【幸福たる終焉は新たな幸福の始まり】沖田x千鶴
えーと、幸せ感を目指した死ネタ?(なんじゃ、そりゃ;)
と、とにかく、沖田グッドエンド後の死ネタです。。。
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あぁ、心地好い風がそっと肌を撫でる。
力が入らなくなった手には君の温もりだけを感じる。
ねぇ、千鶴。
僕はね、想像もしていなかったんだ--
こんな暖かな想いを纏って最後を迎えることができるなんてさ。
僕が死を迎える場所は戦場なのだと思っていた。
僕には夢があった--
それを叶えるために必要であるならばと、僕は僕を殺した。
余計な感情なんて邪魔なだけだから。
敵を残さず殺すことが出来るのならば、それで本望だと思っていたんだ。
誰かに看取られることも無く、骸の山の中が僕の死に場所になるのだと-。
けれど、病に倒れた僕にはそれさえも叶わないのかと、今までの自分が否定されたような気がした。
”新選組の剣”になれない僕なんて、役立たず以外の何物でもなくて存在する意味もない。
その想いが強かった僕は、甘美たる”闇”の言葉に耳を貸した。
その言葉の裏に何かあると知っていながら、僕は”変若水”に手を伸ばした--。
それが君を悲しませることになることも知っていた。
その時の僕には、”新選組の剣”になること、”君を守る”ことができるなら、闇にこの魂を売り渡すことに迷いなんてなかった。
僕は”鬼”になることを選んだ。
それが、偽りの”鬼”なのだとしても。
守るべきもののために、紅く彩られた闇、羅刹の道を選らんだ--
はずだったんだけどね。
それが、こんなにも”幸せ”に包まれながら、君の温もりを感じながら逝くことができるんだから、人生って分からないよね。
「千鶴、ありがとう・・・」
「総司さん?」
僕は首だけを外へと向ける。
すると、千鶴も開け放たれている障子の外へと視線を向ける。
「空が綺麗だね」
「・・・そう、ですね」
「あぁ、ほら、そんな泣きそうな顔しないで?」
「な、泣いてなんていませんっ!!」
「あはは、本当に千鶴は嘘が下手だよね」
懸命に涙を我慢しようとしている様子がありありと伝わってくる。
僕の手を握る手に僅かに込められる力、震える声。
「僕は幸せだよ」
視線を千鶴へと戻すと、殊更ゆっくりと告げる。
僕の想いが永遠に千鶴の中へ残るように祈りながら--
「だってさ、こんなにも僕の好きなものに囲まれて逝けるなんて幸せの何物でもないと思わない?綺麗な空、僕の愛する妻の笑顔・・・ね、僕って幸せ者でしょ?だから、笑顔を見せてくれないかなぁ、千鶴?」
「わ、私だって幸せですよ!総司さんの奥さんになれて、貴方に愛されて・・・夢なんじゃないかと思うほど、幸せ・・・です」
僕の願いどおりに笑顔を浮かべようとしてそれに失敗する様に僕の心は震える。
千鶴がそれほどに、心の底から僕を愛してくれ、僕を喪うことを悲しんでくれているのが分かるから・・・。
「ん、ありがと」
ただ一つ心残りがあるとしたら・・・これから先の君を幸せにできるのが僕じゃないことだ。
せめて君の心には僕が在ることを望んでしまう僕は残酷なのだろう。
君の幸せを願うのに、君を悲しませてしまう。
そんな矛盾を抱えながらも、僕は幸せを感じてしまうんだ。
「ね、千鶴。僕は千鶴の幸せを願っているよ。だから、もし君を幸せにしてくれる人が現れたら--」
「そんなこと言わないでくださいっ!!私を、私を幸せに出来るのは総司さんだけなんです。私が総司さんを想い続けることを許してくれないんですか?」
「・・・本当に君って。僕を幸せにする天才だよね」
「え?」
「僕を想い続けてくれるの?」
「もちろんです!!」
千鶴の答えは分かっていた。
千鶴ならこう言ってくれると分かっていながら、僕は意地の悪い言葉を告げたんだ。
それは、僕の悪あがき。
千鶴の魂の奥底まで僕という存在を刻みつけたかった。
僕は虎視眈眈と、千鶴の心深くまで僕が刻み込まれるように過ごしてきた。
そして、これは”仕上げ”だ--。
「じゃぁさ。もし、再び、違う時代に生まれ変わったら、僕のお嫁さんになってくれる?・・・今度こそ、永遠に幸せに出来るのは僕でありたい。」
「!!」
その言葉を告げると、大きな瞳に涙を溜めながらも、千鶴は嬉しそうに笑みを浮かべる。
もう一度、僕は同じ言葉を告げる。
「来世でも僕のお嫁さんになって。絶対に幸せにするよ」
「はい、私を貴方のお嫁さんにしてください--」
「よかった・・・・」
千鶴の了承の答えに安堵しながら、僕は瞳を閉じた。
それは、僕にとって幸福な終焉だった--。
【了】
‡‡後書き‡‡
相変わらず残念な感じで申し訳ありません。
切ない話にしようとして失敗しましたORZ
でも、死の間際でありながらも”幸せ”を感じてもらえたら良いなぁーと思います。
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<おまけ>
心地好い風を感じながら眠っていた僕は、幸せな夢を見ていた。
最後の幸せな瞬間を--
眠りが浅くなっていた僕の耳に、ガチャガチャと扉を回す音がする。
きっと、あの娘だろう--
僕があの娘をここに呼び出したんだから。
律義なあの娘は必ず来ることも分かっている。
耳を澄ませ、徐々に足音が僕へと近づいてくるのを感じる。
それでも僕は眠ったフリを続けた。
横たわっている僕の側へと座る気配があった。
「沖田先輩、寝てるんですか?・・・沖田せんぱーーい」
遠慮がちに僕の肩を揺すぶりながら僕を呼ぶ声。
そんな様が可愛らしくて、僕はもう少し眠ったフリを続けることにした。
けれど、僕を起こすことを諦めたのか、しばらくの沈黙がつづく。
「・・・総司さん」
いつもと異なる呼び名。
切なそうな声色に僕の心は期待に震えた。
そして、ふいに僕の頬にすぅーと何かが触れた。
「暖かい・・・よかった」
それは、僕が生きている証を確認し安堵したように聞こえた。
もしかして・・・という期待が心の中を駆け巡るなか、徹底的な言葉を耳にする。
ボソと告げられたその言葉を聞き逃さなかった自分を褒めたいと思う。
「私を、・・・にしてくれるんじゃなかったんですか?」
あぁ、僕の悪あがきは成功していたんだ。
自然と僕の口元には笑みが浮かぶ。
「じゃぁさ、僕のお嫁さんになってくれる?」
「そっ・・・沖田先輩、起きて・・・!??」
僕は身体を起こすと、千鶴へと顔を寄せる。
「ね、どっち?」
「え、あの・・・?」
「だ・か・ら、僕のお嫁さんになってくれるの、くれないの?」
「総司さんも・・・記憶が?」
「ね、千鶴。僕はプロポーズしてるんだけど?」
「ぷ、ぷろぽーずぅぅ!!??」
「答えは分かってるけど、ちゃんと君の口から聞きたいからね」
「あ、あの、その////」
きっと突然のことにパニックを起こしているであろう千鶴を落ち着かせるように、あの時と同じように殊更ゆっくりとその言葉を告げる。
「もう一度言うよ。僕のお嫁さんになって。永遠に君を幸せにするよ、今度こそね」
「っ!!!・・・はい、私を総司さんのお嫁さんにしてください」
その答えに安堵しつつ嬉しさと幸福感に包まれた僕は、千鶴を愛しく想いながら笑みを浮かべた。
彼女も、その瞳に涙を浮かべながら笑みを称えていた。
あぁ、僕以上の幸せ者はいないと、本気で思うよ。
これからは、二人で幸せになろうね。
【おわり】
<おまけのおまけ>
「そういえば、私、沖田先輩とは、その、えと・・・お、お付き合いとかしていないのに、急に”結婚”とかいったら、親が驚きますよね・・・」
「あははは、大丈夫だよ。すぐに結婚とかそういうことじゃないし。僕も今はしがない高校生だしね」
「そ、そうですよね!!!!やだ、私ったら////」
「まぁ、僕としてはすぐにでも結婚したいけど・・・今度は色々と周りがあるから確実に抑えていかないといけないよね。特に、薫とか薫とか薫とかぁ・・・。」
「そ、総司さん??」
「あぁ、なんでもないよ、ごめんね。しばらくは結婚前提のお付き合いって感じでどう?」
「は、はい///(うぅー、改めて言われると恥ずかしいぃー)」
【終わっとけ】