偽りに隠れた真実(4)
今回は千鶴視点です。
そして、何故かシリアス路線に・・・(汗)
最近、私の頭の中ではシリアスばかりが展開されてしまいます。。。
コメディ系が書きたいのにぃいいいいい!!!!!
まぁ、いいです。
かろうじて冒頭と最後はこのシリーズのノリにもっていったんで。
▼読んでみる?▼
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今日は昼の巡察に同行させてもらえる日。
一番組みの皆さんに同行させてもらうのも何度目かのことなんだけど・・・。
隊士の皆さんの視線が痛いです。
そうですよね、普通は”不自然”ですよね?
「あ、あの、沖田さん・・・」
「ん、何?」
うーー、”何?”じゃないんですがぁ~。
沖田さんが気づいてないわけないですよね??
一番組みの皆さんの視線に。
「あの、手を離していただけると・・・」
「だぁめ。さっきも言ったでしょ。君は危なっかしいから僕から離れないでねって。前にも勝手に走って行って斬りあいに巻き込まれたでしょ」
「う・・・そうですけど。でも・・・」
確かに事実なだけに否定ができないど、仮にも私は”男”として通っているわけで。
いくら私がまだ”少年”で危なっかしいからと言っても、隊士の皆さんや町人の方々の目には奇異に映るのでは・・・。
そう思った私は、再び沖田さんの方へと視線を向ける。
すると、沖田さんは困った様な笑みを口元に刻み、小さな溜息をつくと私の耳元でこう囁いた。
「ねぇ、千鶴ちゃん。周囲なんて気にしないで、僕だけを見て?」
沖田さんはそれだけ告げると、すぐに顔を離して正面を向いてしまう。
私といえば、火照り始める頬を隠すように地面へと視線を下げた。
けれど、私は”怖い”と思った。
沖田さんが私に優しい視線を向けてくれるのは・・・甘い言葉をくれるのは、あの”ホレ薬入り金平糖”のせいなのに。
沖田さんの本心じゃないって分かってるのに、私はこんなにも反応してしまう。
効力が切れて沖田さんが元に戻ったとき、私が元に戻れるのか不安になる。
『僕だけを見て?』
・・・出来るわけないです。
だって、アナタが私の総てになってしまったらアナタが私を見てくれなくなったとき、私はどうやって立ち直ればいいんですか?
「うわぁあああん」
微かな子供の泣き声が聞こえたような気がして私は、思考を止めて顔を上げて泣き声の方へと視線を向けた。
すると、浪士が子供に向けて刀を抜こうとしている姿が映った。
泣いている幼い女の子を庇って、女の子のお兄ちゃんらしき男の子が懸命に浪士をにらみつけている。
『千鶴は僕が守るんだ!!』
『うわぁあん、・・・るお兄ちゃん・・・』
目の前の光景が私の中の何かの光景と重なる。
恐ろしいほどの形相の大人から私を守ろうとしてくれた小さな背中--
「あ・・・やめて!!」
考える間もなく、沖田さんの手を離した私は子供達へと向かって走り出していた。
「千鶴ちゃん!!??」
背後から沖田さんの驚いたような声が聞こえたけれど、私の目には子供達の、私を守る小さな背中しか見えてはいなかった。
「やめてっっ!!!」
振り上げた刃が陽の光で反射を受けている。
咄嗟に差していた小刀を鞘から抜いて子供達の前に立ち、その刃を受け止める。
「なんだ、このガキが!!」
「こんな幼い子供に刀を向けるなんて僕が許さない!!」
「ふん、許さなかったらどうだっていうんだ」
「そんな小刀で俺達に勝てると思ってるのか」
「・・・っ」
正直、自信はない。
でも、この子達を助けたいという思いで私はそこに立っていた。
再び刀が振り下ろされる。
受け止めようとしたけれど、今度はさっきよりも力を入れられていたために受け止めきれずに私は地へと倒れこんでしまった。
「終わりだな、まとめて始末してやる」
その声が鼓膜へと響いた瞬間、私は子供たちへと覆いかぶさっていた。
あぁ、本当に私は弱いなぁ。
こんなんだから、私は沖田さんにも”斬るよ”って言われちゃうんだ。
それなのに、いつも私を助けてくれる。
何でなんですか、沖田さん?
薬のことが無くても私を・・・
「誰が終わり?僕には君達の方が”終わり”に見えるけど?」
「なっ!!」
子供達を抱いたまま顔だけあげると、そこには水色の羽織を着た逞しい背中があった。
そして、その背中の向こうには焦りの表情を浮べた浪士たちの姿。
その足元には刀が転がっている。
浪士から視線を離さないまま沖田さんが私へと声をかけてくれた。
「大丈夫だった?千鶴ちゃん」
「・・・は、い」
その声に、その背中に安堵した私の視界は徐々に歪んでいった。
そして子供達も助かったことが分かったのか、私達は一緒になって嗚咽をあげていた。
その間に一番組隊士の皆さんもやって来たようだった。
沖田さんは彼らに浪士たちや子供たちのことを任せると、私の元に駆け寄ってきて痛いほどの力で私を抱きしめた。
「勝手なことしたら”斬るよ”って、いつも言ってるよね、僕」
「うぅ・・・はい。・・・ご、めんな、さい」
「そんなに僕に斬られたいの、千鶴ちゃんは!?」
いつもと違うその声色から沖田さんが私を心配してくれたことが分かった。
そして同時に何か違和感を感じたのだけれど、それが何なのか思い当たらなかった私はまだ混乱していたこともあってあっさりとその思考を流してしまった。
沖田さんは”いつもと同じ”言葉を言ったのに。
しばらく黙っていた沖田さんは何かに気づいたかのように、腕の力を抜いて身体を離して私の身体を確認するかのように視線を動かした。
「・・・・・怪我はない?」
「はい、たいしたことないです。倒れたときに手の甲に擦り傷をつくったくらいで・・・」
「ちょっと見せて」
「いえ、大丈夫で・・・」
沖田さんは私の手をとると、自分の口元へと近づけた。
次の瞬間には、手の甲に熱くて濡れた感触を感じて私は思わず声をあげていた。
「ふぇええええ!!!?お、沖田さんっっ!!??」
「なに?」
「いえ、な、何を!?」
「消毒」
「しょっ!?い、いえ!そ、それほどの傷じゃ・・・」
傷から口を離した沖田さんは、そこをジッと見つめたままポソリと言葉を発した。
「・・・どうすれば、君を僕にずっと縛り付けることができる?」
「え?」
「手を握るだけじゃ、君はすぐにどこかへ行ってしまうでしょ?」
「沖、田さん?」
「ねぇ、千鶴ちゃんは”僕”を壊したいの?」
「どういう・・・」
その言葉の意味を確かめようとしたけれど、隊士さんたちの声によってそれは遮られてしまった。
「あの・・・お邪魔して申し訳ありませんが沖田組長、捕縛完了しました」
「・・・そう。じゃぁ、屯所に戻るよ」
「はい!」
屯所へ帰る途中。
私は隊士さんたちの視線を背中にヒシヒシと感じていた。
「あのぉー、沖田さん・・・」
「うん、駄目」
「・・・私、まだ何も言ってませんが」
「うん、予想はついてる」
「では、この手を・・・」
「だから、だぁめ。さっきの忘れたとは言わせないよ?」
「うっ・・・。せめて、繋ぎ方をさっきのに戻してください!」
「それも、だぁめ」
私は一応、”男”ってことになってるんですよ?
ということは、私達は傍目からは男同士ということになっているんですよ、沖田さん?それなのに、さすがにこの繋ぎ方は・・・。
だって、これ・・・指と指を絡めて繋ぐのって、恋仲同士の男女しかしませんよ?
と、目だけで訴えると、正確にそれを読み取った沖田さんはこう続けた。
「だって、さっきのじゃ、千鶴ちゃんまたすぐにどこかに逃げちゃうでしょ。これならさっきよりはしっかり繋げるし・・・」
沖田さんは一旦言葉を止めると、妖しい笑みを浮べて私の耳元で囁いた。
「僕達、恋仲同士なんだから問題ないでしょうv」
「へっ・・・!?」
そう言いながら、沖田さんは私の手を引いて口元に持っていくと、チュと音がするほどの口づけを落とした。
「ふえぇえええええええええ!!????」
隊士の皆さんどころか、町人達の視線までもが私達に突き刺ささることになったのでした・・・。
恥ずかしくて、穴があったら・・・いえ、むしろ穴でも掘って埋まりたい心境になった今日この頃です。
【つづく】
††後書き††
あれ、途中シリアスになってる??
WHY??
しかも、ちょびっと薫フラグがたってるし。
そして、沖田狂愛フラグも立てちったORZ
何故?
あぁもう、派生させちゃおうかなぁああああ。
元は明るいだけの、巡察中に手にチュvネタだったはずなんだけど。。。
まぁ、とにかくお読みいただき有難うございました!
次回はただのお馬鹿話に戻っていると思います。多分。