32222Hit!コメントお礼
↓お心当たりのある方は「コメントお礼」からドウゾ。
▼コメントお礼▼
お返事が遅くなりたいへん申し訳ありません(><)
初めて遊びに来てくださったとのこと。
うちのおきちづで楽しんでいただければ幸いです!!
リクエストも有難うございます。
リク内容の「沖千で屯所時代、沖田の独占欲丸出し」も了解しましたvv
気長におまちいただければと思います。
では、よろしければまた遊びにいらしてくださいませ。
31111Hit!ありがとうございますv
こんな辺境まで遊びに来てくださる皆様、ありがとうございます♪♪
・・・だというのに、今月はまったくもって更新できずにスイマセン(大汗)
来月は頑張りたいな・・・・とは、思うんですが、11月オンリー合わせの新刊原稿があるからどうかなぁ。
というわけで、11月のオンリーに申し込みしたんでスペースがとれた際には、よろしくです。
また近づいてきたらオフ情報をアップしますねー。
さて、ありがたいことに【31111】のリクエストをいただきました!!
『沖×千の転生パロで芸能人の沖田と普通の女学生の千鶴が、初めて出会った時の甘々な話(廻るキセキとは違う感じで)』
ということで了解しました!!
これまた、楽し気なリクをありがとうございますvv
気長にお待ちいただければと思います。
斬り番コメントお礼!!
お久しぶりでございます!!
(なんかもう、”お久しぶりです”の出だしがお馴染になっておるなぁ・汗)
なかなかアップできていない中で、25555HITと26666HITを迎えました!!
遊びに来てくださる皆様、本当にありがとうございます。
更新速度は遅くなってしまっていますが、おきちづへの愛は不滅ですっっ!!
ではでは、25555HITと26666HITをゲットしてくださったうえにコメントをくださいましたお二方様へのお返事させていただきましたので、<コメントお礼>からご覧くださいませ。
▼<コメントお礼>▼
いーろ様>
お返事が遅くなり申し訳ありません!!
25555番ゲットありがとうございます♪♪
このような辺境の地まで遊びに来ていただけたうえにコメントまで!!(感涙)
しかも気遣ってくださるなんて!!
なんてお優しい!!(超・感涙)
うちの小説で楽しんでいただけていれば幸いです!!
あ、もしよろしければリクエストもしてやってくださいませ。
では、この度はありがとうございました。
◆26666HIT
優麗さま>
お返事が遅くなり申し訳ありません!
キリ番ゲットありがとうございます!!
しかも、うちの小説をよく読んでくださっているなんて!!
本当に嬉しいです!!楽しんでいただけていれば幸いです。
リクエストもいただけて嬉しいですvv
「現パロかSSLで甘々な夏の話」ですね!!
承りました!このリクエスト見た瞬間に私の脳内では、うちの沖田が色々とやらかしております(笑)
少々お待ちくださいませ。
では、キリ番報告&リクエストありがとうございました。
【18888Hit !】 桜餅と渋茶 ~後半~
本当に申し訳ありません!!
沖千で千鶴が嫉妬する話で、「桜餅と渋茶」の後半になります。
また長くなりました、本当にごめんなさい(>△<)
しかも自分の趣味に走った部分が・・・・・(大汗)
どこ、とは言いませんが。(多分、バレバレですね)
るか様のみお持ち帰りOKです!!
ではでは、「読んでみる?」から、後半・本編へドウゾ!!
▼読んでみる?▼
**********
【桜屋】の包みをぼんやりと視界に留めた千鶴の脳裏に”あの日”の【桜屋】でのことが否応無く思い出されれる。
”あの日”に見た【二人の笑顔】も―――。
ぎゅーっと締め付けられるよう胸の苦しさもが強く蘇り始める。
「そんなに嫌?・・・・・僕が、あの娘と楽しそうにしてたのが」
空を彷徨わせる千鶴の瞳に哀しみの色が浮かんでいることを沖田が見逃すわけもなく言葉を発する。
そんな沖田に千鶴は焦りで混乱するばかりだ。
「そ、そんなこと・・・・」
沖田の言う通り、嫌で嫌で仕方がなかった。
女の子の格好で女の子として沖田への笑顔を交わせる少女が羨ましくて、でも、そんなこと言う資格は自分には無くて。
けれど、千鶴は動揺しながらも咄嗟に否定しようとしていた。
自分の立場や沖田が望むもののことを考えればこの気持ちを知られるわけにはいかないからだ。
「『ない』わけないよね。あの日の”あのとき”も今みたく泣きそうになってたもんね」
だが、沖田の確信しているかのような強くしっかりした声がそれを遮ってしまう。
沖田のその言葉に千鶴は何も言い返すことが出来ないまま俯いてしまう。
蘇り始めていた苦しさに息すことさえ難しくなってくる。
そうなってしまえば、必至に耐えていた涙は意図も簡単に溢れ出て、止めることなど千鶴にはできない。
「ふぇっ・・・・な、なんで、そんな・・・こと、言う・・・んですかぁ・・・・」
我慢に我慢を重ねていた想いが千鶴の小さな身体の奥底から堰を切って溢れ出してくる。
「何でって、本当に分からないの?」
そんな千鶴に対して僅かに沖田の眉間に皺が寄る。
「そ、そん、なに・・・わ、わたしの、こと・・・・きら、い・・・ふぇ・・・」
こんなグルグルしてドロドロした想いでいっぱいの自分なんて、嫌で嫌で、大嫌いで仕方がないのに言葉を止めることなんて出来なかった。
ふいに自分が発した『きらい』という言葉に、沖田もこんな自分なんて嫌いに決まっていると気づいた瞬間、大粒の涙が千鶴の黒真珠の瞳から際限なく生まれては頬を滑っていく。
「ちょっと来て」
沖田は、更に涙が溢れ出そうになっていた千鶴の腕をギュッと握ると徐に歩き出した。
唐突とも言える沖田の行動に頭がついていかない千鶴は沖田のなすままに歩を進めていたが、外へと続く門の所まで来てハッと慌て始める。
「ど、どこに行こうとしているんですか、沖田さんっ!」
「付いてくれば分かるよ」
後ろにいる千鶴へと振り返ることもせずに一言だけきっぱりと告げる沖田に、千鶴は困惑してしまう。
「で、でも、外に行こうとしているんですよね!? わ、私、今日は外出許可をいただいていません」
「大丈夫だよ、僕が一緒なんだから」
「で、でも、土方さんに・・・・」
「土方さんのことなんて気にすることないよっ!!」
千鶴が土方の名を出した瞬間に沖田は足を止めて怖いほどの冷ややかな怒りを含んだ言葉を吐き出した。
「え・・・おきた、さん?」
急な沖田の変化に千鶴は驚きで涙で濡れている瞳を瞬かせたる。
「ねぇ千鶴ちゃん。お願いだから一緒に来て?」
「・・・・なんで・・・・何で沖田さんがそんなに辛そうな顔をされるんですか・・・・」
懇願するような響きに千鶴は戸惑いながら、そっと沖田の頬へと手を添える。
「・・・君と【同じ】かな」
「え?おなじ?」
「そう。だから一緒に【桜屋】に行こう」
「さくらや・・・・」
沖田の口からはっきりと【桜屋】と聞いて、千鶴は困ったように視線を下に向けてしまう。
出来れば【桜屋】には行きたくなかった。
醜い自分を感じて自己嫌悪するだけだと分かっているから――。
「そう。千鶴ちゃんと、”あの日”みたいに桜餅を食べたいから・・・・それにあの娘とも約束したしね」
「え・・・やくそく・・・・?」
「うん。君と一緒に桜餅を食べに来るって」
「わたし、と?」
頬に添えられていた千鶴の手をそっと掴んで己の口元へと誘導する。
そして、千鶴の白く細い指先に唇を触れさせながら言葉を続ける。
「そうだよ。だから一緒に・・・ね?」
「ぁっっ・・・」
指先にかかる吐息がくすぐったかのか、千鶴の口からは甘い声が零れ落ち、頬を紅色に染め上げていた。
だが、千鶴の頭の中は混乱でごちゃごちゃになってしまっていた。
嫌な気持ちになって、落ち込んで、悲しんで、迷って、泣き続けていたかと思えば、こんな風に恥ずかしさと嬉しさで頬を赤らめているのと同時に疑問が広がるばかりである。
『千鶴と一緒に桜餅を食べに来る』――それが、【桜屋】の少女と沖田がした約束らしい。
なぜ、そこに自分が入っているのか?
たくさんの感情が入り混じって頭が爆発寸前ではなかろうかというくらいに千鶴はあたふたとしていたが、あの日のどこに沖田が【桜屋】の少女と交わしたという約束の要素が含まれていたのか、”あの日”の【桜屋】でのことが千鶴の脳裏を走馬灯のように駆け巡っていった。
=========
”あの日”の【桜屋】――。
たまたま浪人から助けた少女が【桜屋】の看板娘であり、お礼をさせて欲しいと、強く懇願されたことから千鶴は断ることが出来ずに【桜屋】とやって来ていた。
買出しの途中であることは気に掛かってはいたが、少女のお礼をしたいという気持ちを無碍にもできない千鶴の性格にプラスして、沖田が「べつに少しくらいいいじゃない♪」と千鶴の背を押したのが大きな理由だったりする。
とはいえ、千鶴も最初はホンワリとした幸福感を堪能していたのだ。
繁盛していることに納得してしまうほどに、甘くてしっとりとした桜餅は絶品で、さらに暖かなお茶がその甘さを優しく包み込んでくれるかのようだった。
桜餅をほお張りながら『ほっぺたが落ちちゃいそう』と思わず呟くと、クスクスという笑い声が聞こえてくる。
チラリと瞳だけを隣に向ければ、千鶴のそんな姿を目を細めて見つめている沖田の姿がある。
その表情は楽しそうで、どこか優しい眼差しをしている。
その事実に千鶴は、秘かに幸せと共にトクントクンと心臓を高鳴らせていたくらいだった。
そう、つい数刻前までは―――。
今は桜餅の味も思い出せないほどに、幸せを感じていたはずの心がズキズキと痛みを訴えている。
「っっ―――」
ぎゅーっと心臓が握りつぶされるような痛みに千鶴は無意識に自分の胸部の着物を握り込みながら、目の前の光景に息を飲む。
千鶴の呆然とした黒真珠の瞳に映し出されているのは、これ以上なく楽しそで綺麗な笑みを浮かべる沖田と、見る者を明るくするような朗らかで愛らしい笑顔の少女で―――笑顔に溢れた【二人】の姿。
沖田の隣で花の顔を綻ばせている、この茶屋の看板娘は千鶴と同い年くらいのようである。
年頃の女の子らしく結いあげた艶やかな髪には小柄ながらも愛らしい簪が挿され、袂をたすき掛けした着物は少女によく似合う鮮やかな山吹色だ。
そんな少女に対して今の千鶴といえば、艶やかな黒髪を一本に結い上げ、上衣に袴、腰には小刀を差している。
その姿は、さながら少年武士である。
例え、白い肌に柔らかな頬の輪郭、大きな瞳、自然な桜色に色づいた小さな唇と、愛らしさに溢れていたとしてもだ。
刀を腰に差す女など本来ならありえないのだから、何も知らない人物が千鶴を見かければ一瞬戸惑いはするだろうが【女顔の少年】と判断するだろう。
いや、【男】に見えねば困るのだが。
【男】として屯所でお世話になっている千鶴としては【女】だと知られるわけにはいかない。
それでも、今の自分が絶対に出来ない娘の格好に羨望や様々な感情を覚えてしまう。
目の前にいる沖田の存在が千鶴のそんな想いに拍車をかけているのだろうに、当の本人はそのことに気づいていないかのように茶屋の娘に悪戯っぽい笑顔を見せている。
それ以上は見ていたくなくて、こんなドロドロとした醜い自分を知りたくなくて、千鶴はギュッと固く己の目と口を閉ざす。
現実から目を背けるように光を遮った千鶴の目蓋裏に浮かぶのは数刻前の青空と、何時ものからかいを含んだ翡翠色の瞳―――。
けれど、千鶴の耳を通り抜けていくのは、いつもは千鶴へと向けられているのと同じ意地悪で優しい沖田の声と―――そして、少女の歓喜した弾んだ声。
どんどんと加速して心が冷えていく感覚に千鶴の表情から笑みが完全に消えていった。
「あの、ぜひまた寄って行ってくださいね」
「ん、ありがと。噂どおり凄く美味しかったし、また寄らせてもらうよ」
「本当ですか!!絶対にまたいらっしゃってくださいね、沖田さん!!」
嬉しさを隠すこともない興奮したような少女の声が狭い店内に響き渡り、感情が声や表情に出てしまう素直な少女に沖田は興味を覚えたのか、クスクスと笑い声を漏らしている。
「――――君、面白いね」
「お、面白いってどういうことですか!?」
笑いながら告げられた沖田の言葉に少女はぷぅーと両頬を膨らませて上目遣いに睨みつける。
その姿は傍目から見れば愛らしくしか映らないだろう。
「だって君さ、さっきから―――――――でしょ?」
「っっ!!き、気づいてたんですかっ!?」
沖田はよほど面白いのか笑いを絶やさないまま、頬を膨らませる少女の耳元に顔を寄せて何事かを囁く。
すると、少女の目が見開き、顔が瞬く間に真っ赤へと染まる。
「うん、もちろん。気づかない方がおかしいと思うよ、あんな・・・・あ、僕の連れは鈍感だから気づいてないと思うけど」
「だ、だから・・・途中からあんなに・・・・積極的、だったんですか?」
「うん、もちろん♪♪・・・僕にとっても役得だし、君も堪能できたんなら一石二鳥じゃない?」
「そ、それは・・・・・・はい」
しどろもどろに少女が尋ねれば、沖田は満面の笑顔でもって肯定の言葉を口にする。
そんな沖田に少女は観念したかのように小さな溜息を一つ吐くと、少女も素直な気持ちを告げた。
「ふぅん、そう。なら良かった・・・またいつでも堪能させてあげるよ?」
口の両端を綺麗に吊り上げていた笑みを片端だけにして悪戯っぽい微笑みに変えると、少女の耳元でコソリと囁きかける。
「・・・・ほ、本当ですか!!う、嬉しいです~~!!絶対、絶対ですよ!!また絶対にいらしてくださいねっっ!!」
少女は一瞬、何と言われたのか分からずに瞬きするのも忘れたかのように呆けていたが、その言葉の意味を理解すると、大きな瞳を更に見開き、瞬く間に頬を紅潮させていく。
自然と少女の言葉は興奮で語調が強くなっていた。
「あははは、本当に君は面白いねぇ~~」
「だって、沖田さんにはすっかり気づかれていますし、今さら隠しても仕方がありませんからっ!!」
あからさまと言っていいほどに目の色を変える少女に、沖田が心底おかしそうに笑い声をあげる。
「へぇ、随分と潔いんだね。うん、じゃぁ、期待に応えてあげないとねぇ・・・・」
「・・・・沖田さん、何か企んでませんか?」
「ぅんー?べっつにぃーー?」
笑いを収めた沖田がチラリと視線を向けた先には、黒真珠のような瞳からは光彩をなくし、唇を堅く噛み締めて俯く千鶴の姿。
千鶴の苦しそうな姿を目にしながらも、沖田から漏れ出るのは微かな笑みだった。
もちろん、すべの意識を自主的に閉ざしていた千鶴が沖田のそんな様子に気づくわけがないのたが。
それからどのくらいの時間を一人でいたのか、どうやって帰ってきたのか、千鶴はよく覚えてはいない。
腕を引っ張られていたような感覚をうっすらと覚えているだけだった。
「ねぇ・・・・千鶴ちゃんも僕と同じ気持ちを少しは感じるといいよ」
その際、沖田がポソリと呟いた言葉さえも心を閉ざしていた千鶴には聞こえてなどいなかった。
=====
「はい、あ~~んして、雪村くん♪♪」
心から楽しそうな悪戯っぽい笑顔を浮かべて沖田が千鶴の口元へと差し出しているのは、淡い桜色が可愛らしい、絶品の桜餅だった。
その桜餅を視界に入れた後、千鶴はチラリと上目遣いに沖田へと視線を向ける。
そして、暫く桜餅と沖田を交互に見やってから、意を決して口を開く。
「え・・・えと・・・あの沖田さん、これは一体??」
「ほら、ちゃんと『あ~~ん』してよ」
「で、でも・・・あの・・・」
口元をもごもごさせながら、千鶴は【桜屋】の狭い店内に視線を這わせる。
そこには、狭い店内とはいえ、繁盛店らしく客であふれている。――”あの日”と同じように。
そう、千鶴と沖田は半年ぶりぐらいに【桜屋】の店内で肩を並べていたりする。
【桜屋】の暖簾をくぐると、出迎えてくれたのは”あの日”の少女で、沖田と千鶴、二人の顔を交互に見ると満面の笑顔を浮かべた。
注文聞きの際には、『やっとお二人でいらしてくださったんですねっ!!」と、何故か興奮した様子だったりした。
そんな少女の様子に理由が分からずに千鶴が呆けているうちに、桜餅とお茶が運ばれて来ていて、沖田の『あ~~ん、して』で正気に戻ったのだった。
「さっきココに来る前に僕はちゃんと言ったでしょ。『”あの日”みたいに桜餅を食べたいから』って。”あの日”はちゃんと『あ~~ん』してくれたじゃない」
「そ、それは、沖田さんが・・・・『買出しに付き合ったんだから僕のお願いぐらいちょとは聞いてくれてもいいんじゃない』って・・・・」
「そうだったけ?まぁ、今日は今日ってことで・・・はい、あ~~ん♪」
「ぅえぇええっっ!?」
「ゆ・き・む・ら・くん?まさか、僕の桜餅が食べられないなんて言わないよね?一応、僕は君が身を置いている組織の幹部なんだけど?」
「うっ!!ず、ずるいです、沖田さんっっ!!」
「何とでも言っていいよ。まぁ、その方が皆も喜ぶかなって思ってさ」
「は?『皆』?」
「うん。まぁ、なんでもいいじゃない。それより、一応上役である僕の申し出を断ったりしないよね、雪村くん?」
「・・・・はぃぃ」
沖田が差し出す桜餅を暫くジッと見つめた後、観念したように小さく溜息を吐く。
仄かに頬に朱を差しながら、その小さく愛らしい唇を開けてパクリと、沖田の手の中の桜餅に口をつけた。
餡の優しい甘さが口内に広がる。
”あの日”から、甘さを感じることがほとんど無かったというのに、今日の桜餅はいつも以上に甘く感じる。
「くすくす・・・・美味しい?」
「はい、美味しい、です」
「そう、良かった。 あれ、雪村くん、口端に餡子かついてるよ」
そう言って、口端を指す沖田に千鶴が慌てて餡子を拭おうと指先を口元に当てるが、指先に餡子が拭われることはなかった。
「えぇ、どこで・・・」
「反対だってば、ほらコッチだよ・・・・ペロっ・・・」
千鶴が言い終わる前に沖田の顔が近づき、千鶴の口端の餡子をペロリと舐め取ってしまう。
「ん、美味しいvご馳走様、雪村くん♪」
唇を舌で舐めとると、ふと意地悪な微笑を千鶴へと向けて、からかいを含んだ声でそう告げた。
「っっっ!!!!お、おおおおおおおおおお沖田さ・・・「きゃぁあああvv」・・・え?」
顔を真っ赤にさせて口元を手で覆った千鶴は、羞恥による混乱で何か言葉にしようとしていたが、周囲からあがる黄色い悲鳴によって遮られてしまう。
予想外の声に千鶴はビックリして周囲へと視線を巡らせる。
「ほぇっ????」
店内に居たうら若い乙女たちの視線が一斉に、千鶴と沖田へと向けられていた。
うら若い少女たちの中には、この【桜屋】の少女もいる。
「本当に好きだよね、あの娘たち。・・・・僕と雪村くんが」
「は・・・?沖田さん、今なんと?」
「ん?だから、僕と雪村くんがイチャイチャしたり、僕が雪村くんを苛めて楽しんでるのを、ひっそりと眺めるのが、ってことだけど?」
「ぜんっぜん、意味が分かりませんっっ!!」
「彼女ら曰く、麗しい男子がイチャイチャしてるのを見るのが密かな楽しみなんだって」
「あの・・・すいません、もっと分かりやすく教えていただけませんか?」
「あれ、まだ分からない?そう・・・じゃぁ、『雪村くん』の性別は?」
「・・・・『男』?」
「うん、屯所にいるんだからそうだよね。良かったね、雪村くん。そんなに女の子みたいに可愛い顔してるのに彼女らにはちゃんと『男』と認識されてるらしいよ」
「えぇーと、つまりどういうことですか?」
「んー、じゃぁ次は、このお茶を口移しで飲ませてあげるv」
(・・・・・・え?沖田さんは男性で、私は『男』ってことになっていて・・・・それなのに口移しでお茶を・・・・それで、いちゃいちゃ?・・・・・・・・・・・・・・・・・って、お茶を口・・・・・・)
「えぇぇええええっっ!!!い、いいいいいい、いいですっっ!!」
「そう、口移し、してもらいたいんだね、雪村くんも」
「そうじゃなくて、やめてください、ってことです!!」
やっと意味を理解した千鶴は、ぶんぶんと頭を振り、目を回すのではないかという勢いだ。
「なんでいいじゃない。・・・・僕はしたいな、千鶴ちゃんに」
「へ?」
千鶴にだけ聞こえるような小さな呟きに、千鶴の動きが止まる。
「好きだよ、千鶴ちゃん」
耳元に息を吹き込むようにコッソリと告げられた言葉に、千鶴の目が見開く。
バクバクと心臓の鼓動が有得ないほど高まっていくのを感じる。
「うそ・・・・」
なんとか口に出来たのは、その一言だった。
沖田はクスリと笑い声を漏らして、千鶴の結い髪に唇を寄せる。
「うそ、じゃないよ。これで、外でも君に愛を囁けるね。・・・土方さんのことなんて思い出せなくなるぐらいに僕でいっぱいにしてあげるよ」
「え・・・・土方さん?・・・・・あぁああっっ!!外出許可っっ!!ど、どうしましょう!!きっと土方さん怒ってらっしゃいますよ!!」
土方の怒りを思い起こして顔を蒼白にしてガバっと千鶴が立ち上がると、沖田が大きな溜息を吐いた。
「はぁ・・・・ちょっとは僕の気持ち分かってくれたんじゃなかったのかなぁー」
「え?気持ち?」
「そう。君もさ、ここ暫くの間ドロドロした気持ち抱えてたんじゃないの、あの娘に」
顎で差した先には【桜屋】の少女の歓喜した姿がある。
その表情を見ると、複雑な気持ちを感じずにはいられないのだが、確かに沖田の指摘どおり【嫉妬】していた。そこまで考えて、千鶴はハッと顔をあげる。
「『僕の気持ちが分かったんじゃない』・・・・って、沖田さんも誰かに【嫉妬】してたんですか・・・?」
「ち・・・雪村くぅーーーん。ここまできて”誰か”って言うの?土方さんに決まってるでしょ!!君ときたら何かしらにつけて『土方さん』『土方さん』って」
「そ、それは・・・・」
「分かってるよ、分かってるけど、僕が気に入らないの!!」
「で、でも、私は沖田さんが土方さんに―――」
「それ以上は聞かないっ!!」
「んんっっ!!!!」
千鶴の言葉を遮るように、千鶴の唇を沖田のソレが塞いだ。
見守っていた少女たちから更なる歓声があがったのは言うまでもないだろう。
・・・・・そしてついでに言うなら、屯所に帰った後、土方の盛大な雷が落ちることになるのだが。
小言中であっても終始ご機嫌で笑顔の沖田と、その態度に更に機嫌を下降させる土方に、千鶴だけがオロオロとしていたりする。
そして―――
「ふふふ・・・いつか、『雪村くん』とじゃなくて、『千鶴ちゃん』と町中でイチャイチャできるといいね♪」
――と、勢いを増した土方の怒りにも動じないどころか、土方の目の前で千鶴の耳元に囁きかける沖田は肝が座っているといえるだろう。、
そんな沖田に対して、千鶴は羞恥で顔に真っ赤にし、土方は怒りで顔を真っ赤にさせるのも、お決まり、というやつだろう。
<終幕>
★☆後書き☆★
るか様、大変長らくお待たせ致しました。
後半のお届けになります。
よろしければ、どうぞお納めくださいませ。
・・・・というか、ちゃんとリクエスト内容をクリアできているのか不安なのですが。。。。
ついでに、かなり長くなって申し訳ありません。(大汗)
詰め込み過ぎは私の悪いクセですorz
とはあれ、楽しんでいただければ幸いです。
では、この度は、素敵リクエストをありがとうございました。
【18888Hit !】 桜餅と渋茶 ~前半~
すいません~~、ものすごくお久しぶりになってしまいました。
そして、18888HITリクエストをくださっていた、るか様!
長らくお待たせしてしまっていて申し訳ございません(大汗)
妄想が膨らみすぎて、ちょっぴり長くなりそうだったので、前半・後半に分けさせていただきます。
ひとまず、前半だけでも貰っていただければ、と思います。
後半もなるべく早くにアップできるようにいたしますね。
では、「沖千で千鶴が嫉妬する話」という萌え設定を活かせているのか不安ではありますが、とりあえず前半を楽しんでいただければ幸いです。
今回は、屯所時代で書かせていただいていますv
いやぁー現代とか新婚も捨てがたかったんですが・・・
つか、新婚で書いてたらかなり暗めになってしまて(>_<)
やっぱ、明るめの方がよいかなぁーということで、現代設定が屯所時代を考えて・・・・結果、屯所時代にさせていただきました。
ではでは、るか様のみ、お持ち帰りOKです!!
「読んでみる?」から前半・本文へドウゾ!!
▼読んでみる?▼
**********
「はい、お土産だよ」
外に出かけていた沖田がそう言って千鶴へと差し出したのは【桜屋】の刻印が押された包みだった。
「―――っっ」
だが、千鶴はその包みを苦しそうな表情で見つめるだけで受取ろうとはしなかった。
半月ほど前の”あの日”を境に沖田のお土産のほとんどが【桜屋】のものになっていた。
その包みを見る度に、あの娘に会って来たついでなのかな、と考えては胸が苦しくなってくるのだ。
「どうしたの千鶴ちゃん?ほら、お茶でも飲みながら一緒に食べよう」
「い、いえ、私は・・・・・あまりお腹すいてないので」
せっかくの菓子も今の自分では味なんて分からないだろうと確信していた千鶴はたどたどしい口調ながらも断りの言葉を口にする。
甘党の千鶴にとって菓子は本来なら甘くて幸せな気分を与えるもののはずだった。
だが【桜屋】の菓子だけは、まるで渋茶でも飲んだときのように苦味を与えるのだ。―――最初に口にしたときは【桜屋】の甘くて頬が零れ落ちそうな桜餅に幸せを感じていたというのに、だ。
つまりは千鶴の心が大きく関係している、ということなのだろう。
桜餅を見る度に笑顔に溢れた【二人】の姿が脳裏に浮かんできて、胸が締め付けられるように痛みを訴えるせいで本来の美味しさを感じずにいられなくなっているのだ。
「ふぅーん。・・・・ねぇ千鶴ちゃん、一つ聞いてもいいかな」
「な、なんですか」
「どうして、そんな泣きそうな表情してるのかな」
「・・・え?」
溢れ出しそうになる感情に戸惑いながらも必死に抑えていた千鶴は、沖田の言葉に一瞬思考が止まった。
何を言われたのか理解できずにいる千鶴にもお構いなしに沖田は言葉を重ねる。
「僕が【桜屋】の菓子を買ってくる度に泣き出しそうになってるよね、何で?」
必死になって隠していたつもりの千鶴は、沖田に気づかれていたことに驚愕して黒真珠のような瞳を大きく見開いた。
そう告げる沖田の言葉に、その表情に千鶴の頭が混乱で満ちていく。
「な、なん、のことを・・・・言って・・・・」
千鶴の瞳に映し出されているのは、嬉しそうに満面の笑顔を浮かべている沖田だったからだ。
「そんなに嫌?・・・・・僕が、あの娘と楽しそうに話してたのが」
「そ、そんなこと・・・・」
動揺する千鶴に、口端を綺麗に吊り上げて悪戯っぽい笑みを浮かべる沖田が至近距離へと詰め寄ってくる。
「『ない』わけないよね。あの日の”あのとき”も今みたく泣きそうになってたもんね」
あの日のあのとき―――。
半月ほど前のある日、人々で賑わう町中に紙切れを手にした千鶴の姿があった。
巡察の同行以外で外に出ることが滅多に無い千鶴が巡察に同行するわけでもなく町中にいることは珍しいことではるが、もちろん屯所を抜け出して一人で歩いているわけでは無い。
当然のように千鶴の隣を陣取る男の存在がそれを証明しているといえるだろう。
「ねぇ、千鶴ちゃん。市場に行く前にお茶屋さんに寄って行こうか。【桜屋】っていうお茶屋なんだけどね、あっという間に売り切れちゃうほどに美味しいって噂なんだよね~。お団子とかももちろん美味しいんだけど特に桜餅が美味しいらしいよ、それでね――」
「沖田さん・・・寄り道なんてしたら、また土方さんに怒られてしまいますよ?」
ゆったりとした歩調で千鶴の隣を行く沖田が楽しそうな笑みを浮かべながら寄り道の誘いを口にするのに対し、千鶴は困惑した曖昧な笑みを浮かべる。
それもそのはずで、千鶴と沖田は遊びに来ているわけではないのだから。
本来の目的は、足りない食料の買い出しである。
「土方さんのことなんてどうだっていいじゃない」
「で、でも・・・・」
千鶴の口から『土方』の名が出た途端につまらなさそうに口元を尖らせて不機嫌顔になる沖田に、千鶴はどうしたら良いのか困ってその表情を僅かに曇らせる。
そんな千鶴を横目に捉えた沖田が肩を竦めながら大きな溜息を吐く。
「あぁー。せっかくの非番だった僕がわざわざ荷物持ちをかって出たのは、荷物がいっぱいで大変だろう千鶴ちゃんを心配してのことだったんだけどな。親切心で付いて来た僕に辛辣な態度をとるんだ?千鶴ちゃんってそんなに冷たい子だったんだねぇ・・・・」
沖田の言葉に千鶴の困惑に細められていた瞳がみるみるうちに見開かれていく。
「っ――!!わ、私だって本当は沖田さんと・・・・」
咄嗟に口にした本音を、けれども千鶴は最後まで告げることなく閉ざしてしまった。
新選組幹部である沖田の手を煩わせていることに申し訳なさを感じながらも千鶴はこの買い出しを密かに嬉しく感じていたりしたのだ。
用事のついでだったとしても恋心を持つ相手と肩を並べて青空の下を歩くことにトキメキを感じない乙女などいないだろう。
千鶴とて、男装していようがれっきとした【乙女】なのだからトキメキを覚えても仕方がないといえよう。
確かに、最初の頃に沖田に対して感じていたのは怖さだった。
けれど、新選組で過ごす日々の中で【怖い人】が【意地悪な人】になり、やがて【気になる人】になっていった。
冷たそうで暖かくて優しいヒト。大人のようで子供のように無邪気なヒト。
千鶴の目はいつの頃からか沖田の姿を探すようになっていたのだ。
「ねぇ、千鶴ちゃん。『本当は僕と』なに?」
「・・・・い、いえ。なんでもありません。沖田さんにはせっかくのお休みに私の用事に付き合っていただいて申し訳ないと思っています」
沖田の存在理由と断言している新選組、近藤のことを考えると、この想いは告げたら駄目なのだと心が静止をかける。
努めて明るめの声でニッコリとした笑顔を沖田へと向ける。
「・・・そう」
千鶴の答えが望んでいたものと違ったせいなのか、沖田は不貞腐れたような表情になった。
「あの、沖田さん・・・・怒って、ます?」
「別に。何でそう思うわけ?それって千鶴ちゃんが罪悪感を感じてるからじゃないの」
「そ、それは・・・・」
「申し訳ないと思っているなら、僕のお願いぐらい聞いてくれてもいいじゃない」
「で、でも、駄目です!!寄り道する度に凄く怒られてるじゃないですか。他の皆さんの食事も遅らせてしまうご迷惑をおかけしてしまいましたし、お忙しい土方さんにも申し訳がないです」
千鶴の買出しに沖田が付き合うのは初めてのことではなく、沖田が千鶴に付き添う度に
寄り道をしては土方に怒られるということを繰り返していた。
「・・・千鶴ちゃんはそんなに土方さんが気になるんだ?」
「え?沖、田さん?」
一人ごとのように呟かれた低く小さな冷たい響きと、沖田と隣り合う肩に刺さるような空気に、沖田を呼ぶ千鶴の声が僅かに震えた。
「ん?なに、千鶴ちゃん」
けれど、千鶴の呼び声に振り向いた沖田は何時もと何ら変りのない様子だった。
無意識に力が入っていた千鶴の身体は途端に弛緩し、口からは安堵の溜息が漏れ出たが、すぐに千鶴の身体が緊張に固まったのだった。
「いい加減にしてくださいっっ!!」
少女の困り果てた悲鳴が千鶴の鼓膜を刺激したからだ。
振り返ってみれば、千鶴と同じ歳くらいの少女が浪人に絡まれているようだった。
「ちょ・・・・千鶴ちゃん、待ちなって!!」
その姿を捉えた瞬間、千鶴は考えるよりも早く走り出していた。
沖田の静止する声も聞こえなかったように足を止めることなく。
――――それから間もなく。
カチャリと刀を鞘に収める音と盛大な溜息を吐く音が響く。
その音を響かせた本人である沖田は、なぜかニッコリとした笑顔を千鶴たちへと向ける。
「ねぇ、雪村くーん」
「は・・・い」
助けた町娘の手前、千鶴のことを『雪村』と呼ぶ沖田の目は全く笑っていない。
自分の力量も考えずに危険に飛び込んだ自覚のある千鶴としては謝ることしかできない。
「君さ、もうちょっと自分が強くないこと自覚したら?っていうか、自分の立場分かってるのかな」
「す、すいません」
しかも軽率な行動を自分がとってしまったばかりに沖田に迷惑を掛けたのだと思うと哀しくなってくる。
と、言っても千鶴には困っている人を放っておくことなど出来ないのだが。
「雪村くん、何度目だっけ?困ってる人を見かけると頭より先に身体が動くクセなんとかしなよ。何かあってからじゃ遅いんだよ?」
「ほぇんはさぁいぃー、おひたしゃぁーんん(ごめんなさい、沖田さん)」
お仕置きとばかりに、黒い笑顔を浮かべながら沖田の手は、千鶴の柔らかな頬を掴んで横に引っ張ている。
一応手加減しているのだろうが、それでも千鶴の目端には痛みによる涙が浮かんでいる。
千鶴の背後に居る存在を忘れているかのようである。
しばらくすると、千鶴と沖田のやり取りを静かに見つめていた人物の口から何かに気づいたような声が発せられた。
「・・・・はっ!! 」
やっと、その人物のことを思い出したのか、千鶴の頬をずっと引っ張っていた沖田の手が外され、千鶴と沖田の視線が声の主へと向けられる。
「あ、あの、そんなに怒らないであげてください!!えと、雪村、さん、でしたよね。助けていただいて有難うございました」
「い、いえ、わ・・・ぼ、僕は結局、何も出来なかったから・・・」
「そうだよね。浪人たちを追い払ったのは僕だしね」
「うっ・・・」
ひりひりとする頬を押さえながら千鶴がそう言えば、沖田の少し怒っているような声が千鶴の言葉を途中で遮ってしまう。
「そちらの方も有難うございました。あの・・・ぜひ、お礼させてください」
沖田へと顔を向けた少女の表情はまるで花が咲くように朗らかな笑みを浮べていた。
「別に気にしなくてもいいよ。連れのこの子が飛び出して行っちゃたから成り行きで助けただけだし」
「いいえ、それでも助けていただいたことに変りはありませんので。私、すぐそこのお茶屋の者なんです。お礼にご馳走させてください。」
こうして千鶴と沖田は、少女の懇願もあって茶屋に寄ることになったのだった。
この少女が案内した先が【桜屋】だった――。
<後半へつづく>
★♪中書き♪★
るか様、この度は素敵設定でのリクエストをくださり
有難うございます!!
そして・・・・・・・
も、申し訳ありません・・・続きます。
すっごくお待たせしてしまったのに続きって(汗)
妄想が膨らみすぎました(大汗)
ひとまず、前半だけですが進呈させていただきます。
後半も近いうちにお届けしたいと思います。
18888HIT!!ありがとうございますvv
うわぁああーーいvv
やっと、18888HITだぁ!!
亀の歩みだけど嬉しいよぉvv
これもこんな辺境の地まで遊びに来てくださる皆サマのおかげです!!
本当にありがとうございます。
そして、久々に斬り番リクをいただけてテンションが上がっている理空ですv
(今までスルーばかりでコッソリ寂しかったんですよね(笑))
るか様、リクエストありがとうございます。
しかも!!リクエスト内容がこれまた理空の萌えポイントをついていらしてさらにテンションが上がりましたvv
「沖千で千鶴が嫉妬する話」、しかとリクエスト承りましたv
そーいや、これは書いたことなかったぁあああ!!と、ウッカリ気付きました。
ホント、うっかり、うっかり。
あぁん、屯所、ED後、SSL、現パロ・・・・どれで書こう!!
ま、迷う~~!!
では、しばしお待ちくださいませ!!
4444【縁を結ぶ場所】
4444HIT!有難うございます!!
まめ柴様より、「沖千で二人で夏祭り」(屯所でもSSLでもどちらでもOK)という素敵リクをいただきました!
今回はSSL設定で書かせていただいてます。
前半、千ちゃんがかなり出張っていますが。
後半、何故か甘くなってますが。
それでもよろしければ、「読んでみる?」からお進みください。
※お持ち帰りは、まめ柴様のみOKです。
▼読んでみる?▼
*******************************
陽が延びているせいか空には未だに陽が在ったが時刻としては夕暮れ時の電車の中には、浴衣姿の二人の少女の姿があった。
それは、涼やかな翡翠色の浴衣に身を包んだ千鶴と鮮やかな山吹色の浴衣に身を包んだ千の姿だった。
「千ちゃん、誘ってくれて本当にありがとう!!ここのお祭り行きたかったんだぁ」
「え?あぁ・・・うん。千鶴ちゃんに喜んでもらえると、私も嬉しいなぁ」
千は何故か少しだけ言い淀みながらも笑みを向ける。
千が誘った祭りとは、実は千鶴が行きたいと思っていた祭りだった。
電車を何本か乗り継いで1時間半ほどかかる少し遠出といえる場所の祭りなのだが。
千鶴が少々遠いともいえるこの祭りに興味を持ったのは、夏休み前に何気なく見ていた雑誌の特集だった。
皆・・・先輩を誘ってみようと思ったが、偶然そこに居合わせた先輩が何となく口にした言葉によって願望を口にするまでもなく諦めてしまった。
けれど、千が誘ってくれて千鶴はビックリはしたが嬉しくて了承の返事をした。
もちろん親友の千と祭りをまわれるのも嬉しいのは本心なのだが、少しだけ先輩ともお祭りをまわりたかったな・・・なんて思ったのは千鶴だけの秘密だったりする。
千の自宅から近い駅では浴衣姿の人など千と千鶴の二人だけだったが、何本か電車を乗り継いで現地に近づいていくにつれて浴衣姿の人が徐々に増えていった。
祭りが開催される最寄り駅へ着くと雑誌でも特集されるほどの祭りでもあるせいか、かなりの人の姿があった。
その多くが、カップルらしき男女や女の子同士といった祭り客のようである。
まぁ、ここの神社の特性からいって当たり前と言えば当たり前かもしれないが--
「うわぁ、すごい人だねぇ」
「そうだねぇ・・・」
予想以上の人の多さに千鶴は驚いたように千へと話かけたが、千は辺りを見回しているようだった。
「どうしたの?そんなにキョロキョロし・・・」
千の様子にどうしたのかと聞こうとした瞬間、背後から肩へ手がポンと置かれたのと同時に聞き知った男の人の声が千鶴の耳へと響いた。
「千鶴ちゃん」
その声を聞いた途端に周囲のざわめきが掻き消えたかのように、自分を呼ぶその男の人の声だけが千鶴の鼓膜を震わせた。
けれど、千鶴はとっさに”そんな筈かない”と思った。
千鶴が手にしていた雑誌の記事を覗き込んで、
『皆、部活や講習で急がしいし疲れちゃってお祭りどころじゃないよねぇ』
と、言った先輩と同じ声だったから--
千鶴は皆の負担になりたくなくて一言も口にぜずに諦めたのだ。
その”皆”には先輩も含まれているわけで。
そんな思考が巡っている千鶴の横で、千があっさりとその人物の名を口にする。
「沖田さん、どこに居たんですか!?」
「やぁ。ちょっとね、ヤボ用」
「はぁ!?何を・・・」
総司は短く言うと、更に何か言い募ろうとした千を無視して再び千鶴の後頭部へと視線を戻した。
「ねぇ、千鶴ちゃん。こっち向いてくれないの?」
「だ、だって・・・沖田先輩なわけ・・・」
「んー、困ったなぁ」
ちっとも困ったような感じではなかったが総司はそう言ながら、千鶴の肩に置いたままの手へと僅かに力を入れて自分の方へと引き寄せる。
「きゃっ?」
体勢を崩した千鶴は後ろ向きのまま総司の胸へと倒れ込み、千鶴を後ろから抱きこむような体勢になった総司は千鶴を胸の中に抱きとめたまま上から千鶴の顔を覗き込んだ。
千鶴の見開かれた大きな瞳には、悪戯っぽい笑みを浮べた総司の姿が上下逆さまになって映っている。
「どう、ちゃんと見えてる? 正真正銘、僕は”沖田先輩”だけど」
「な、なんで?沖田せん、ぱいが?」
「ん?それはね・・・僕が、千ちゃんに”お願い”したからだよ」
にっこりと笑みを浮べながら言う総司に対して、向いに立っていた千は総司をジトリと睨め付けながら総司の言葉に訂正を入れた。
「”お願い”というより、半ば”強引に”ですけどね。千鶴ちゃんの想いをたてにとって・・・本当にイイ性格してますよね、沖田さんって」
「ありがとう。褒め言葉としてとっておくよ♪」
「せ、千ちゃん?”お願い”って??」
「あーっと・・・ごめんね、千鶴ちゃん。実は・・・」
まだ事情を飲み込めていない千鶴は、助けを求めるように千へと視線を向けた。
千は顔の前で手を合わせて千鶴に謝ると、今回の経緯を説明する。
つまりはこういうことだった--。
雑誌の特集を千鶴が興味深々で見ていた所に、偶々総司だけが居合わせたことに始まる。
千鶴の様子を見ていれば、その祭りに行きたがっていることは容易に予想がつくことで。
ついでに言えば、千鶴が誘えば皆が賛成することも予想に容易い。
だが、その場には総司の他には誰も居らず、その時点では千鶴が祭りに行きたがっていることを知っているのも総司だけということになる。
もし、千鶴がその場にいる総司だけを誘ったとしても、どこからか話を聞きつけた邪魔者がわらわらと沸いて出ることも予想の範疇である。
それを理解すると同時に、総司は今回の計画をあっという間に頭の中で構築させた。
そう、邪魔者を排除して千鶴と二人だけで祭りに行くための計画を--
そして、千も千鶴の想いに気づいているだけに総司の計画に協力することにしたのだった。
「・・・ってわけで、沖田さんに頼まれたのよ。二人っきりでお祭りを楽しみたいからって」
千鶴は”二人っきり”という言葉に嬉しさと多少の恥ずかしさを感じて頬をほんわりと赤く染めながらも上から覗き込んでいる総司の瞳へとおずおずと視線を合わせてポツリと呟いた。
「二人っきりで・・・?」
「そう、二人っきりで。・・・あれ、僕と二人なんて嫌だった?」
「そ、そんなことないです!!そ、その、う、嬉しいです///」
「そう、良かった」
顔を真っ赤にして俯く千鶴と、確信犯の笑みを浮べる総司。
そんな二人を見ていた千は、自分の存在を知らせるかのように業とらしいほどの咳を響かせた。
再びジトリと総司を睨んでいる千へと二人の視線が向けられる。
「・・・白々しい。千鶴ちゃんが喜ぶのなんて分かりきってるくせに。じゃなかったら、私が協力するわけないじゃ、ないっ・・・!」
「えっ、千ちゃんっ!?・・・」
すっかり違和感無く総司の胸に収まっていた千鶴の腕を引いてそこから救出すると、千鶴と向き合った千はその両手を己の両手でキュッと包み込んだ。
そして、総司に向けていたのとは違う朗らかな笑顔を浮べて千鶴に優しく告げた。
「千鶴ちゃん、楽しんできてね!千鶴ちゃんの笑顔が見たくて、この腹黒天邪鬼男に協力したんだから!」
「千ちゃん・・・」
千の優しい想いに千鶴が瞳を潤ませながら二人が友情を確かめ合っていると、苦笑めいた総司の声が割り込んだ。
「”腹黒天邪鬼男”って、もしかして僕のことかなぁ?」
「もちろんです、他に誰がいるって言うんですか?我ながら的を得ていると思いますけど」
「酷いなぁー」
「それより、沖田さん。・・・分かっていると思いますけど、千鶴ちゃんを泣かせたら私が許しませんからね?」
「あはは、怖いなぁ。大丈夫、千鶴ちゃんが嫌がることはしないから(嫌がることはね)」
暗に牽制をひいた千に総司もまた笑顔で返しながら、そっと心の中で言葉を付け足す。
笑顔のはずの二人から不穏なものを感じた千鶴はオロオロとするばかりだった。
それに気づいた総司は千から千鶴へと視線を戻す。
そして、千鶴へと手を差し伸べて優しい声色で誘いの言葉を囁いた。
「お手をどうぞ、お姫様?」
「へ!?」
「・・・迷子にならないように、ね?」
「そ、そうですよね、凄い人ですもんね!!」
「くすくすっ・・・そうだね」
「じゃ、じゃぁ、・・・よろしくお願い、します」
「うん、よろしくされました」
差し出された大きな手へと千鶴の小さな手がおずおずと乗せらる。
総司の手に重ねられた己の手に視点が固定されていた千鶴は気づかなかったが、二人の向いに居た千にはバッチリとその様が見てとれた。
千鶴が纏っている浴衣と同じ翡翠の色をした総司の瞳に、自分が見たこともないような何時になく甘やかな色が浮かんでいるのを。
「・・・はぁ。もう、とっとと千鶴ちゃん連れて行っちゃってください」
「ん、言われなくても千鶴ちゃんは僕が攫っていくから♪」
「はい、はい、そうですか。ごちそうさまです」
そうして千と別れた千鶴と総司は、駅を出て出店が並ぶ通りを手をしっかり繋いで歩いていた。
手を繋ぎながら、総司は隣の千鶴へと顔を向けて微笑んだ。
「今日の千鶴ちゃんも可愛いね。その浴衣、すごく似合ってる」
「かっ!!からかわないでくださいっ!!もう、沖田先輩ってば、いつもそうやって私をからかって遊ぶんだから・・・」
「からかってなんかないよ。今日の僕は素直なんだから・・・あえて言うなら”ここの神様効果”かな?」
「っっ///・・・ありがとう、ございます?」
頬をほんのりと染めながらそう小さく言って、千鶴も総司へと目を向けた。
いつも見る制服姿とは違って総司も祭りに相応しい浴衣姿だった。
常の悪戯っぽい子供ような雰囲気を見せる総司とはまた別の、大人の雰囲気を醸し出している。
そのうえ、堅苦しいのが嫌いな総司らしく襟元が緩められており、剣道で鍛えられたしなやかな胸元がちらりと覗いていて男性独特の艶っぽさもプラスされている。
めったに見ることのない総司の姿や雰囲気に、千鶴の鼓動はトクントクンと煩いほどに鳴り響くようだった。
そんな千鶴を余所に暢気な声がかけられる。
「あ!ねぇ、千鶴ちゃん。あれ食べる?」
「えっ?」
千鶴が返事する前に、総司は繋いだ手を緩く引いて目的の場所へと向かっていた。
向かう先から漂う甘い匂いが鼻を擽り、目に映ったのは棒をくるくる回して白くてふわふわとした雲のような菓子を作り出している様子。
その店の前に着くと、ゴーという大きい音の中で総司は店のオヤジへと目的のものを注文した。
「オジサン、一つちょうだい」
店のオヤジは、総司と、隣に佇む千鶴の姿を目に留めると、ニカっと効果音が付くような豪快な笑顔を浮かべて気っ風の良さを感じさせた。
「あいよ。おっ、彼女にかい?」
「うん、そうだよ」
「へっ!?か・・・?」
「可愛い彼女じゃねーか。よーし、サービスだ!特大にしてやらぁ」
「どーも。・・・ほら、千鶴ちゃん」
「あ、は、はいっ!!」
総司に促されて言葉どおり特大といえる綿飴を屋台のオヤジから受け取ると、再び神社への参道で繰り広げられている縁日の中を二人は歩み始めた。
けれど、ただでさえ緊張しているというのに第三者から見たら自分達がカップルに見えると思うと、ますます心臓が早鐘を打ち始める。
そんな状態で何を話したらいいのか迷った千鶴は、たった今買ってもらった綿飴へ黙々と口をつけた。
綿飴の上部分が口の中で溶けてなくなってその甘さが完全に広がる頃には少しだけ心が落ち着いたような気がする。
同時に、はっとその事実に気がつく。
「あ、沖田先輩の分の綿飴はいいんですか?」
「あぁ、僕は一人じゃこんなに食べれないからねぇ・・・」
ふと、総司は何かを思いついたのか口角を少しだけ上げて悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「でも、そうだなぁ、美味しそうだし少しだけ味見させてもらおうかな」
そう言って、行動に移したのは一瞬だった。
立ち止って屈み込むと、繋いでいるのと反対側の手で綿飴を握っている側の千鶴の腕を掴んで固定させ、綿飴に顔を近付けてパクリと口を付けた。
一瞬のことで何が起こったのか把握できていなかった。
けれど、軽く目を閉じて綿飴に口を付けている総司の顔を間近で見ることになった千鶴は、呆然としながらも『沖田先輩の睫毛、長いなぁ』とか無意識に思ってその端正な横顔に見惚れていた。
そんな千鶴へと、総司は笑みで細めた瞳を横目で見やる。
そして、口元を舌でペロリと舐め取ると親指で拭いながら艶を含んだ声色で囁く。
「甘くて美味しいね。・・・千鶴ちゃんみたいで」
その瞬間、ボッと音がするのではなかろうかと思うほどに千鶴の顔が真っ赤に染まった。
ニヤニヤとした総司が千鶴の顔を覗き込み、分かってるくせに意地悪そうな声で問いかける。
「あれ、どうしたの?千鶴ちゃん、顔が真っ赤だよ?」
「っーー!!・・・いの・・です」
「うん?」
「沖田先輩のせいですっっ!!」
羞恥ゲージがMAXに達した千鶴は目を潤ませながら叫ぶと、ぷいと反対側に顔をそらしてしまった。
そこまでは予想していなかったのか、総司は目を瞬かせると形の良い眉を寄せて困ったような表情を浮べる。
「・・・あーー。ごめんね、千鶴ちゃん」
「知りませんっ」
「困ったなぁ。どうやったら機嫌を直してくれるかな?」
恥ずかしさでいっぱいの千鶴は気づいていないかもしれないが、怒っていてもそれでもずっと繋がれている手。
それに千鶴らしさが出ているようで、こんな状況だというのに微笑ましくなって総司はふと微笑んだ。
そして何かを思い付いたのか、千鶴の手を引いて参道を進んでいく。
「ちょっと付き合って、千鶴ちゃん」
「な?沖田先輩!?」
総司が向ったのは神社の境内だった。
ここまで来るために通った参道の喧騒が嘘のような静けさに包まれたその場所は、木々の間に吊るされた提灯の淡い灯りによって照らし出され、神社らしく一種の神聖さを感じさせる。
しかし、総司は特に気にも留めていないのか神様が祭られているという門前の三段ほどの階段に座るように促して千鶴が座ったのを確認してから自分も隣へと腰掛けた。
そして、徐に袖口から何かを取り出す。
千鶴の手をとって手の平を上に向かせると、千鶴たちに会う前に買っておいたそれを乗せた。
桜を模った薄い水色の鈴の根付を。
総司の手の中にもピンク色をした同じものが1つ収められている。
それは元々2つセットの根付で。
縁結びのお守だった--
「どう?機嫌は直してもらえそうかな」
「これ・・・」
「欲しかったんでしょ?」
「・・・沖田先輩、気づいてたんですか?」
「まぁね。千鶴ちゃん分かりやすいし・・・たまには僕も信じてみてもいいかなって思ってね。だって、ここの神様って縁結びの神様でもあるんでしょ」
「せんぱ、い・・・嬉し、です」
それ以上は言葉にならずにいる千鶴の瞳には大粒の涙が光っている。
それを見られるのが恥ずかしいのか俯いてしまった千鶴の目元に総司のしなやかな指先が添えられ涙を掬う。
「まだ早いよ。この場所でやることはもう一つあるでしょ?」
「あ・・・」
雑誌の記事を思い起こしながらその言葉の意味を把握して顔を上げると、涙を掬っていた指先が今度は千鶴の柔らかな唇へと押し当てられる。
そこには総司の真剣さを孕んだ瞳があった。
「・・・嫌だったら言って?」
千鶴の答えは決まっていた。
静かに首を横に振って瞳をそっと閉じる。
指先が離れた替わりに温かな唇がそっと触れた。
神様の前で、誓うかのように優しいキスを重ねたのだった--
【了】
♪★後書き★♪
まめ柴様、「沖千で二人で夏祭り」という素敵リクを有難うございます!!
えぇ、妄想が膨らみまくって困ってしまうほどに楽しく書かせていただきました♪
さて、今回はSSLで書かせていただきました。
(あまりSSL設定が活かせていないような気がしないでもないですが(汗))
が、屯所時代の方でも妄想が膨らみどちらで書こうか迷ってしまうほどで。
しかも、この話の後日談までもが頭の中をぐーるぐーる廻っている始末。。。(笑)
ともあれ、楽しんでいただければ幸いです。
では、この度は本当に有難うございました。
※まめ柴様のみお持ち帰りOKです。
【2662】常夏夜の灯火
2662 「沖千で屯所時代のほのぼの」ということで書かせていただきました!
リクエストいただきました祐様のみお持ち帰りOKでございます。
このような拙いものですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
▼こちらからどうぞ!▼
********************
空には煌々と淡い光を放つ満月が浮かんでいる。
夜の帳に月が上る時間だというのに、いまだにこの時期特有の肌にまとわりつくような暑さが残っていた。
気休めぐらいの気持ちで縁側に吊るした風鈴がリーンと涼やかな音を奏でている。
それだけでも気休め効果があったのか、少しだけこの暑さから開放されたような気がする。
だが、この暑さの中でも沖田はそれほど不快な気分ではなかった。
この暑さを緩和させるものが風鈴以外にも存在していたからだ。
「沖田さんは皆さんと一緒に島原へ行かなくても良かったんですか?」
沖田が手にしているお猪口に酒を注ぎながら尋ねたのは、沖田と同じように屯所居残り組みの千鶴だった。
沖田に”涼”を運んでくれるものの一つだ。
現在の沖田にとっての”三大・涼”--
一、風鈴の音色
二、喉を潤す酒
三、癒しを与えてくれる少女の存在
三つ目こそが最大の威力を発揮してくれている。
本来なら不快感の残るこの空間を穏やかなものへと変えてくれる千鶴へと沖田はちらりと視線を向けると、目を細め、口角を吊り上げ、含みのある笑みを浮べる。
「僕はこうして一人で静かに呑むほうが好きだからね。・・・まぁ、この間の可愛い芸者さんがいるなら行っても良かったかもねぇ」
「お、沖田さんっ!///」
「あれどうしたの、千鶴ちゃん。顔が真っ赤だよ?」
「し、しりませんっっ」
「そう?でも行かなくて正解かな。ここにお酌してくれる可愛い娘がいるからね。そういえば、あの可愛い芸者さんに似てるよね?本当に千鶴ちゃん知らない?」
「うーー、沖田さん意地悪ですっ!」
千鶴は頬をぷくーと膨らませながら、沖田の腕をぽかぽかと叩くが威力はない。
それどころか沖田の笑みを深くするばかりだった。
「あはは。そうやって可愛い反応する君が悪いんだよ」
「か・・・!?」
千鶴は”かぁー”と音がするのではと思わせるほどに顔を熱くすると、沖田の腕を叩いていた白い手を自分の顔へと移動させ真っ赤に染まった頬を包み込みながら俯いた。
対して沖田は項まで赤く染め上げている千鶴の様を肴にしながら酒がなみなみと注がれたお猪口を口元へと運ぶ。
そして束の間の静寂が二人を包んだ。
けれどその静寂は二人にとって居心地の良いもので、各々がその空間に馴染んでいる。
そんな居心地のいい空間へ誘われるかのように、生暖かな風にのって一つの灯が淡く光りながら二人の周囲を飛び回る。
その光に気づいた千鶴は羞恥を感じていたことを忘れたかのように顔をあげ、その”灯”を瞳に映した。
「あ・・・」
「あぁ、迷い込んできちゃったみたいだね」
「・・・・」
「どうかしたの、千鶴ちゃん」
「いえ・・・一人ぼっちなんて可哀相だなって」
「一人ぼっち?可哀相?なんで?」
「だって、きっと一人なんて心細いです」
「本当に君って・・・面白いよね」
「え?」
「こんなちっぽけな生き物にまで本気で悲しむなんてさ」
「・・・ちっぽけなんかじゃないです。短い時間を一生懸命に生きてます」
「・・・・」
「す、すいません。生意気なこと言って・・・」
やがて沖田は優しく笑むと千鶴の伏せられた目元へと指先を添えた。
「なんで謝るの?君が謝ることじゃないよ。一生懸命生きている生き物に”ちっぽけ”も何もないよね」
「・・・はい」
「(そういうところが・・・よね)」
「え、いま何て?」
「一人ぼっち・・・じゃなくて”一匹ぼっち”っていうのかな・・・まぁ、どっちでもいいか。小さな”灯”にも心痛める千鶴ちゃんにいいモノを見せてあげる」
優しい笑顔から楽しそうな笑顔になった沖田はそう言いながら飛び回る”灯”を手の中に捕まえ、火の代わりとでもいうように”灯”を提灯へと入れる。
そして、千鶴の細い腕を引っ張りあげると、すたすたと廊下へと出ていった。
片手には提灯、片手には千鶴という出で立ちで部屋を出て行く沖田の表情は子供のように何かに期待を満ちた色を含んでいる。
急に立たされた千鶴といえば、驚きと困惑の色を浮べつつ必死に体制を整えて自分の腕を引く沖田へと大人しくついて行くのだった。
が、表門まで来ると屯所の外に出ようとしていることに気づき、沖田へと声をかける。
「あの、外に出るのはまずいのでは・・・」
「なんで?僕と一緒なんだからいいんじゃない?」
「でも、皆さんお出かけ中なのに私たちまで出かけてしまったらまずいんじゃないですか?」
「大丈夫だよ、屯所には山崎君たちがいるし・・・”鬼”のいぬ間になんとやら、だよ♪」
「土方さんのいない間になんて駄目です!許可もないのに・・・」
「僕はべつに”土方さん”とは言ってないけど?」
「っ!!」
「ふーん、千鶴ちゃんも土方さんのこと”鬼”だと思ってるんだぁ」
「ち、違いますっっ!!私はそんな・・・だって沖田さんがいつも・・・じゃなくて私はただ!・・・その、えーと・・・」
「僕はどっちでもいいんだけどね、もう出ちゃったし」
「え?・・・あぁ、いつの間に!?」
「今。あえていうなら、千鶴ちゃんが一人で一生懸命言い訳してる間、かな」
「そ、そんな・・・」
「出ちゃったものはしょうがないんだし、大人しく僕に着いて来るっていう選択肢はないのかな?・・・僕は一人でも行くけどね」
「うぅー。ずるいです、沖田さん!!ここで一人で戻るなんて言ったら”一人”で出歩いていることになっちゃうじゃないですか!!」
「うん、そうだね」
千鶴が恨めしげに沖田を見やると、”何の問題もないでしょ?”というように余裕の笑みを浮べている。
そう、問題はない。
”沖田に着いて行く”という選択肢を選びさえすれば・・・。
”一人で出歩く”という問題に関してはだが。
それにひとつ溜息をつくと、千鶴は諦めたように結局一つしかない選択肢の答えを告げた。
「分かりました。沖田さんと一緒に行きます」
「良かった。これで僕も君を斬らなくて済むね」
「っっ!!??」
沖田の言葉に驚いた千鶴は沖田の背中を見やる。
繋いでいる手はある種の緊張で熱くなっていく。
けして、甘い意味ではなく。
沖田にとってはささやかな力ではあったが、千鶴の手に力が篭った事に気づき振り返ると、可笑しげに声をあげた。
「ぷっ・・・千鶴ちゃんのその顔・・・あははは」
「あ、う、嘘だったんですか!?」
「うん、冗談に決まってるでしょ。僕が連れ出したんだからさ」
「酷いです、沖田さん!」
「あはは・・・でも、千鶴ちゃんも何気に酷いよね」
「私がですか?」
「だって、本当に僕が斬ると思ったんでしょ?」
「あ・・・ごめんなさい」
沖田の言葉で確かにそう思ってしまった自分に思い当たり、そんな自分に落ち込んだ千鶴は自分の足元へと視線を落とし、自然とその歩みを緩めてしまった。
沈黙が続き、二人の繋いだ手の熱さだけを感じる。
ふと沖田の歩みが緩められ始め、しばらくしてその足が止まる。
「・・・ごめんね」
「え・・・?」
「さっきの。そこまで悲しむとは思わなかったんだ。(少しだけ下を向いてくれれば良かっただけなんだけど・・・)君が、そう思うことは”普通”だから落ち込まなくてもいいんだよ」
繋いでいた手を離し、俯いたままの千鶴の頭へとその手を移動させる。
「それに僕は、千鶴ちゃんの悲しそうな表情じゃなくて、もっと別の表情が見たいんだけどな。・・・だから、顔をあげてくれる?」
「おきたさ・・・っっ!!!!」
沖田の言葉に千鶴は素直に顔をあげる。
そして、そこに見たのは---
千鶴はその黒曜の瞳を大きく見開き、口元を己の手で覆った。
「これが、僕が千鶴ちゃんに見せたかったモノだよ。」
悪戯が成功したような子供っぽい笑みを浮べる沖田--
と、
闇の中に浮かぶ眩いばかりの光の洪水--。
蛍の群れが思い思いに暗闇の中を輝きながら飛び舞い、その飛跡は光の筋となって幻想的な世界を作り出している。
しばしの間、千鶴はその幻想的な世界へと魅入った。
煌く灯が作り出す世界に、沖田の言葉に、千鶴の目元にはきらりと光るものが浮かぶ。
「綺麗・・・」
「どう、喜んでくれるかな?」
「はい・・・もちろんです!!」
「良かった。千鶴ちゃんなら喜んでくれるだろうなって思ってたんだ♪」
言いながら沖田は片手に持っていた提灯から自分たちのいた空間へと迷い込んだ”灯”を解き放つ。
提灯から開放された蛍は仲間たちの元へと飛翔していく。
まるで仲間たちとの再会に喜んでいるように。
「ほらこれで”一匹ぼっちの蛍”も寂しくないよ」
「はい」
千鶴の顔には満面の笑顔が浮かぶ。
それに呼応するように沖田の顔にも自然と笑顔が浮かんだ。
二人は寄り添いあいながら蛍たちの仲の良い様子を黙って見つめ続けていた。
夏の夜だけに堪能できる美しい灯の世界を--
【了】
††後書き††
祐様、リクエスト有難うございました!
「沖千で屯所時代のほのぼの」とのことでしたが、いかがだったでしょうか。。。(ドキドキ)
ほのぼのになっているかが激しく心配ですが(汗)
何かを間違えてしまったような。。。(大汗)
ともあれ、理空は楽しく書かせていただきました♪
ていうか、うちの沖田が勝手に動き回りました(笑)
よろしければ、貰ってやってくださいませ。
そして、調子に乗って↓におまけも書いてみました。
<おまけ>
幻想的な世界に目を奪われていた千鶴だったが、ふと何かに思い当たったのか沖田へと視線を移した。
そんな千鶴の気配に気づいていたのか、沖田も千鶴へと視線を移す。
「沖田さん・・・最初から分かってて?」
「うん、まぁね。この間、子供たちに遊んでもらってた時に見つけたんだ。結構穴場じゃない?屯所の裏にこんな場所があるなんて」
「え、裏!?」
「うん。裏にある雑木林を少し入ってきた所だけど、ここ。そうじゃなきゃ、蛍なんて屯所に迷い込んでこないよ」
「裏ってことは・・・じゃ、じゃぁ、わざわざ屯所の外にでなくても・・・」
「うん、裏庭から行けるね」
「っっ!!な、なんで」
「だって、裏庭からだと少し足場が悪いし。・・・なにより千鶴ちゃんの慌てた顔が見たかったんだよね♪」
すっかりいつものいじめっ子顔になった沖田はニヤニヤと千鶴を見やり、怒りに拳を握った千鶴はキッと強い眼差しで沖田を見やる。
「おきたさんなんて、大き・・・」
「だって慌てた顔も可愛いんだもん、千鶴ちゃん」
二人の声が重なる--。
千鶴の口が金魚のようにパクパクと口を動かしているがそれが音になって出ることはなく暫しの間の後、千鶴は己の小さな拳を解くとポソリと呟いた。
「本当に、ずるいです・・・」
「うん、知ってる。で、僕がなに?”大き”・・・?」
「・・・ずるい上に、意地悪です」
「うん、それも知ってる」
「・・・沖田さんなんて”大嫌い”・・・になんてなれません」
「うん、知ってる♪」
「・・・・やっぱり意地悪です」
「でも千鶴ちゃんも悪いんだよ?」
「え?」
「千鶴ちゃんが僕を”意地悪”にさせるんだから、ね?」
「どういう・・・?」
沖田はそれだけ言うと、再び光舞う闇へと視線を戻す。
千鶴はそんな沖田の横顔をしばらく戸惑いの色を浮かべた表情でジッと見ていたが、沖田の言葉の意味を聞くことが叶わないと悟り、千鶴もまた光舞う闇へと視線を戻した。
ある夏の夜の出来ごとだった--
【おまけ・了】
2000HIT・・・ですが、
まさか、こんな早くに2000に達するとは思っていませんでした。。。
お越しいただいている皆様、ありがとうございます。
本当に感謝です♪♪
さて、2000のキリ番報告がございませんでしたので、次回キリ番はかなり近めの数字で設定しました。
というか、こうなったらゾロ目は絶対に入れてやれ!的な・・・・(汗)
というわけで、
次回キリ番:2222