ソノ、ヒトトキに願う
沖田メインの一応オールのコメディです。
だが、理空的に不燃焼。。。
8/7にリベンジシテヤルゥウーーー!!
▼読んでみる?▼
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そろそろ日も暮れようかという頃。
千鶴が表口の掃き掃除を終えて屯所の中へと戻ろうとすると、背後から聞き慣れた声が掛けられた。
「千鶴ちゃん、ただいまぁ~」
「お帰りな・・・うわぁ~」
その声に振り向いた千鶴は最初に総司の姿を視界に留め、次に総司が肩に担いでいるものへと視線を移す。
それを見た瞬間、千鶴の瞳が輝き感嘆の声をあげた。
「どうしたんですか、それ?」
「うん、子供たちと一緒に採りに行ってきたんだ♪で、千鶴ちゃんもこういうの好きなんじゃないかなぁーって思って。僕も持って帰ってきたんだけど、迷惑だった?」
「そんなことないです、嬉しいです!」
「喜んでもらえて良かったよ」
「ありがとうございます、沖田さん!」
「どういたしまして」
「あの・・・せっかくですし、皆さんで飾りませんか!?」
「え、皆で?」
「だ、ダメですかね?」
途端に残念そうにシュンとしてしまった千鶴に小さく笑みを漏らすと、千鶴を笑顔にするための言葉を告げる。
「ううん、千鶴ちゃんがお望みとあれば。たまには皆でこういうのもいいよね」
「本当ですか・・・」
「うん、もちろん。・・・僕も色々と楽しめそうだし」
「え?」
「ううん、何でもないよ?皆も気晴らしになっていいんじゃないかなーって」
「はい!」
「じゃ、これは広間から見える所に立てておくね。そうすれば、夕餉の後にでも皆で飾れるでしょ」
「はい、ありがとうございます・・・あ、じゃぁ、私は道具を用意しておきますね!」
「うん。・・・あ、でも夕餉の時間までそんなにないし、一人じゃ大変でしょ?手分けした方がいいよね」
「いいんですか?」
「もちろん♪僕と千鶴ちゃん二人の共同企画だからね」
「共同企画、ですか?・・・ふふふ、なんかこういう企画って楽しいですね、沖田さん」
共同企画、という言葉に楽しい響きに千鶴は身体の奥底から期待で火照り出すかのよう高揚感を感じた。
紅潮した頬で総司へと笑みを向けると、猫のように目を細めて笑む総司の瞳と合う。
「そうだね。そうそう、千鶴ちゃん、この企画のことは皆には内緒ね?」
総司はそう告げると、口元に人差し指を当てて笑む。
千鶴はその言葉にきょとんと首を傾げながら、総司へと問いを返していた。
「え・・・何でですか?」
「秘密の企画ってなんかワクワクしない?」
「・・・・わ、ワクワクします」
この素敵な秘密の企画で皆が驚きながらも楽しんでくれることを考えると、千鶴の口からは肯定の言葉が漏れた。
「あははは、千鶴ちゃんも実は悪戯の素質があるんじゃない?」
「え!そ、そうなんでしょうか!?」
確かに楽しさを感じた自分は実は悪戯が好きなのだろうかと、総司の言葉を素直に受け止めた千鶴は頬を手で覆いながら考えこむ状態となった。
「だって、皆の驚く顔を見るのが楽しみなんでしょ?」
「そ、そうですけど・・・でも、皆さんと楽しい一時を過ごせるのが嬉しいんです!」
「千鶴ちゃんらしいなぁ。ま、分かってたけどね」
「からかったんですか!?」
「何を今さら。僕が千鶴ちゃんと遊ぶの一番好きなの知ってるでしょ。でも、ま、今日は二人でこの企画を楽しもう?」
「うー、なんか前半は釈然としませんが、後半は楽しみです!」
「うん、じゃぁ時間も無いし急ごうか」
「はい!」
うきうきとした様子で駆けて行く千鶴の後ろ姿を微笑ましい面持ちで総司は見送った。
そして、自分にとっても楽しめそうな行事に笑みを深くするのだった。
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食事中もソワソワした様子の千鶴は、皆が食事を終える頃合いを見計らい席を立ち広間を出る。
しばらくして大きな盆を持って再び広間へと戻ると、少しの緊張を含ませながら食事を終えた幹部一同へと提案を口にする。
「あの、今夜は皆さんで食後のお茶でもしませんか?」
「どうしたんだ急に?」
「だ・・・駄目です、か?」
訝しげに眉を顰める土方に、やはり忙しくて駄目なのかと思った千鶴は残念そうに目を伏せた。
けれど、総司の声が耳に入ってきたことですぐに顔を上げることになった。
「嫌だなぁ。察してくださいよ、土方さん」
「あぁ?どういうことだ、総司」
「千鶴ちゃん、すごく楽しみにしてるんですよ」
「だから、何がだっって言ってんだよ」
「あれ、本当に分かってないんですか?土方さんにとっても良いことづくめな行事だと思うんですけど・・・いいネタになるんじゃないですか、コレの」
そう言いながら、袖から一冊の本を取り出した総司は、意味ありげな笑みを浮かべてその本の表紙を土方へと見せた。
そこには、”豊玉発句集”の文字が並んでいる。
その文字を視界に入れた瞬間、土方は怒りも含めつつ焦った様子でソレを取り返そうと総司へと詰め寄る。
「てめー、また勝手に人の部屋に入って漁りやがったな!」
「まさか。ただ僕は、土方さんに借りたいものがあって借りにいっただけですよ。そしたら、たまたま見つけただけです」
「何が”たまたま”だ!んなわけねーだろっっ!!」
「たまたまですよ。てっきり見て欲しかったのかと思いましたよ、あんな分かりやすい所にあるから」
「何が分かりやすいだ!?畳の下の土の中に埋めた箱の中に入れておいたつーのに、それが分かりやすいのか!?」
「分かりやすいですよ。土方さんも捻りがありませんよねー」
「捻りがなくて悪かったな!とにかくソレをとっとと返しやがれ!」
「えー、でもまだ皆で読んでないですよ?」
「読まなくていいんだよっ!」
「えー、千鶴ちゃんも読みたいでしょ?」
「え!?あ、あの・・・」
いつもの総司の”土方遊び”に巻き込まれそうになった千鶴を助けたのは静かな落ち着いた声だった。(・・・身代わりともいう/笑)
「いい加減にしろ、総司」
「何?一君。あ、一君も読みたいの?」
「な!確かに読んでみ・・・」
「齋藤っ!」
「も、申し訳ありません、副長!つい本音が・・・いやそうではなく・・・」
齋藤の本音だと分かる態度に土方は溜息をつき、眉間の皺をさらに深めた。
それに対して総司は愉快な笑い声を漏らしていた。
「あははははー、本当に一君も面白いよね」
「笑うな、総司!アンタのせいだぞ」
「何が?一君が勝手に言っただけじゃない。いやだな、僕のせいにしないでよ」
「と、ともかくアンタの副長への態度は目に余る。隊士たちへの示しがつかないだろう」
「大丈夫だよ。今、幹部しかいないんだし」
「そういう問題じゃねー!つーか、てめーは隊士の前でも変わらねーだろうがっ!!いいから四の五の言ってないでとっと返せってって言ってんだよ!!」
「それが返して欲しいって人の態度なんですか、土方さん?土方さんこそ隊士に示しがつかないんじゃないですか?副長がこんな短気なんじゃねぇ」
「てめーはいい加減にしろよーー?」
「あ、あのぉー」
さらに白熱しそうになったこのジャレ合いの近くでは、千鶴が困ったような表情をしながらも懸命に声を掛けようとしていた。
総司たちのジャレ合いを傍観していた原田は、そんな千鶴の姿を目に留め隣へと移動する。
そして、千鶴の髪をくしゃくしゃと撫でながら、この騒ぎの原因である総司へと声を掛けた。
「おいおい、その辺にしておけよ、総司。千鶴が困ってるじゃねーか」
「あぁ、ごめんね千鶴ちゃん。まったく土方さんが大人気ないから・・・本当に近藤さんを見習って欲しいよね」
「よぉーし、総ぉ司ぃー、歯ぁ食いしばれよ」
「嫌ですよ」
第弐回戦が勃発しそうな雰囲気に近藤が慌てて口を挟んだことで、多少の落ち着きを取り戻したのか、二人の口調は落ち着いたものになる。・・・落ち着きはしたが、口調は変わってはいないのだが。
「ま、まぁ落ち着けトシ。雪村君の誘いを受けようじゃないか」
「やっぱり近藤さんは大人だなぁ。誰かさんと違って」
「総司、てめーは黙ってろ!ソレはきっちり返してもらうからな!・・・近藤さん、茶はいいんだが、何で急にそんなこと言い出したのか理由は聞いておかねぇとな」
「すいません・・・やっぱり迷惑でしたよね」
「いや、迷惑ってことはねーが・・・」
「土方さんって本当に頭が堅いですよね・・・これですよ」
総司が襖を開けると、庭には青々とした笹がそこにあった。
それに最初に反応したのは平助だった。
「お、笹じゃん。何で屯所に笹なんてあんだよ」
「そうか、今日は・・・」
平助以外は笹の意味をすぐに理解したのか、千鶴に視線をやり穏やかな笑みを浮べた。
・・・分かっていない平助を除いて。
「分かりましたか?まさか、反対なんてしませんよね。千鶴ちゃん、すごーーく楽しみにしてるんですよ」
「反対はしねーが・・・初めから、そう言えばいいだろうが」
「これでも一応、気をつかったんですよ?千鶴ちゃんが。ね?」
「え?えと・・・皆さんお優しいのでお願いすれば聞き入れてくださると思ったのですが、やはり忙しいかと思いまして・・・お茶で様子見をしようと思ったんです」
「千鶴ちゃんのことだから、そうすると思ったんだよねー」
「す、すいません」
「二人の企画だって言ったでしょ」
そう、今回に限っては総司の”土方遊び”(笑)は、この行事を行なう流れに持っていくための布石だったのだ。・・・趣味も兼ねているのだが。
だが、ただ一人状況を理解していないのか平助だけが間抜けた声をあげる。
「えー、どういうことだよ?」
「平助、本当に分からないのか?」
「え、左之さんは分かったのか?」
「いや、分かんねー方がどうかしてると思うぞ、平助」
「うむ、確かに千鶴が好きそうだな」
「え、一君も分かったのか?」
「・・・分からない方がどうかしていると思うが?」
「ひ、ひでーよ、一君までぇー・・・」
床に”の”の字でも書き出しそうな雰囲気の平助に優しげな千鶴の声が上からかかり、平助はパッと顔を上げた。
「平助君、一緒に短冊飾ろう?」
「短冊?」
「うん。平助君は黄色の短冊でいいかな?」
「あ、そっか。今日は・・・」
「七夕だよ」
その後、皆で騒ぎながら短冊へと願いごとを記した。
願いを込めた色とりどりの短冊が笹の葉へ結ばれていく。
その間、ずっと千鶴は笑顔だった。
この楽しい時間がずっと続けばいいのにと思いながら。
そして、皆もそんな千鶴の楽しそうな表情に微笑ましい気持ちとなった。
満天の星空の下で千鶴や皆の笑い声が響き、皆の願いを込めた短冊が優しく揺らめいていた。
”新選組の皆さんが幸せでありますように”(千鶴)
【了】
††後書き††
七夕、1日遅れ・・・。すいません(汗)
今回は沖田贔屓(←いつものこと)の一応オールに
してみました。
楽しんでいただければ幸いです。
お読みいただき有難うございました!
↓おまけ?
”千鶴(ちゃん)を幸せにするのは俺(僕)!!”