が”千鶴ちゃん”と呼ぶと、はっと息を飲み、泣き出しそうな表情を一瞬浮べる。
きっと”沖田さん”を思い出しているんだろう。
僕はそれがなんだか面白くなくて子供みたいに拗ねて千鶴を困らせたりもした。
千鶴が僕のそんな内面を知るわけもないから、急に拗ねる僕に戸惑ったと思う。
だけど僕は、千鶴に目の前に居る”僕”を見て欲しかったのかもしれない。
その夜、何時ものように二人で他愛のない話をしたり、ただ静かに夜空を眺めたりして短い時間を楽しんでいた。
けれど唐突に千鶴の様子がおかしくなって胸元を掴み何かに耐えるように千鶴は俯いてしまった。
千鶴の身体は極度の緊張をしているようで微かに震えている。
「うぅ・・・っ」
千鶴が苦悶の声をあげた次の瞬間、千鶴の艶やかな黒髪は白髪へと変じ、額には見慣れない二つの突起が存在していた。
あまりにも千鶴が”鬼”らしくなかったから時折忘れかけていたけど彼女は”鬼”という存在だったんだ、と思い出す。
それが”鬼”の姿なのだと、僕はすんなり理解していた。
理解すると同時に僕は千鶴の側へと駆け寄った。
「千鶴っ!!」
「ち、血が・・・」
「血?」
「血が欲し・・・」
顔をあげた千鶴の顔もその声同様に苦悶の色が浮かんでいて、細められた瞳は黄金色に輝いていた。
額に冷や汗を浮かべ、その言葉のとおり血に餓えているだろうに千鶴はその衝動に抗おうとする。
「私が狂う前に・・・げて」
「・・・血が欲しいんじゃないの?」
「・・・っ」
僕は徐に立ち上がり、床の間に大事そうに飾られている二本の刀のうち小刀の方を手に取ると鞘から引き抜き手の平へとその刃を滑らす。
じわりと赤い液体が溢れ出している僕の手を千鶴へと差し出した。
千鶴は僕から溢れた赤い液体を物欲しげに、うっとりとした眼差しで見ていたけれど、すぐにそれを振り払うように首を横に振った。
「だ・・・め」
「なんで?・・・欲しいんでしょ?」
「だって・・・や、くそくしたから・・・」
「約束?」
「沖田さんと・・・お互い、の血だけ・・・って」
「”沖田さん”の血じゃなきゃ、駄目ってこと?」
「これ以上・・・約束を違えるのは、嫌なん、です」
「・・・僕じゃ、駄目なの?」
「そ、じ・・・さん?」
「嫌だっていうなら、僕を”沖田さん”だと思っていいからっ!!」
”沖田さんとの約束”
その時、千鶴がもらしたその”事実”に、我を忘れるほどの何かが湧き上がっていた。
自分でつくった傷口から溢れる血を口の中に含むと、衝動のまま千鶴の身体を力まかせに抱き寄せて薄く開かれた紅い唇へと口づけた。
黄金の瞳が驚きの色に見開かれ、僕の胸元には押し返そうとする千鶴の手が置かれる。
力が入らないのか、弱弱しいその手はただ添えられているだけにしか感じられない。
けれど、すぐに血に酔ったのかその瞳は恍惚の色を浮かべる。
僕の胸元に置かれていた手からも力が抜け落ちてすすーっと下へとずり落ちていった。。
そして血を求めるかのように細い腕を僕の首へと回し、触れている唇の合わせが徐々に深くなるように引き寄せた。
「んんっ・・・ぁ」
千鶴の柔らかな舌が血で赤く濡れ染まった僕の舌へと絡まり、僕の唾液と一緒に赤い蜜を呑み込んでいく。
喉元がコクリと小さな音を立てて僕のソレを呑みくだす。
その間も角度を変えて執拗に千鶴の口腔を蹂躙する。
唇を離すと、その深さを物語るかのように僕たちの口端から銀糸が光っている。
銀糸を断ち切った千鶴の唇は僕の傷口へと触れていて、紅い舌がちろちろと血を舐めとっている。
「んっ・・・」
一心不乱に僕の血を求める千鶴の姿は今までに見たこともないほど扇情的に見えて、僕もまた恍惚とした気分になっていた。
そして、僅かに汗に濡れた千鶴の白く滑らかなうなじが僕の目に入る。
つぅーと、そこに指先を滑らせると、千鶴が甘い声をあげる。
「ふぁ・・・ん」
その甘い声、傷口を滑る柔らかな舌触り、指先に感じる滑らかな肌の感触。
千鶴のすべてが僕の身体に熱を持たせていった。
僕は千鶴を後ろから抱き込むようにすると、着物の襟元を掴んで合わせを左右に掻き分けた。
まず華奢で白くきめの細かい肩が顕わになり、次にささやかだけど形の良い膨らみが顕わになった。
徐に二つの膨らみを鷲掴むと、そのまま揉みしだく。
柔らかかった桜色の突起を指先で弄ってそれを硬くすると、その存在を主張するようにぷくりと膨らんだ。
「んんっ・・あぁん」
「ねぇ、気持ちいいの、ちづる?」
「ふぁっ、わ、・・・わからな・・・」
「分からないわけないでしょ?・・・ここ、こんなに硬くなってるのに」
「い、やぁ・・・変、になる・・あぁ・・・ッ」
「いい、よ。一緒に変になっちゃお?」
「あぁ・・・っっ!!・・・そーじさんっっ、だ、めぇ」
傷口から唇を離した千鶴は血の衝動が収まったらしいのに、正気へと戻る暇も与えられずに今度は僕の与える愛撫に身悶えている。
意識が半分朦朧としている様子の千鶴を床へと押し倒した僕は胸へと顔を埋めた。
袴の紐を解いてすらりとした2本の足を顕わにすると、その内股へと手を這わす。
内股を辿って、千鶴の蜜壺へと指を差し込むとゆっくりと掻きまわす。
「やぁああんっっ、だ、だめぇええ」
「・・・”千鶴ちゃん”好きだよ」
「あ・・・おきた、さん」
「・・・ごめんね」
「・・・さん、私も・・・き、です」
この夜、熱に朦朧としながら僕と千鶴は初めて身体を重ねた--
身体を重ねてから数刻の後、僕の腕の中には多少の疲労を感じさせながらも穏やかに眠る千鶴の姿が在った。
その黒髪を優しく梳くと、千鶴の目蓋が微かに震え、薄くその目が開かれる。
「んん・・・」
「目が覚めた?」
「そうじ、さん?」
「・・・そうだよ」
「あ・・・私、一体・・・」
「覚えてない?」
「えと・・・あ!」
「思い出した?」
「総司さん、貴方は・・・」
「僕がなに?もしかして”嫌”だった?」
「ち、ちが・・・」
「でも、謝らないよ。僕は千鶴のことが好きだから抱いたんだ。僕の勝手な想いであるのはよく分かってる。・・・僕のこと嫌いになる?」」
「・・・ません」
「え?」
「嫌いになんてなりません・・・総司さんこそ、私を嫌いになりますか?」
「え?・・・何で僕が?」
「私は貴方の血を求めたうえに・・・・浅ましくも淫らに貴方自身をも求めてしまったから・・・」
言葉が段々と小さくなり、最後の方はほとんど聞き取れなかった。
千鶴は、それだけ言うと、ふいと顔を隠す様に僕とは反対側に顔を向けてしまった。
でも、その頬が真っ赤に染まっているのが見える。
僕は、つい声に出して笑ってしまった。
「あはははは・・・」
「な、何が可笑しいんですかっっ!!」
「だって勘違いしてるから・・・」
「勘違い?」
「そう、勘違い。・・・朦朧とした千鶴の状態を利用して抱いたのは僕だよ。けど君は、僕が君を求めたのに、自分が”浅ましい”と思ってる。君に血を与えたいと切望したのは僕。身体を求めたのも僕・・・」
「勘違いなんかじゃ・・・ありません」
「千鶴?」
「私だって、貴方を求めました。貴方の熱を肌に・・・中に感じて悦んでました」
千鶴は一瞬その言葉を口にすることに羞恥の色を浮かべたけど、僕に何かを伝えたいという意思が上回ったのか真剣な眼差しになり、その言葉を発した。
「あはははは・・・・」
「な、何でまた笑うんですか!?」
「ごめん、嬉しくて。・・・千鶴には嫌われると思ってたからね」
「え?」
「さっきも言ったけど、血の発作で朦朧としてる千鶴を抱いちゃったわけだし?」
「発作・・・あぁああああっっ!!!!」
「ど、どうしたの、千鶴」
「わ、私、そういえば発作が・・・・」
「あはは、本当に千鶴は千鶴だね。それに、今気付くなんて」
「しょ、しょうがないじゃないですかっっ!!い、色々・・・ありすぎて・・・その」
「これも今さらかもしれないけど・・・教えてくれる?」
「・・・はい」
千鶴は”新選組”で過ごした日々のことから”沖田さん”を看取ったことを、思い出すようにポツリポツリと話してくれた。
辛いことを思い出したせいか、千鶴の瞳にには大粒の涙が溜まりはじめる。
看取った後のことはよく覚えていないらしく千鶴はそこまでで口を閉ざした。
そして涙を溜めたままの瞳で僕の目を見つめた。
その瞳に僕はどうな風に映っていたんだろう?
「総司さんは・・・」
「ねぇ、千鶴。僕は君の”沖田さん”じゃないけど、”僕”を好きになってくれる?」
「総司さんのこと好きです。でも・・・」
「でも?」
「貴方の想いに応えることはできません。私は・・・”鬼”です。きっと貴方を・・・」
「余計なことは考えないで!」
「総司さん・・・?」
「僕は人間だし、病もある。絶対に君を哀しませたりしない、なんて断言は出来ない。だから、もし君が哀しみを、絶望を感じてこの未来を諦めるというなら・・・僕が君を殺してあげるよ」
「っっ!!」
「僕が違う未来をあげる」
「・・・さ、ん」
「お願いだから、”僕”を愛して・・・僕は、君だけを愛し続けるよ」
「・・・はい」
自分でも勝手な言い草だと思う。
でも彼女は微笑み、頷いてくれた--
瞳には涙が溜まったままだったけど・・・。
我ながらずるいと思う。
あの夢幻のような中で、彼女は”沖田さん”と僕を混同させていた。
だから、千鶴は刷り込みのように僕のことを”好き”だと言ってくれたんだと思う。
けど、千鶴が僕を見てくれるのなら、それでも構わないと思った。
例え、僕が”沖田さん”の代わりだったとしても、僕は幸せを感じていた。
彼女に触れているのは、紛れもなく”僕”なんだから。
その夜から、この行為は繰り返された。
千鶴に僕の血を与え、身体を繋げる、それが当たり前のことになっていた。
僕たちは幸せだった。
その空間には僕たち二人だけが存在していて、他には誰もいない。
お互いだけを想い、愛し合う。
そんな幸せの空間だった。
だけど、その幸せはあっけなく終わりを告げる--
<後篇へつづく>