恋 鎖 ~後篇~
はい、後篇です。
比較的短いです。
相変らず血表現あります。
理空の表現力がないので、そんなに酷くはないと思いますが。。。
苦手な方はご注意ください。
(って後篇だけ読む人はいないか(汗))
▼読んでみる?▼
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千鶴の存在を知った村人が、千鶴の”血”を狙って村外れのこの家へと押しかけてきたんだ。
吸血衝動に襲われ、僕の血を求める千鶴の姿を見られていた。
今まで誰も、あの家には近づかなかったというのに、”人喰い鬼”の存在を確かめに来ていたらしい。
昔から”人喰い鬼”の話は受け継がれていた。
その話が、どんな経緯なのかは分からないが敵国の人間の耳に入り、”人喰い鬼”の存在に興味をもった敵国の人間は村人へと取引の話を持ちかけた。
それは村人にとって美味しい条件で、魅力を感じた村人は”人喰い鬼”を確かめにやって来て・・・僕たちのソレを見てしまった。
確信をもった村人は、正式に取引を交わした。
”鬼”の血を飲めば、絶大な力が与えられる--
奴らは千鶴の血を求めたんだ。
自分たちが助かりたいがために--
敵国から提示された条件。
それは、千鶴の血を差し出す代わりに村には一切手出しをしない、というものだった。
そして、その”狩”が行なわれようとしているのだと--
姉さんからその話を聞いた僕は、部屋を飛び出して千鶴の元へと向かった。
向かっている途中、何も考えられなかった。
とにかく千鶴の無事な姿を確かめたくて、通いなれた道を駆けていく。
いつもと違うといったら、空には月の変わりに太陽が見えることだろう。
枯れた桜の木を視界に捉える。
けど、千鶴のいる家屋を取り囲むように村の人間たちの姿があった。
手には鍬や斧を握っている。
「きゃぁああああ!!!!」
そのとき、家屋の中から千鶴の悲痛なほどの悲鳴が外まで聞こえてくる。
僕の心臓がやけに早くなり、身体が冷えるような熱くなるような訳が分からなくなった。
ただ、がむしゃらに村の男たちを掻き分けて、家屋の中へと向かう。
僕の頭には千鶴のことしかなかった。
奥の部屋へといくと、何人かの男たちの姿があった。
手にしている鍬や斧を振り上げている。
それを振り落とそうとしている先には、己の血で赤く染まった千鶴の姿があった。
「血を寄こせ、”化け物”っっ!!」
どちらが”化け物”だというのだろう。
抵抗もしない千鶴に対して、村の人間たちは千鶴の血を得るために次々と彼女にその凶器を振り落としていく。
”鬼”といっても痛みを感じないわけではない。
凶器が振り落とされる度に千鶴の苦悶の叫びが響いている。
その苦悶は続く。
”鬼”の力がそれを瞬く間に治癒していく。
止めを刺されることもない千鶴には地獄が続くようなものだろう。
「っっ!!」
こいつ等は、すでにどれほどの苦しみを千鶴に与えているのか。
千鶴の周辺は血の海と化している。
目の前が赤くまって激流が頭へと昇っていく。
激情のまま、床の間に飾られた長刀を手に取った僕は千鶴へと向かっている男たちの背へと斬りつける。
「ぎゃぁあああ」
男たちは一瞬の出来事に何だか分からないままに、床へと倒れる。
それでもまだ息のある男たちへ僕は冷たい視線だけを送り、刀を男に向けて突き刺す。
突き刺した瞬間、目を見開いた男たちはそのまま絶命する。
本当なら、千鶴が味わった苦しみの分だけ、こいつらにも苦しみを味わせたかった。
けど、それよりも千鶴の方が大事だった。
「千鶴っっ!!」
「そ、・・・じさん」
「ご・・・めん、ごめん、ちづる」
修復しつつあるとはいえ、それでも痛々しい傷から溢れている鮮血で赤く染まった千鶴を抱き締める。
千鶴を抱きしめながら、僕の中には止めなく後悔の念ばかりが浮かぶ。
もっと早くに駆けつけていられれば。
千鶴の存在に気付かれたことにもっと早くに僕が気付いていれば・・・。
「そうじ、さん・・・来てくれて、ありがと」
「遅くなって・・・ごめん」
千鶴はある力を振り絞って首を横へと振った。
僕の中に、悲しみがせり上がってくる。
嗚咽とともに、僕の口からは咳が漏れ始める。
肺が締め付けられるように、咳で呼吸がままらなくなる。
どんどん僕の少ない体力が奪われていく。
絶望的な状況だった。
傷だらけの千鶴と、病に蝕まれている僕。
そして、千鶴の血を得ようと決起になってこの家の周りを囲んでいる村中の人間たち。
僕はどうするべきなのだろう--
千鶴の懐にある小刀が僕の目に入る。
それから千鶴を見ると、彼女はコクリと頷いた。
震える手で小刀を握る。
鞘から抜くと、その刀身に僕の姿が映るほどに銀色に輝いている。
それは”鬼を殺せる”刀だった。
「最後に・・・お願い、しても、いいですか」
「あたり、前でしょ・・・」
「笑顔を、見せて・・・私の名を、呼んで・・・さい」
「うん。僕にも・・・お願い、していい?」
「は、い・・・総司、さん」
弱弱しく微笑みながら、千鶴は僕の名を呼ぶ。
僕も笑みを浮かべる。
「ありがと、千鶴・・・愛してるよ」
「わたしも、です」
片手で千鶴の手を握り、片手には小刀を握る。
小刀をゆっくりとしたした動きで振り上げるのと同時に、千鶴は僕に謝罪と礼の言葉を口にする。
「ごめんなさい・・・そして、約束を果たしてくれてありがとう、総司さん」
「ちづる・・・」
その言葉が終ると同時に千鶴の心臓へと銀に輝く刃が突き立てられる。
笑みを浮かんだまま千鶴の瞳は閉じられる。
心臓から引き抜いた小刀がカタリと音をたててこぼれ落ちた。
そこからはジワリと鮮血の華が咲き誇る。
僕はその鮮血の華に口付けを落とし、僕は千鶴がそうしたようにその紅い血を啜る。
彼女が僕の一部になるように願いながら。
千鶴の結晶が僕の中に入り込んでいき、僕と同化する。
彼女の熱で満たされ、僕は彼女と同じ存在になっていくことに恍惚とした。
それと同時に身体の中が急速に造り替えられていくのを感じた。
「くっ・・・ぅあぁああああああ」
僕の口元は千鶴の血によって赤く染まり、口端からは彼女の紅い蜜が一筋つーと滴る。
それと同時にその彼女の甘い血の味に覚えがあることを僕は思いだした。
あぁ、僕は僕に嫉妬していたんだ。
彼女が想っていた”沖田さん”は僕だったんだ。
身体も昔を思い出したかのように、若変水を飲んだ時と同じく髪からは色素が抜け落ち白髪へと変じる。
そして彼女が新緑のようだと言った僕の瞳は血のように赤く染まっていった。
僕は再び羅刹となった--
まさに悪鬼のごとく僕は刀を手に外へと踊りでた僕は狂い始めていたのかもしれない。
自分たちが助かるために、僕たちの幸せを奪い、僕から彼女を奪った”人間”たちを許すことができず、目に入った”敵”を次々と斬り伏せていく。
都合良く助けを求める言葉を無視し、恐怖に歪む顔を視界に入れても何の感慨も無く、ただ肉塊を断ち切った。
生温かな血しぶきを浴びながら一人残らずその命の灯を消していく。
そして、やがて”人間”だったものの山がソコに出来あがっていた。
この場所に命ある存在は、息一つ乱すこともなく佇んでいる僕だけだった。
・・・それが、仮初の命だったとしても。
それから僕はその山に視線を移すこともなく彼女が眠っている家屋の中へと入っていた。
けれどそこには彼女の姿は最早無く、彼女が横たわっていたその場所には彼女の纏っていた着物と、夜空に浮かぶ星々のように煌めく砂だけだった。
僕はその煌砂を掻き集め彼女が大事に持っていた桜柄の小袋に入れていく。
彼女を手に表へと出ていくと、庭に植えられていた枯れ果てていたはずの桜の木が満開の花をつけて咲き誇っている。
多くの血を吸った桜は僕と同じように狂ってしまったのかもしれない。
そして、千鶴への鎮魂歌とでも言いたげに薄い紅色の花びらがひらひらと舞い踊せて僕たちを包む。
狂い咲く桜の下で僕は微笑みを浮かべる。
彼女の分身ともいえる”煌砂(こうさ)”を入れた桜柄の小袋に口づけながら僕は彼女に誓う。
狂ってしまったはずの僕の頬には、彼女への想いを表したかのような清らかな涙が伝った。
ただ彼女だけを想う涙が--
「今度は僕が君を待ち続けるよ--」
【了】
‡‡後書き‡‡
す、救われねーーーorz(←最初の一言がそれかい。)
お読みいただき有難うございました。
本当にこんな暗いものを。。。。(汗)
特に後篇(大汗)
中篇では初のエロ(?)を書いてみました。
ヌルイですけど、ね。
精進しようと、思いました。(←懲りてないんかい)
さて真面目な話、一応調べはしていますが付け焼刃なんで色々と間違っていると思いますがご容赦ください。
救いは・・・・ありますよ?
きっと。
だって、”恋鎖”ですもの。
ふふふふふふ・・・・・。(←)