【R18】Summer Birthday(郁人x奏)
郁人たん、Happy BirthDay!!
キミに出会えて良かったよ!!
マジでそのツンデレぶりとか、義姉大好きっぷりとか、そのお声に萌えるんですけど!!
・・・すんません、8月3日中に記事だけはアップしておきたかったんでSS途中ですけどアップしちゃいます(大汗)
まだ工□には突入してませんけど、工□ありSSにはなるので、今からR18表記にさせていただきますね。
・・・というわけで、18歳以上の大人の女性で工□もOK!!な方のみ、「読んでみる?」からドウゾ!!
▼読んでみる?▼
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茹だるような暑さが続く夏の日――8月3日。
この日も当たり前のように照りつける太陽の日差しによって外は炎天下と化していた。
その熱気で陽炎が立ち上り、周囲の景色が緩めいて見えるほどだ。
そんな中、学園の夏服に身を包んだ園村郁人の姿があった。
自宅へと向かう足は、今の郁人のイライラした心情を現したかのように急ぎ足になっている。
本来ならば夏休みに突入した8月の平日に学園に行く必要などないのだが、郁人が在籍する学年の登校日が8月3日だったために登校するはめになったのだった。
郁人が物心ついてから今までで、こんなに今日という日を待ち遠しく感じたことがないほどに【特別】な日だったのだ。
それだけに、今日という日が登校日に重なってしまったという事実を知ったときの郁人の落胆振りは目に見えて分かるほどだった
だが、元来から真面目な性質の郁人が登校日をサボるなんてころもなく、義姉の片桐奏に見送られながら泣く泣く登校するに至ったというわけである。
そんなわけで郁人は貴重な【特別な日】を少なくとも半日も無駄にしてしまったのだ。
それでも昼前にはHRが終了した郁人は奏の待つ自宅に急いで帰ろうとしたのだが、運悪くとでもいうのだろうか、姉と同じクラスで友人の白木琴子と小峰竜樹の二人に捕まり、カラオケボックスへと連行されてしまった。
奏と同じ学年で同じクラスであるこの二人は登校日ではないため私服である。
もうひとつ言うならカラオケボックスで歌いまくっていたのは琴子と小峰の二人で、郁人はムスっとしながら二人の歌を聞いていただけである。
琴子によって携帯をモノ質に取られてしまったせいで、帰るに帰れなかったのだ。
何故なら、郁人の携帯には奏から貰った大事なストラップたちがつけられていし、秘密の画像が保存されていることもあり、そのまま帰ることが郁人には出来なかったのだ。
そして、歌うだけ歌った二人もやっと満足したのか、郁人はなんとか開放されることを許されたのだ。
もっとも、二人に拉致されてから二時間近く経っていたわけだが。
何かを企んでいるかのような笑みを浮かべる琴子から直接手渡しで携帯が返されたが、その笑顔に引っかかるものを感じずにはいられない。
だが、かなりの時間を浪費してしまった郁人は今度こそ家路へと着くために、素早い動作で踵を返してカラオケルームを出て行ったのだった。
「ふふふ、あとは家でじっくり【特性】誕生日ケーキを味わえばいいと思うよ、弟くん♪」
そんな意味深な琴子の言葉は、急いで帰ることしか頭にない郁人には届いてなどはいなかったのだが。
――琴子の言葉からも分かるように、登校日でもある8月3日とは郁人の誕生日だったのだ。
秘密の恋人である義姉の奏と【恋人】として過ごす初めての誕生日でもある。
ゆえに【特別な日】であり、めくるめく甘い一日を期待していたとしても仕方がないだろう。
そんなこんなでやっとの思いで帰宅した郁人だったが、自宅の玄関へと入って数秒後にフリーズしてしまった。
郁人の視線の先にいるのは、義弟兼恋人の郁人の帰りを出迎えている奏だ。
だが、何時もと違うその格好に目が釘付けとなる。
外の暑さや今まで感じていたイライラさえも忘れてしまったかのようにポカーンと口を開けてアホ面を晒してしまっている。――せっかくのイケメン顔が台無しである。
だが、郁人が目を逸らせないのも、呆気にとられて口をパクパクとさせるのも、顔を赤くさせるのも、成人も間近な健全な青少年せある郁人が劣情をいだくのも、すべて仕方がないとしかいえない。
「え、え・・・と、おかえり、なさい、アナタv・・・」
よっぽど恥ずかしいのか紅色に染め上げた頬、伏せ気味な潤んだ目、モジモジと擦り合わせている足、羞恥に震えた声――そんな奏の姿は凶悪なほどにエロ可愛いものだ。
しかも、純白のレースをあしらったエンプロンしか身につけていないように見える。
陶器のように白く滑らかな肌をした、首筋や鎖骨、腕や足が惜しげもなく晒されている。
まるで、【男の夢】である裸エプロンである。
それは郁人の思考を混乱に陥れるほどに予想だにしていなかったものだった。
いや、セルフ妄想の中ではだけなら何度なく奏にさせたことのある格好だし、言わせたセリフではある。
それこそ数え切れないほどに何度も。
実際にやって欲しいと何度も思ったこともあったが、いくら世の男性にとって一般的な【男の夢】といえども、奏にそれを口にする勇気など郁人にはなかった。
そんなことを口にして『変態』と罵られたうえに奏に嫌われたくはなかったからだ。
しょせんは惚れた弱みというやつだろう。
「な、な、姉貴・・・それ?え?えぇ・・・?いや、落ち着けオレ!!どうせ、エプロンの下にはキョミソールとホットパンツを穿いてるとかっていうオチだろっっ!!」
ドクンドクンと煩いほどに早くなっている鼓動を落ち着かせようと、エプロン姿の奏をジッと見つめる。
だが、郁人の期待を裏切って――いや、この場合裏切ってはいないのかもしれないが――なだらかな膨らみの天辺には小さなツッパリがちょこんと左右一づつあり、晒された肌は湯上りのように仄かなピンクに染まっている。
それをマジマジと見やる郁人の喉がゴクリと鳴る。
「っっ!!!・・・つか、これ夢か?オレの妄想・・・痛っ・・・じゃねぇ・・・ってことは・・・・」
目の前の光景が信じ切れずに自分の頬を抓った郁人の目じりに痛みによる涙が浮かぶ。
「い、郁人!?もう、なにやってるの?」
急に自分の頬を抓り始めた郁人に驚いた奏は駆け寄ると、ヒリヒリと赤くなった郁人の頬へと冷たくて気持ちの良い手を添えた。
奏よりも若干、背の高い郁人の目にエプロンの隙間から胸の谷間が見え、目の置き場所に困った郁人は目を彷徨わせ始めた。
「そ、それはオレのセリフだっつーのっっ!!な、なんなんだよ、その格好は、よ」
「え、えと・・・今日って郁人の誕生日でしょ・・・だから、手作りケーキを用意しようと思ったの・・・」
「そーいや、ケーキの甘い匂いがすんな・・・って、そうじゃなくて、ケーキ作るだけでなんで、んな、あー、なんだその、は、裸エプロンなんだっつーの」
奏の言葉にクンクンと鼻をならしてみれば、確かにリビングの方からバニラエッセンスの甘い匂いが漂ってきてはいるが、ただのケーキ作りがどうやったら裸エプロンなどに繋がるのかが分からずに、奏を直視しないような位置へ視線を移した郁人は素朴な疑問を口にした。
「や、やっぱり、私がこんな格好するなんて引いちゃうよね!?」
だが、何を誤解したのか、奏は赤く染めていた顔が蒼白へと一変させる。
そんな哀しげな表情をする奏に慌てた郁人は思わず本音を滑らせた。
「ち、違げーーよ!!むしろ嬉しいっつーの!!そういうエロい姉貴もマジ可愛いつーか・・・」
「え・・・あ、ありがとう?っていうか、恥ずかしいよ、郁人!!」
蒼白となっていた奏の顔が今度は元通り、真っ赤へと染まる。
その様はまるでリトマス紙のようだ。
「な、アンタが勝手にやったんだろうが!!」
「だ、だってケーキの相談したら、琴子と小峰君が『普通じゃツマラナイ』って・・・どうせなら郁人が喜ぶ世界に一つの特製ケーキがいいんじゃないか、って」
「それが何で裸エプロンに繋がんだよ?」
「あ、あのね、ケーキの飾りつけは郁人にしてもらうからなんだけど・・・それで小峰君がどうせなら『男の夢!!の裸エプロンの方が郁人も喜ぶと思うぜ☆』って・・・」
「・・・・・・」
「あ、あれ、郁、人?ど、どうしたの?」
急に黙り込んでしまった郁人に気づいた奏が不安げな声をあげる。
「へぇ・・・『小峰君が』ねぇ」
普段より低い、郁人の”男”の部分を強く奏へと感じさせる声が玄関先に響き、郁人の背後に黒いオーラが見えるようだった。
「い、郁人?ど、どうしたの?ね、こ、怖いよ?」
それは、恋人になる直前のある時期に現れたことのある【黒郁人】のようである。
「べつに怖くなんてねーよ。それより、オレのためにバースデーケーキ作ってくれたんだろ?・・・こんなイヤラシイ格好してまで、さ・・・なぁ、姉貴?」
力強い腕に引かれ、奏の華奢な身体があっという間に背後から抱き締められる態勢になり、すすーとエプロンの裾を捲り上げて郁人の手が奏の触り心地の良い太股を撫であげる。
「んっ・・・郁、人・・・だ、めぇ・・・」
飛翔の刻~後編~(郁人x奏)
さてと、次はおきちづ、おきちづ♪♪
なんか、今まで忙しくてなかなか打てなかった分の反動が来ているようです。
妄想が脳内を渦巻いていて仕方がないです。
何とか打つ時間を確保したいなぁ。。。
さて、今回の後半ですが、エロシーンはございません。
軽くチューがあるくらいです。
んで、この後半だけでも読める感じになっています。
ほんで、後半は郁人視点になってます。(冒頭のみ奏)
それでもイイよ!という方は、「読んでみる?」から本文へドウゾ。
▼読んでみる?▼
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郁人のしたいように――こうして繋がれていることが、籠の中の鳥になることが――郁人に対して私が出来るただ一つの贖罪だと思っていた。
でもそれは違ったのだと、今更にして気づく。
私は逃げていただけなんだ、【贖罪】なんて、私が逃げるための口実でしかない。
そして――郁人を私に繋ぎとめるための最後の方法だと、無意識に感じとっていたのだと思う。
お互いの存在を必要としているのに、想いは同じだったというのに、私たちはすれ違ってしまった――私を失いたくないと思ってくれた郁人と、郁人を失いたくなかった私。
理不尽な行為に恐怖を感じもしたけれど、それでも大人しく彼の為すがままだったのは――私が郁人という鳥籠に捉われることで、郁人もまた私という鳥籠に捕らわれてくれるから。
彼が私から離れるのは学園のある時間だけ。
つまりは学園以外の彼の時間はすべて私のもの、ということ。
今の私たちに未来へ繋がる時間は無い。
あの夜から私たちの時間は止まったままで、私が好きだった表情を今の郁人が浮かべることはない。
今、私が見ることが出来るのは仄暗く官能の微笑みだけ。
――でも、私は気づいた。
郁人が密かに持っていたもの見つけた時、彼の本質は変わっていないのだと。
そして、郁人の幸せな笑顔を見たいと思う自分に。
照れを隠すためのムッとした顔、呆れながらも『仕方ねぇな』って微笑む顔――私の好きだった郁人の表情。
本当に郁人に償いたいと思うのなら、私がすることは一つ。
私と彼の時間を再び動かすこと。
私はもう逃げたりしないよ、郁人――。
【飛翔の刻~後編~】
こんなことが何時までも続くなんて思ってはいない。
それでも姉貴を近くに感じられるのなら、もうどんなカタチだって構わないと思ったんだ。
【心】が手にはいらないなら――と。
あの夜から完全にオレは壊れてしまったんだろう。
もう誰にも姉貴に触れさせたくない、姉貴はオレだけのもだと、この欲望を止めることが自分でもできなくなって、今までコントロールしてきたものがあっけなく崩れてしまった。
姉貴を閉じ込めて、オレしか映らないようにして、黒い悦楽に二人して浸ることを覚えてしまった。
何も考えることもなく――ただ姉貴とオレの二人だけの鳥籠。
でも、時おりオレに去来する苦しみ。
姉貴の哀しみに満ちた瞳、親父や母さんに偽りの笑顔を向ける瞬間。
そして、親父や母さんの『郁人に任せれば安心ね』という信頼しきった言葉を聞くたびに、ハッとしてオレはオレに戻る。
姉貴を閉じ込めてから最初に親父と母さんが帰宅した後からは、毎日のように『今日こそ姉貴を解放しよう』と思うのにそれが出来ずにいる。
姉貴の顔を見てしまうと、やっぱり手放したくないとオレはオレの闇に呑み込まれてしまう。
学園に行っている時間の多少はオレが正気でいられる間に誰かにオレから姉貴を助け出してもらおうと口を開きかけるけど、『このまま姉貴を失っても良いのか?』『あの肌を、温もりを忘れることが出来るのか?』という声がして、すぐに黒い感情のオレに支配されてどうすることもできなくなる。
さっきだってそうだ。
今日一日は【弟】でいようと決めていたのに、姉貴の怯えたような姿をみていたら呆気なく黒いオレが表に出てしまったんだ。
どうしたらオレは―――
「郁、人・・・・」
ハッとして顔を上げると、着替えを済ませた姉貴の姿があった。
襟元の紐をリボンに結んだ半分透けている桜色のシャツ、その下には胸元が蝶が象られたキャミソール、ひざ丈のシフォンスカートを身に纏っている。
姉貴が持ってる服の中でオレの一番のお気に入りのもので、まるで春の妖精のように姉貴の愛らしさを際立たせる服だ。
「あぁ、やっと来たか。ほら、とっととメシ食っちまえよ。もうすぐ親父たちが帰ってきちまうぞ」
【弟】の仮面を瞬時につけると、呆れたような表情をつくりながら壁にかかった時計を視線で指し示した。
「う、う・・・ん」
若干、引き攣ったような姉貴の表情にオレの中のドス黒いモノが顔を出してしまう。
オレの中でパチッと何かのスイッチが切り換わるかのような感覚。
今日だけは、あの日の前の【弟のオレ】でいようと決めていたはずなのに、早くも2度目の感覚が身の内を駆け抜け、自分の意思の弱さに辟易してしまう。
それなのに、自分の思いとは反対に唇を薄く吊り上げて酷薄な微笑を浮かべ始めていく。
「どうかしたのか姉貴?んな所に突っ立ってないで座れば?」
使われていなかった姉貴の席を顎で指してから、再び姉貴へと視線を戻す。
目を細めてネットリとした熱を籠めた瞳で姉貴の姿を捉え、三日月を描いている唇をチロリと舐めてみせれば、困惑した姉貴の頬が朱に染まる。
一瞬目線を逸らしたものの胸元に置いた手をギュッと握った姉貴が何かに挑むかのような強い眼差しをオレへと向けてきた。
「わ、分かってるよ!!郁人に言われなくったて座るつもりだったもん!!」
ドスドスと足音を立てながら食卓へと向った姉貴は勢いに任せたかのように椅子に座り、パンと顔の前で手を合わせた。
「いただきますッ!」
姉貴の勢いに押されたのかは分からないけど、不思議なことにスーッとオレの中の黒くてモヤモヤとしたものも霧散していく。
その光景が昔のオレたちの関係に戻ったかのように、錯覚したからかもしれない。
キッチンで姉貴と自分のカフォレを入れながらコッソリと姉貴の様子を伺ってもオレへの怯えや警戒が無いように見えた。
ついさっきまではあったはずの緊張が無くなっている。
なんでだ?
いや、何かに緊張はしているようだったけど、憑きものがとれたようなスッキリとした表情をしているんだ。
あぁ、もしかして――やっと、親父たちに告げる気になったんだろうか。
こんな莫迦げた鳥籠(独占欲)の扉が開かれるってことか。
どんな形だったとしてもやっと手に入れた姉貴を失いたくなくて我ながら最低だと思う言葉を姉貴に吹き込むことで鳥籠の扉に鍵をかけた。
鍵をかけたのは最初に親父たちが帰宅する前夜で、姉貴を閉じ込めること、独占することで頭がいっぱいでほんの一瞬でさえ正気に戻れなかった時だ。
『【家族】をぶち壊したければ――本当のコト、言ってもイイんだぜ?』
姉貴の身体を弄りながら熱の交じった吐息声で耳元に囁いた瞬間、姉貴の快感に濡れた表情が恐怖と驚愕のものへと変わったのを覚えている。
姉貴の幸せを願っていたはずなのに、今のオレは姉貴を支配して、怖がらせて、哀しませることしかできない。
もう自分では解放してあげることもできないから、姉貴が自分でこの鳥籠から逃れてくれることを祈るだけだ。
この想いを知られた瞬間、【弟】という立場でさえ姉貴の傍に居ることが出来ないと知ったときからオレは壊れてしまったんだ、きっと――だからゴメン、姉貴。
姉貴の身体の心地良さを知ってしまったオレには、アンタを逃がしてやれることは出来ない。
アンタの笑顔を、アンタの幸せを、こんなにも望んでいるのに、オレにはアンタを笑顔に、幸せにしてやることが出来ないんだ。
――だから、それで良いんだ、姉貴。
自分の力でオレの鳥籠から飛び立ってくれ。
そう祈ることだけが、今のオレがアンタに唯一出来ることだから。
手元に落としていた視線をあげれば、スッキリした表情で美味しそうにオレの作った昼食を口にする姉貴の姿が目に入る。
ふと昔のような穏やかな気持ちが生まれて、それに気づいたオレは驚きに包まれていた。
(今だけなら、オレは【オレ】でいられるかもしれない――?)
こんな感覚は久しぶりのような気がする。
久しぶりの感覚に戸惑いながらも両手に持ったマグカップを姉貴の前へと置く。
「ほら、アンタの分」
「あ、ありがと・・・ミルクたっぷりで美味しそうvv」
プレートから顔を上げて礼を言う姉貴の口端にはオレ手製の林檎ジャムがくっついていた。
「はぁー、アンタは子供かよ。口端にジャムついてんぞ」
「え、うそ!・・・・と、とれた!?」
「取れてねーよ。逆だっつーの」
親切に言ってやってるつーのに、それでも姉貴はお門違いな場所ばかりを拭っている。
「だーかーら、ココだっつってんだろーがっっ!!」
あまりな姉貴の様子に見ていてもどかしさを感じてガタリと椅子から腰を上げると、食卓越しに姉貴の口元の林檎ジャムを親指で拭ってやった。
「と、取れた?」
「『取れた?』じゃねーつーの。オレの特製ジャムを無駄にすんじゃねーよ」
「あ・・・」
眉根を寄せながら親指についたジャムを舐めたとった瞬間、姉貴の間抜けた声があがった。
「・・・んだよ」
「あ、ううん。な、なんでもない。・・・・このカフェオレ美味しいね!!」
そう言ってカフェオレを啜る姉貴の頬が微かに赤くなっていた。
「あ・・・。べ、別にこれぐらい・・・な、何でもねーだろうが。アンタが照れるからオレまで照れるじゃねーかよ」
その意味に気づいた途端にオレまで顔が熱くなってくる。
な、なんでこんな何でもないようなことで照れるんだ!?
ついさっきだって、もっとスゴイことしてたはずなのに・・・・なんで、なんでだ?
「て、照れてなんかないもん!!そ、そうカフェオレ飲んだから温まっただけだし!!」
「はぁ?アンタ馬鹿じゃねーの!?アイスカフェオレで温まるわけねーだろーが」
「あ。え、えーと、じゃ、じゃぁ・・・・」
「『じゃぁ』ってなんだよ!」
更に言い訳を探してる姉貴に呆れたようにオレがツッコミを入れる。
――あれ、なんか自然じゃね?
前回までも表面上は【姉弟】してたけど・・・今回は自然に昔の関係に戻れている気がする。
オレも、姉貴も。
もしかすっと―――
「「ただいまぁ~~」」
思考に陥りそうになっていたところに、ガチャリと玄関の扉を開ける音がした後に騒々しいほどの帰宅を告げる両親の声が上がる。
その声に現実へとオレの意識が引き戻された頃、今度はカチャリとリビングの扉が開け放たれた。
「お母さん、お父さん、お帰りなさい!!」
久しぶりの親たちの姿に、姉貴は笑顔を浮かべながら駆け寄って行く。
「奏、ただいま~~元気にしてた?」
「うん、元気だよ!!郁人が居てくれるから助かってる」
母さんと姉貴の久しぶりの親子の会話に自然と耳が傾いてしまう。
さっきは一瞬勘違いしてしまいそうになったけど、オレが姉貴にしている事実が消えるわけではないのだから。
姉貴は母さんにオレから受けている仕打ちを告げるつもりなんだろう。
(あれ・・・?)
内心では覚悟を決めているとはいえ、気になって姉貴を見ていたら気づいた。
姉貴がさっきから胸元をずっと握っていることに。
よく見れば襟元に隠れてはいるけれどキラリとした鎖が見える。
な・・・んだ?
オレはアクセサリーなんて渡していないし、そもそもオレの部屋に閉じ込めてる姉貴がアクセサリーを持ってるわけがないのに。
「――と、郁人!!」
「へ?」
ハッとして顔を声のした方へと向ければ、訝し気に眉間を顰めている親父の顔があった。
「郁人、さっきから呼んでるのにどうしたんだ?」
「あ、悪い。なんだよ親父」
「久しぶりの親に対して『おかえり』のひとつもないのか?・・・まぁいい。で、留守にしてる間なにも問題はなかったか?」
「問題・・・・」
問題ならありまくる。
主にオレに。
姉貴の再度の引き籠りなんて問題は実際には無くて、実はオレが姉貴を家に裸で監禁して、姉貴の身体を好きにしてるって言ったらどうなるんだろうな。
・・・なんて、考えるまでも無いよな。
オレと姉貴は引き離されるに決まっていて、二度と会えないようにされるんだろう。
家庭崩壊もいいところだよな。
(なぁ、姉貴。ホントはさ、姉貴じゃなくてオレが――【家族】をぶち壊しちまうんだよ)
オレが姉貴を【女】としか見れなくなったから。
アンタを独占したい気持ちにセーブをかけられなくなったから。
「ん――?なんかあったのか郁人・・・」
「あ、あのね、お父さん、聞いて欲しいことがあるの!!」
親父が何か言いかけようとしたのを姉貴が遮るように大声をあげる。
あぁ、とうとう鳥籠が開かれる。
「どうしたの、奏?」
「どうしたんだ急に?」
親父と母さんの視線が姉貴へと向けられる。
オレといえば、死刑宣告を受ける前だというのに不思議と落ち着いた心持だった。
もっと苦しくて失いたくなくて足掻くかと思っていたのに、”あの時”は――。
だから気づけたのかもしれない。
姉貴がまた胸元をギューっと握っていることに。
「わ、わたし・・・・」
「うん、どうしたんだい?」
言いにくそうにしている視線を彷徨わせる姉貴に対して、親父が穏やかな口調で姉貴が言いやすいように促した。
「じ、実は・・・わ、私―――」
あぁ、これで終わる。
オレはすべてを、姉貴を失うんだ。
それでもアンタが幸せになってくれるなら、オレは――
「郁人のことが好きなの!!」
は――?
今、姉貴は何て言った?
「え、えーと、奏?それは弟して・・・・」
「違うの!!弟じゃなくて・・・あの、お、男の人として」
姉貴が男としてオレを好き――?
そんなわけ・・・・
「奏、本気なの?」
「うん、本気だよ」
「うそ、だ。好きなのはオレの方だろ!!アンタは・・・」
「ううん、私も郁人が好きだよ」
穏やかなほどの姉貴の微笑みがオレへと向けられ、姉貴の黒曜石のような瞳が真っ直ぐにオレを映す。
その真剣な眼差しで姉貴の言葉が真実なんだと伝わってくる。
だいたい姉貴は嘘とか苦手ですぐに表情に出るんだ。
「ば、ばっかじゃねーの!!アンタ!!なんで・・・なんでなんだよ?オレはアンタに・・・」
胸に込み上げてくるものがあって、不覚にも目頭が熱くなるのを感じる。
「郁人、聞いて!私は――」
「はい、ストッーープ!!」
興奮して言い合いを始めそうになったオレと姉貴の間に母さんが割り込んで一喝する声がリビングに響く。
その声にオレと姉貴が同時に母さんへと顔を向けると、母さんと親父はふと表情を緩めて微笑んだ。
「二人でよく話し合って、私たちに言いたいことをまとめなさい。その後で話は聞くから――郁人もそれでいいわね?」
「・・・・あぁ」
「郁人、奏。私たちは安心しているんだよ?」
「え?安心って・・・親父?」
「何があったかまでは分からないが、思ったより解決が早くて安心しているんだ――私たちは自分の子供たちを信じているんだよ」
「そうよ、答えがでるまでもう少しみたいじゃない。――てなわけで、私たちは久しぶりに日本でのデートでも楽しんでくるから、ちゃんと話し合いなさい」そう言うと、母さんと父さんはヒラヒラと手を振りながら身体を翻して玄関へと足を向けた。
暫くして玄関の扉が閉まる音がリビングまで聞こえてくる。
暫くの間、シーンとした静けさがリビングへと漂う。
先に口を開いたのはオレだった。
「さっきのアレ――どういう意味だ?」
「そのまんまの意味だよ。お、男の人として郁人が好きなの」
「だからそれが分かんねーんだよ。オレはアンタに酷いことたくさんして・・・」
「うん、おあいこだね」
「は?あいこ?オレと姉貴が?」
「そうだよ。最初に私が郁人を傷つけて・・・それで私は向き合うことから逃げた。この鳥籠は私たち二人の過ち」
「んだよ、それ!?アンタ本当に馬鹿じゃねーの!?んな簡単にオレのこと許すなよ!!」
ワケが分からなくて頭がグルグルして自然と声が大きいものになってしまう。
自分のした仕打ちを考えれば、こんな風に簡単に許されていいわけがない。
それでも、オレは姉貴の傍に居れるのか?これからも?
「許すもなにもないんだよ?なんで分からないの!?私に間違いを教えてくれたのは、勇気をくれたのは郁人なのに!!」
そう叫びながら姉貴はさっきと同じように胸元をギュと握りしめていた。
そして、スルリと服の下にあったソレを外へと出した。
「それ・・・・なんで?」
オレの目に映っているそれはペンダント型の時計だった。
前に、姉貴がジッとその時計を手に取っているのを見かけて思わずコッソリと買ってしまったものだ。
姉貴の喜ぶ表情を思い浮かべながら――けど、実際には閉じ込めている姉貴に渡すことも出来ずに宝箱に仕舞い込んだんだ。
「偶然、見つけたの。でもコレのおかでで私は気づけた。私が本当に望むもの」
「姉貴が本当に望むもの?」
「私は、郁人との未来へ続く時間が欲しい。郁人に心から幸せだと感じて欲しいの!!ね、郁人は?郁人は何を望むの?」
「オレが本当に望むもの・・・姉貴が笑っていて、幸せになって欲しい――オレが姉貴を幸せにしたい!!」
姉貴の必死な問い掛けに心の奥底に沈みこんでいた【願い】が留めなく湧きあがり、言葉となって口から溢れ落ちる。
ドクンドクンと胸の音がいやに大きく聞こえる。
「うん――私を幸せにできるのは郁人だけなんだよ。一緒に鳥籠から飛び出して、止まってしまった私たちの時間を再び動かそう?」
姉貴の唇がそっとオレの唇へと触れた。
もっと深いキスを今まで何度もしていたけれど、純粋な心の籠ったキスは初めてだった。
オレと姉貴の唇が離れて、視線が交じり合う。
「――姉貴、愛してる」
愛しいという想いで胸がいっぱいになって言葉が震えてしまったような気がする。
「私も、郁人を愛してるよ」
そう言った姉貴の声も震えていて、でもオレの目に映る姉貴は頬に涙を伝わせながらも嬉しそうな微笑みを浮かべていた。
今度はオレから顔を近づけて頬の雫を吸うと、そのまま唇へと辿って重ね合わせた。
心の通じたキスを何度も何度も繰り返す。
想いの深さに比例して口づけも深くなっていった。
「絶対に幸せにするから――一緒に大空へと飛び立とう」
<END>
★♪後書き♪★
やぁーっと後半打ち終わったぁあああ。
な、長くなっちまったよ(汗)
なんつーか、ご都合的展開になってごめんなさい(いつものk・・・大汗)
あぁ、でも郁人x奏には幸せになって欲しいvv
今度は普通にらびゅらびゅvな話が打ちたいなぁ。
HAPPYエンド後とかGoldエンドに辿り着くまでの間とかね。
Goldエンド後もいいなぁ。。。
とにかく、郁人x奏が幸せなら何でも良いよvv
ではでは、ここまでお読みいただき有難うございました!!
【R18】飛翔の刻~前編~(黒郁人x奏)
郁人が、郁人がぁああああ!!!!
奏が大好きな郁人が好きだぁああvvvv
・・・・と、のっけから叫んでスンマセン。
R18乙女ゲー『黒と金の開かない鍵。』の義弟・郁人がステキ過ぎるvv
家事全般オールOK、頭良し、運動神経良し、イケメン君、義姉・大好きなシスコン(笑)vv
もう、この子、カッコカワイすぎるっ!!
中の人の演技も声もスッゲー好みだわぁvv
黒郁人のワントーン低い声が超絶カッチョイイしvv萌えるしvv
つか、中の人は何ていう方か、気になって妹に表名を聞いたら・・・・・うぇえええーーー!!マジか!!
コルダ2の・・・・、ルシアンの・・・・、そ、そうだったんだぁ。
ゴメ・・・全然興味なかったキャラだ(汗)
ところで、主人公の奏もカワエエなぁvv・・・元引きこもりだけどvv
あぁもう、義弟とくっついてしまえば良いと思うよ☆
さてさて、てなわけで、郁人x奏の初SSになります。
(SSつか、前編なわけですが。)
Blackエンド後のお話なので、もちR18!!です。
コンセプトは、Black経由のHappyエンド!!
でも、前編はちと暗いっす。
18歳以下の方や学生さん、監禁エロが苦手な人とかは回れ右してくださいね。
ではでは、エロもオールOKな大人の女性で郁人x奏が好きな方は『読んでみる?』からドウゾ。
▼読んでみる?▼
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壊してしまえば楽になれると思った。
失うぐらいならすべてを閉ざしてこの欲望に忠実になってしまえば、と。
瞳も耳も、心も、【願い】さえも塞いで闇色に染まった夢にたゆたうように身を任せる。
身に燻ぶる熱に浮かせながらもツキンと感じる痛み。
気のせいだと、気づかないフリを続けながら――大空へと飛びかけていたその翼を手折り、どこにも行けないように、”オレ”という檻に閉じ込める。
そしてオレも―――外では、壊れた心を”今までのオレ(偽り)”で隠し、飛ぶことを忘れた。
【飛翔の刻~前編~】
熱い吐息が絡み、喘ぎ声が部屋の中に響く。
ギシッ、ギシッ――とベットが軋む音が耳を刺激する。
身体を揺さぶられる度に、縄で拘束された腕や足くびが微かにヒリヒリとした痛みを訴える。
けれどそれは、まだ明るいうちから組み敷かれ灼熱の熱に浮かされている身体には甘い痛みにしか感じない。
夜の闇が部屋を包み込んでも飽くことなく重ねられたまま。
それは二人だけの世界――誰にも邪魔されない、二人だけの。
それを望んだのは私?
それとも郁人?
或いは私たち二人が望んだことだったのかな?
たった二人だけの空間で繰り返される交わり――思考を奪われ考えることも出来なくなって、ただ郁人が与えるものだけが私のすべて。
狂気のまま苦しみのまま身体が繋がってしまったあの夜、私の感情も、郁人の感情も壊れてしまった。
だからきっと、気のせいなんだと思う。
私の心が哀しげな悲鳴をあげているのも、郁人の瞳に悔恨の色が瞬間的に浮かぶのも。
眦に滲む涙は、今を悲しむじゃなくて生理的な涙なんだろう――。
身の内を突き抜ける強い快感がもたらす情欲の涙。
「――っ、ぃぁあああ、んっ!!」
「くっ、はぁ、あ、ねき」
身体の最奥を彼の滾った肉杭で突かれる度に、只管に喘ぎを漏らしながら厭らしく襞を簸つかせて絡め取るように締め付けてしまう。
自分の蜜と彼の放った白濁が膣の中で混ざりあってクチュクチュと音を立てているけれど、私の意識はそれをどこか遠くのことのように感じている。
身体を情欲に満たされるのは今の私にとっては【日常】でしかないのだから。
一糸纏わぬ裸体のままベットに縄で括りつけられ、昼夜問わず秘処に卑猥なおもちゃや彼のもので犯され続ける。
彼の思うままに一糸も纏わない身体を弄られ、穴という穴を犯されるのが【日常】。
私はそれを従順に教授する。
私の鈍感さが、甘えが、彼を、私を壊してしまったのだから。
だから、二人だけの世界で郁人が与えるこの甘苦しい【罰】を教授するのが私の【償い(望み)】。
けれど【月に一度の日】だけ、二人だけの世界は為りを潜めることになる――。
「はぁっ――、もっと、姉貴が欲しいっ・・・っ明日は――だか、らッ」
「んっ・・・あぁ、い、くと――」
「くっ、もっと、姉、貴はオレの、オレだけ、の、モノっ、ふっ」
何度何度もグラインドさせながら、郁人の手が乳房を荒々しいほどの手つきで揉みしだく。
ツンと固くなった桜色の粒は、彼の口内に含まれて舌でレロレロと舐められたり突かれたりされ、もう片方の粒は指先で掴まれてクリクリと捏ねては時おりキュっと引っ張られ甘痛をもたらされる。
「んぁっ、いやぁあああ、く、とぉーーおお」
「まだ、だっつーの・・・まだ、足りなっぁ、アネ、キぃ」
「んんっっ――も、もぅ、ううっっ」
私は身体が火照って頭がボーっとして、何も考えられなくてただ郁人が与える快感だけを追う。
郁人のソレが私の中でピストンを繰り返しながらある個所を掠めるている。
「くっ・・・も、イクッ――!!」
お腹の中を打ち続けていた郁人のソレが大きく脈動したのを感じたのと同時に、白濁が恥壁を叩き付け、雷に撃たれたように受け入れがたいほどの快感が身体の底から脳へ瞬時に突き抜けていく。
「――っっぁああああんんっぅ」
空へ突きだされた郁人の顎先から汗がポタリと滴り落ちて私の肌を濡らす。
私も肌に汗をじわりと浮かせながら背を弓なりに仰け反り、つま先をピンっと伸びした。
そして、厭らし私の下の口は郁人のソレを未だに捉えて離さないかのようにギュっと締め付けている。
「っぁ、すっげー、姉貴、の下の口、はぁ・・・オレの、美味そうに食ってるっ」
「ぁっん・・・・」
「ひくついて・・・マジ厭らしいの、な」
「や、ちがぁっ・・・」
「違わねーつーのっ」
胸を上下に揺らして荒い息を吐きながらも、私の中で郁人の肉棒がみるみるうちに存在感を示してくる。
「まだ寝るなよ、姉貴っ――まだ、明日の分があるからな」
壮絶なほどの快感に視界が真っ白に染まり意識が遠のいたけど、郁人がそれを許してはくれない。
明日は身体を繋げることができないから、と、この後も途切れることなく激しく身体を貪られることになった。
―――そう、明日が【月に一度の日】だった。
その日だけは表面上だけとはいえ、私と郁人が【姉弟】の関係に戻れる唯一の日――海外転勤している両親が帰宅する一時。
私と郁人の何かが音を立てて崩れていったあの日から、私たちの関係は暗い闇へと堕ちていってしまったけれど、この日だけは僅かとはいえ私が闇から意識を浮上させることのできる日なのだ。
===
数時間前までの淫蕩とした空気が嘘のように、部屋には陽の光が差し込み爽やかな朝を知らせている。
そして、久しぶりに腕や足からは縄が解かれ、衣服を身に纏うことが許されていた。
あと数時間もすれば、両親が帰ってくる時間だから。
シャワーを浴びてサッパリとした身体にバスタオルを巻いた私は、郁人のベットの上に座りこみながら郁人が私の服を持って来てくれるのを待っていた。
暫くすると、ガチャリと扉が開かれる。
「ほら、姉貴の服」
「あ・・・うん」
乱れたままのベットの上で縄の跡が付いている腕を摩っている所に、郁人が私の服と下着を手にしてやって来た。
腕の縄跡へと手を添えている私の姿を視界に捉えた郁人の表情が僅かに苦しげに歪められたように感じたけれど、一瞬のことで見間違えだったのかその表情にはほの暗い微笑みしか刻まれてはいなかった。
気のせいだったのか、と思いながら郁人の手から私は着替えを受け取ると、真っ白なレースをあしらったブラから付け始める。
「―――っ」
郁人の飴茶の瞳が私をジッと見つめているせいで、手が震えて中々ホックを留めることができない。
私が戸惑っていると、郁人の呆れたような声がかけられる。
「アンタって、ホント不器用だよなぁ」
唇を薄く持ち上げて意地の悪い笑みを浮かべながら、郁人は私へと近付いて来た。
ベット脇まで来ると、私の背後にまわるようにしてベット淵へと座り、ブラのホックへと手を掛ける。
郁人の器用な指先が軽々と金具を留めていく。
「っぁあ!!」
けれど、それで離れると思った指先は離れていくことなく私の肌をなぞりながら下肢へと向かっていき、まだショーツで覆われていない私の秘処へとツプリと指を挿入してしまった。
「親父たちの前では【弟】でいてやるよ――表面上は、な」
「ふぁっ・・・いく、と」
郁人の指が肉芽を掴みクリクリと弄った途端に、私の蜜壺は蜜で溢れ始めてしまう。
「あぁ、少し弄っただけでこんな蜜漏らして、物足りなさそうに下の口パクパクさせて――ホント、姉貴は食いしん坊だよな」
瞳を細めてクっと笑いを漏らすと、私の蜜で濡れた指先を自分の口元へともっていき含む。
私に見せつけるように、音を立てて舐める姿に私の頬が羞恥で赤く染まった。
「なぁに、赤くなってんだよ。ホントのことだろう?いつもオレのを咥えて離さねーもんなぁ」
「ぃぁっ・・・」
幾分か意識がハッキリしている時に向けられた卑猥な行為と言葉に、私は居たたまれなくなってキュッと目を瞑って俯く。
「まぁ、いいけど――メシの支度するから着替えたらリビング来いよ、姉貴」
私たち二人の間に沈黙が落ちたかと思った次の瞬間には、郁人のぶっきらぼうな声が耳へと届けられる。
それは、私たちの関係が変わる前の、口は悪いけど優しい【弟】の声だった。
郁人の姿がリビングへと消えていくと、私の身体からふと力が抜けていく。
身体がよろけて本棚へとぶつかり、その衝撃で何かが床へと落ちてしまった。
カチリ――。
それは、金色の蔦の飾りをあしらったアンティーク調の黒い箱だった。
前に一度見たことのある――私が郁人にあげたものが仕舞われている箱。
「あ・・・」
このままにしておくわけにもいかず、元の場所に戻そうと手をのばしたのだけど、落ちた衝撃のせいなのか蓋が開いてしまっていることに気づいた。
中を見ると、前に見たのと同じように郁人が家に来た時にプレゼントしたマグカップや私の書いた買い出しメモとかが入っていた。
そして私は、もうひとつ気づいてしまった。
箱の隅でキラリと光ったものがあった。
それは、以前に箱の中身を見たときには無かったもので、でも見覚えのあるものだった。
そっと落とさないようにそれを手に取って全体像を視界に捉えた瞬間、大きく見開いた私の瞳から涙が溢れだす。
「これ―――」
それは、ペンダント型の時計。
羽をあしらったクリスタル球の中に文字盤があり、その中心の時間を示す針は鍵の形をしている。
ありそうで無い珍しいデザインのペンダント時計は、一目惚れしながらも諦めたものだ。
いくら可愛くて、私好みでも、部屋から出ることのない私には必要のないものだったから。
手にとってジッと見つめていたソレをすぐに元の場所に戻した。
その出来事があったのは――前に両親が帰って来たときのこと。
つまり、すでに私たちの関係が壊れた後の出来事だった。
「郁人―――」
針の止まった時計を握りしめながら、私は静かに涙を流し続ける。
何で郁人がこの時計を持っているのかは分からない。
でも、もしかしたら本当は、今も郁人は郁人のままなのかもしれない。
口は悪いけど本当は誰よりも私に優しくて、大切にしてくれる郁人――。
「ごめ、んね、郁人――」
小さな呟きは涙で震えてしまっている。
「私、私は・・・・・」
あぁ、やっと分かった。
自分の気持ち。
そうだ、私にはやらなくちゃいけないことがる。
考えることを放棄して郁人に流されることで償うとか、そんなの【逃げ】だ。
こんなのは【償い】なんかじゃない。
私が心から望んでいるのは、郁人の幸せ―――。
暗闇の中の二人だけの世界なんかじゃなくて、陽の光の中で二人笑顔で進んでいける世界だ。
私と郁人の時間をもう一度動かす努力をしよう。
壊れたのなら、また重ね合わせて治せばいい。
「私、もう逃げないよ――郁人。だから、もう少しだけ待っててね」
今日というチャンスを逃したりしない。
これ以上、郁人を苦しめたりなんて出来ないから――。
<to be continued...>
★★書き★★
はい、初・『黒金鍵』の郁人x奏SSでございました。
つか、まだ前半だけどね(汗)
しかも、Blackエンドからの話なので、暗エロ・・・・(大汗)
あーー、疲れた。
でもね、でもね、救われねーBlackエンド経由のHappyエンドがやりたかったのですよ!!
てなわけで後編はハッピーに向って進んで行きます!!
だって、郁人が好きなんだもん!!奏が好きなんだもん!!
この二人にはラブラブハッピーになって欲しいのよ!!
・・・黒郁人も好きだがな。
では、ここまでお読みいただき有難うございました!!