藤堂平助の純情~お誘い編~(平千)
理空・初の平千SSでございます。
一応ほのぼのな話のつもりです。。。
実は、友人からのリクエストです、平ちゃんで!という。。。
これからは沖千以外も増えていくかも・・・?
が、自分でも分かっていないという事実。
・・・なにせん、理空の脳内を占めているのは99%沖千だから(笑)
沖田以外で話を考えようとしても、思いつくのは沖田ネタばかりだったし。
・・・ここらへん正直だなぁ、自分。
だが、しかし。
平ちゃん書くのも楽しかったわぁ~~。
▼読んでみる?▼
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いつも明るく元気の良い彼にしては珍しく、緊張した面持ちである部屋の一歩手前までの通路を行ったり来たりと繰り返している。ある意味怪しい行動をとっているのは、新選組幹部であるはずの藤堂平助だった。
それにしても彼はここでどれほどの時間を費やしているのか――
再び目的の部屋の一歩手前まで来ると、平助は大きく深呼吸をして僅かに熱を持った手の中で握られている紙切れに視線を留めた。
「許可を貰ったとはいえ・・・アイツ喜ぶかなぁ」
そう呟くと、空いている方の手でパチンと頬を打ちつけて再度深呼吸することで気合を入れる。
「・・・・よっし!!」
気合の言葉と同時に目的の部屋の襖が開かれ、目的の人物の横顔が視界に大きく入り込む。
気合を入れたとはいえ、不意打ちだったためか彼の口からは間抜けたような声しか出なかった。
「あっ」
「っ!?・・・・平助くん?こんな所でどうしたの?」
平助の目的の人物は、この新選組の屯所内唯一の少女・千鶴だった。
――表向きは男ということになっており、その事実を知るのは幹部のごく一部だ。
千鶴は大きな瞳を瞬かせ、首を僅かに傾げている。
その白く滑らかな頬に手触りの良さそうな黒く艶やかな前髪の毛筋がかかる。
男の格好をしているというのに愛らしい姿に平助は、うっと息を飲むように言葉を詰まらせてしまう。
「えっ・・・・あー、その、なんつーか・・・」
「平助くん?」
あらぬ場所に目を泳がせながら言いよどむ平助に、千鶴は更にパチリと瞳を瞬かせながら平助を見つめた。
目を逸らしていても自分を見つめている気配は嫌でも感じてしまう。
その視線に耐え切れなくなったのか、平助は己の目をギュッと瞑りながら握り締めた手を千鶴の前と差し出した。
「これっっ!!」
「え?」
だが、千鶴の戸惑ったような声色に差し出した手を力なく落とした。
千鶴の顔を見ることもできずに、自分にも言い聞かせるかのような言葉を口にする。
「そ、そうだよな、急になんて迷惑だよな!!はははは・・・ごめんな?」
声量だけは大きいが、その言葉にはなんの抑揚もない。
ついでにいえば、笑い声も乾いたようなぎこちないものだった。
無理しているのが思いっきりバレバレである。
「え?・・・あ、そうじゃないの!!」
平助の無理した様子に千鶴も思わず大きな声をあげると、その声に平助は咄嗟に千鶴の方へと顔を向けていた。
「そうじゃないって・・・千鶴?」
「・・・えと、迷惑とかじゃなくて・・・あの、手がどうかしたの?」
「へ?・・・手?」
おずおずと言葉を紡ぐ千鶴に今度は平助が意味が分からないというように千鶴をジッと見る。
「だって、急に手を私の前に突き出したから・・・手がどうかしたのかな?って・・・」
「え・・・・・・・・あっっ!!!!」
千鶴の言葉にやっとつい先ほどの自分の行動を思い出したのか、急激に脱力感を感じる。
緊張していたせいとはいえ、確かに重要なことを何一つ伝えてなどいなかった。
ただ握った手を差し出しただけ。
確かに、それだけでは意味が分からないだろう。
ヘタヘタとその場に座り込むと同時に安堵していた。
「な、なんだぁーーー」
「どうしたの、平助くん??」
慌てた様子の千鶴に、何でもない、と告げながら気を取り直すと再び立ち上がり握っている手を差し出した。
手の力を抜いて開くと、そこには握り締めたせいでクシャクシャになった二枚の紙きれが存在している。
「あー、悪りぃ、クシャクシャになっちまったな」
「これは?」
「今人気のある芝居小屋の券なんだけどさ」
「芝居?」
「あぁあ・・・な、なんか人気あるみたいでさ、ちょっと気になってたんだ、一人で見ても味気ないだろ、だから一緒にどうかなって思ってよ?」
顔を赤くしながら言い訳のように言葉を並び立てる平助に、千鶴はふいに小さな笑い声をこぼした。
「ふふふ・・・」
「な、なんだよ、何が可笑しいんだよ!?」
「あ、ごめんね。なんだか平助くん一生懸命で・・・・」
途中で言葉を止めて平助を見つめる千鶴の頬にも僅かに朱がはしる。
(男の人に可愛い、なんて・・・怒るよね?)
「な、なんなんだよ、千鶴!」
「ううん、なんでもない」
「・・・ふーん、まぁいいや・・・で、いいのか?」
「え?」
「だから・・・千鶴、一緒に芝居小屋に観に行こうぜ!ってことだよ!」
叫ぶようにやっとこ意味が明確な言葉を千鶴へと向けた平助に対してキョトンとした表情を浮べる千鶴の答えは――
「私?」
という、まぬけたものだった。
そんなところも可愛いと思ってしまう平助は重症だろう。
「お前以外に誰がいるんだよ!今、俺の目の前にいるのはお前だけだろっっ!!」
「あ、そ、そうだよね!・・・でも、私でいいの?」
「あ、当たり前だろ!!」
力強く断言をした後、チロリと斜め下へと視線を外すとポツリと本音を吐露する。千鶴本人にはまだ言えない本音を。
「・・・・千鶴と行きたくて色々頑張ったんだし・・・」
その小さな声は千鶴の耳には届いていなかったのかそれには触れずに、平助の誘いに答えを返そうとしたが、ある事実に気づいて残念そうに瞳を伏せた。
「平助くんのお誘いは嬉しいけど、勝手に外に出れないから・・・」
「そ、それなら大丈夫だって!!」
「え?」
「土方さんの了解はちゃんと貰ってるから!」
「そう、なの?」
「あぁ!!」
千鶴の回答を緊張しながら待つその時間は平助にとって永く感じられた。
実際にはごく僅かな時間だったのだが。
平助の喉がゴクリと鳴る。
「私でよかったら・・・一緒させてもらうね」
千鶴の満面の笑顔とともにもたされたのは平助が待ち望んでいた答えだった。
平助の身体の中に一気に喜びが駆け巡る。
(よっしゃぁあああーーー!!!)
心の中だけで喜びの雄叫びをあげると、ウキウキとした様子で約束を取り付けていく。
「今度の俺の非番、明日だから!絶対な!」
「うん、楽しみだね」
本当に楽しみなのだろうことが伺える千鶴の笑みに平助は満足しながらその場を後にした。
(土方さんに交渉して良かったぁーー。・・・まぁ、面倒くせー仕事押し付けられちまったけど)
それでも、面倒な仕事と引き換えに手に入れた千鶴との逢瀬は平助にとってはかけがえのない貴重なものだろう――。
・・・・まぁ、邪魔が入らないことを祈ってあげよう。
【終わり】
☆♪後書き♪☆
初の沖田さん以外カプ~~ですたい。(どこの言葉だ)
実はこの話は友人に平ちゃんをリクエストされたために生まれたのです・・・。
・・・何だか続きそうな雰囲気だ(笑)
○○編と題うっているあたり続く雰囲気をもろに丸出しだけどね。。。
では、お読みいただき有難うございました!